KTMの250EXC-Fはトップライダーが乗れば全日本エンデューロ選手権で上位に食い込む走りができ、初心者が乗っても扱いやすく林道ツーリングも快適にこなせる。誰にでも乗れて、疲れにくい。現エンデューロの世界的スタンダードであり、日本ではトレール的な使用用途にも人気がある名機と言えるだろう。
画像1: 飯塚翼

飯塚翼

今年、JECのIBクラスながらIAに匹敵するタイムを出し、エンデューロ界を賑わせている飯塚翼(オレンジカウンティ幕張)はモトクロスIBライセンスを持ちながら、エンデューロ転向にあたり、乗り慣れたモトクロッサーを選ばず、250EXC-Fをチョイスした。同じチームの先輩である滑川勝之とともに2019モデルのインプレッションをしていただきつつ、250EXC-Fを選んだ理由に迫ってみた。

フルモデルチェンジから2年、成熟した2019モデル

画像1: フルモデルチェンジから2年、成熟した2019モデル

KTMのポリシー「READY TO RACE」の通り、そのままでレースに出場することができるハイスペックマシンでありながら、低速トルクの出力が穏やかで、扱いやすいエンジン特性を持つ。KTMにはEXCシリーズの他にXCシリーズが存在する。EXCは公道走行なども視野に入れたエンデューロ向け、XCはクローズドコースのみを想定したクロスカントリー仕様だ。つまり、EXCは現在国内のクロスカントリーで人気のあるYZ250FXやCRF450RXといったレーサーベースのマシンとはまったく別モノ。アクセルを開け始めた時のフィーリングはまるでトレールのようなパワー感で、レーサーで感じる恐怖感のようなものはまったくない。それでいて、中速から上ではトルク、パワーともにIAライダーでも満足できるレベルだ。

2017年にフルモデルチェンジを経て、EURO4に適合、大幅な軽量化も達成した250EXC-F。これまではSIXDAYSモデルだけだったオレンジフレームが標準採用されており、よりレーシーな見た目に。

画像2: フルモデルチェンジから2年、成熟した2019モデル

EXC-Fの最大の魅力はその乗り心地。特にそれを支えるのはWPのXPLOR48サスペンションだ。右が伸び側、左が縮む側と左右で機能が分かれており、2019モデルではさらにアップデートされて最適化がなされている。

画像3: フルモデルチェンジから2年、成熟した2019モデル

2019年モデルからシートカバーがアップデートされ、シッティング時によりグリップしやすいようにリブ形状が刻まれている。

画像4: フルモデルチェンジから2年、成熟した2019モデル

2017年式のフルモデルチェンジ時に形状、取り付け位置が見直された「No-dirt」フットペグ。泥が詰まりにくく、足にフィットしやすいEXCシリーズ専用設計。

画像5: フルモデルチェンジから2年、成熟した2019モデル

前後ブレーキは制動力に定評のあるブレンボ製。ブレーキディスクはGalfer製で、軽量なウェーブ形状を採用。

KTM
250EXC-F 2019モデル

¥1,135,000(税込)

250EXC-F
全長/全幅/全高
シート高960mm
最低地上高355mm
車両重量103kg
エンジン単気筒,4ストローク
排気量249.91㎠
内径×行程78mm×52.3mm
始動方式セルスターター
変速装置6速
クラッチ湿式,DDS多板クラッチ,Brembo製油圧式
EMSKeihin製EMS
フレーム25CrMo4 スチール製セントラルチューブフレーム
サスペンション(前/後)WP製(300mm/310mm)
ブレーキ(前/後)Brembo製ディスクブレーキ(260mm/220mm)
チェーンX-Ring 5/8×1/4"
燃料タンク容量約8.5L

「ステップコントロールが楽々」 (エンデューロIA 滑川勝之)

ヒルクライムで狙ったラインに入りやすい

画像: ヒルクライムで狙ったラインに入りやすい

「まず車両が軽いので、ラインが選びやすいですね。何本か轍があるような登りでもしっかりと自分が狙ったラインに入ることができました。また、リアサスペンションがよく沈むので、リアタイヤがしっかり路面に食いついてグリップしてくれますし、勢いがなくてもゆっくり登ることができます。助走を取ることができないようなヒルクライムでも楽々登ることができるでしょう」

