実はそれほど車重が軽いわけじゃない。フラッグシップという厚手のコートを置いたことで、
ムルティストラーダ950が手にいれたのは、太陽に照らされた気持ち良いライディングフィールだったのである。

TEXT/松井勉

美味しさはそのままに
「ちょうど良さ」を高めた

画像1: 美味しさはそのままに 「ちょうど良さ」を高めた

 陽光きらめく海岸線。その向こうには大西洋に突き出したアフリカ大陸西岸があるはず。地球儀的にみれば、もうそこは目と鼻の先。大陸から100kmもない距離に浮かぶカナリア諸島、フェルテベントゥーラ島に来ている。冬なのに日差しは暖か。気温は20度。海風も心地よし。島の風景は……、日本の何処とは言えないが、バイクを楽しむには最高の条件が揃っている。ここで乗ったのがドゥカティのマルチパーパスツアラー、ムルティストラーダ950だ。
 2016年、ミラノショーで発表されたこのモデルは、ドゥカティのムルティストラーダファミリー久々のミドルクラスモデルということになる。その心臓はハイパーモタードにも載せられる、テスタストレッタ 11°(イレヴンディグリー)エンジン。スーパーバイク系のエンジンをベースによりストリートチューンを施したもの、という説明より、ドゥカティらしいハートを持ったエンジン、といったほうがはやい。
 1200と比べると排気量こそミドルだが、車体のサイズは兄貴分の1200と同等だし、車重も数㎏しか違わない。でも、このエンジンが醸し出す雰囲気と、全体の作り込みが陽気な島のような気分に乗り手をしてくれるのだ。

画像2: 美味しさはそのままに 「ちょうど良さ」を高めた

 装備表を比較すれば、確かに950では1200に比べ、ハンズフリーキーやクルーズコントロールが省かれている。上級の1200S以上と比べれば、電子制御セミアクティブサスペンション、LEDヘッドライト、TFTカラーモニターもない。
 でもだ。スイッチ一つでエンジンの出力特性や、ABS、それにトラクションコントロールを乗る場面に合わせて変更するムルティストラーダの十八番、ライディングモードは標準装備だし、イタリアらしいスタイルへの拘りに一切のマイナスはない。
 逆にである。950は前後タイヤを1200エンデューロと同じサイズを履いている。前輪に19インチ、後輪に17インチだ。リアスイングアームも、ドゥカティらしい片持ちではないが、これもマルチパーパス性をより高めたエンデューロと同じパーツ、と聞くと、上質なアウトドアブランドの製品ストーリーを聞くようでちょっと嬉しい。ホイールはスポークではなく新意匠のキャストホイールだ。長年スポークホイールのバイクに乗っていた経験からすると、一本一本恭しく磨く苦労を考えたらキャストは掃除がラクだ。それに軽いのもいい。
 前後のサスペンションストロークは170㎜。これは1200と同じだ。電子制御を持たない、とはいえ、フルアジャスタブル仕様の足周りは、乗り手が手をかけるだけで理想の足に近づける楽しみもある。950ってムルティストラーダファミリーの中でいえば、もっともカジュアルな感じだ。
 休日を海辺のリゾートホテルで過ごす感じが1200シリーズだとすれば、森の中のログハウスで薪を割り、ストーブの火をおこす休日が950のような気がしてきた。そう、アナログ的な部分を、アクティビティーとして楽しむ的な。で、走りはどうなんだろう。

画像3: 美味しさはそのままに 「ちょうど良さ」を高めた

走行中に一番落ち着くあたりの座面のフォームが程よい反発力を持ち長距離でも快適だったシート。エンデューロと同じ形状で、先端部分をしっかりと絞り込み、足着き感がとても良好だった。シート高は840mm。オプションの820mmシートを装着して走行してみたが、座面幅が広くなり足着き感は標準シートとあまり変わらない印象だ。身長183cm、体重84kg

画像4: 美味しさはそのままに 「ちょうど良さ」を高めた

KYB製の倒立フォークは内径48mmのインナーチューブを持つ。減衰圧+スプリングプリロードを調整可能。フロントブレーキは4ピストンキャリパーのブレンボ製を装着。

画像5: 美味しさはそのままに 「ちょうど良さ」を高めた

リアキャリア、シートの形状は1200エンデューロと同様のもの。たっぷりとしたサイズが自慢。タンデム好きにはオススメの居住性。

後編へ続く

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