フロントの接地感が安心感に変わる

画像: フロントの接地感が安心感に変わる

「僕は下りはちょっと前傾姿勢でフロントサスペンションを沈ませてグリップさせるんですが、WPのXPLOR48サスペンションは柔らかくて、奥でもしっかり粘ってくれるので安心感がありますね。また、シュラウドの幅が細いので、スタンディングポジションが取りやすいのもいいですね。KTMのEXCシリーズはリンクレスなので、下りでちょっとリアサスペンションを縮めるとすごく前に進んでくれます」

クラッチフィーリングがフロントアップに貢献

画像: クラッチフィーリングがフロントアップに貢献

「軽い登りの途中に大きい根っこが出ている状況、レースだけでなく林道でもよくあるシチュエーションですよね。これが苦手な人は多いでしょうが、250EXC-Fなら低速トルクもあるし、クラッチも軽いので、とてもフロントアップがしやすいです。自分の狙ったところにフロントタイヤを当てることができます。リアが根っこに乗り上げる時もサスペンションが良いので、衝撃をしっかり吸収してくれて弾かれることがありません。2017年モデルからでしょうか、ステップの形状も変わっていてマシンが振られたりしても足が離れにくくて安心感がありますね」

画像: 滑川勝之

滑川勝之

普段は350EXC-Fに乗る滑川勝之は「久しぶりに250EXC-Fに乗りましたが、やっぱりとても軽くて取り回しが良いですね。クネクネ曲がりくねった林間コースなんかでも、ちょっと曲がりたい方向にステップを踏み込んであげれば簡単に曲がってくれるので、とても走りやすかったです。サスペンションの良さとポジションの良さ、クラッチの軽さなどが長時間走る時なんかにじわじわと効いてくると思います」と語る。

「攻めて走っても疲れにくい」 (エンデューロIB、モトクロスIB 飯塚翼)

サスが良いのでジャンプ初心者でも安心

画像: サスが良いのでジャンプ初心者でも安心

「初級中級のライダーでもリアサスペンションの動きが初期から中間にかけてとても良いので、飛びやすいと思います。モトクロスライダーは着地の時にアクセルを開けてショックを和らげるのですが、このマシンはそれができなくてもフロントサスペンションがしっかり衝撃を吸収をしてくれるので、安心です。モトクロッサーと違ってピーキーさはほとんどないので、コーナーのあとのジャンプとかでもスムーズに加速して飛ぶことができます」

轍やフラットコーナーでも優位性あり

画像: 轍やフラットコーナーでも優位性あり

「フロントサスペンションの初期がすごくよく動くので、車体が寝かしやすくて細かいコーナリングもしやすいですね。ブレーキもブレンボ製なのでとても制動力があります。車体が軽くてヒラヒラと方向転換ができるので、自分の行きたい方向にフロントを向けてあげることができ、轍のあるコーナーとかでも曲がりやすいですね。また、リアサスがしっかり沈むので、グラストラックのような滑りやすいフラットなコーナーでも滑らずにスムーズに加速することができます。モトクロッサーのようなパワフルな感じではなく、トルクフルで扱いやすいので、初心者にもオススメです」

画像2: 飯塚翼

飯塚翼

「林道やコースでガレ場を走る時に250EXC-Fはサスペンションの初期の動きがすごく良いので、しっかりショックを吸収してくれますし、疲れにくいので楽に乗れます」と語る飯塚翼は普段から250EXC-Fに乗るモトクロス出身のエンデューロライダー。今年IBルーキーにしてIAでも十分に戦えるタイムを出し、将来を有望視されている。モトクロス出身のエンデューロライダーの中には、乗り慣れたモトクロッサーでエンデューロを走るライダーも多いが、飯塚は柔らかいサスペンションと低速のトラクション性能を気に入り、250EXC-Fをチョイスしたと言う。

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