レッドブルや、数々のスポンサーがつき、世界的なレースが話題になっていくに連れて、ハードエンデューロは市民権を得てきたが、日本には元々ハードエンデューロのカルチャーが根付いていた。西日本、さらに言えば九州を中心に興った「WONETシリーズ」はそのハシリである。いつしかその形を変え、G-NETが発足。ハードエンデューロが市民権を得ていく中、G−NETは全日本シリーズとしての道を歩み始めた。

群馬にある日野カントリーオフロードで開催された、日野ハードエンデューロはそのG-NETの最終戦だ。

画像1: 完走者19名。グンマの山は、来年も挑戦者を待つ

G-NET最終戦 日野ハードエンデューロ
日時:2018年11月18日
会場:群馬県日野カントリーオフロード

超ハード、G-NETの歴史上でも3番目に難しい

実は、2018年に入って海外のレースに参戦するトップライダーも増えている。彼らが持ち帰ってくる情報としては、「必要なのはスピード」ということ。エルズベルグロデオの完走しかり、テクニックではなく「前に出て、渋滞を避けられるだけのスピード」が必要なのだと、伝えられている。

それとは別の理由もあるが、日本のハードエンデューロは、難しさよりスピードを問うものが増える傾向にあった。G-NETの代表である栗田氏は、しかしそれを良しとしているわけではなかった。

「G-NETは、G-NETらしく。今回は、コースの難易度で示させていただきました」

前情報から、日野のコースレイアウトはとても難しいと言われた。下見に出かけたライダーも、一様にその難しさを語る。「ゲコワン(2014年)に準ずる」という話もあれば、「MGSカップ(2017年)に匹敵する」という話も。総合すると、完走者不在のゲコワンほどではないにせよ、「ヒルクライムは一筋縄にいかないものばかりで、上った先からが難しい」とトップライダーの熊本悠太が言うとおり特に上りに重点がおかれたものとなった。

画像1: 超ハード、G-NETの歴史上でも3番目に難しい

こちらは、後半にあるキヨミズヒル。安定したフォームで上る山本礼人だが…

画像2: 超ハード、G-NETの歴史上でも3番目に難しい

ここから90度曲がって左へ。

画像3: 超ハード、G-NETの歴史上でも3番目に難しい

道…見える? まだまだ上らされる。

なお、このセクションが抜群にウマかったのが藤原慎也。

下見ができていなかったという藤原は、アタック中にセクションを見極め、90度左へターンするために体勢を変え、かつフロントタイヤを切り株にあてることでマシンの方向を定めなおしたという。

手に汗握るタイトル争いに、藤原が割って入る

実はこの最終戦は、ここまで4連覇してきた日本を代表する高橋博と、それに追随する若手、山本礼人のタイトル争いがかかっている。勝った方が、チャンピオン決定。この熱いシリーズ展開の〆にふさわしく、1周目は2番手以下に大きく差をつけて山本が新時代を歌い上げた。

2番手は高橋、そのすぐ背後に藤原がつける。

画像1: 手に汗握るタイトル争いに、藤原が割って入る

高橋は「この最終戦のために、サスペンションのセットアップや、タイヤの研究を相当につめてきました。タイヤの空気圧は、事前では0.22kgfがベストでした。でも、実際レースになるとグリップしてくれなかったので、現場で落としました。

1周目、最初のファーストヒルで転倒して3人くらいに抜かれて、なめこ沢でひっくりかえってしまったんです」と。周囲からみても、いつもホールトゥウィンで勝利する高橋と違うことは明らか。勝負をおとしてしまうのではないか…と思われていた。

この二人に割って入ったのは、藤原だ。

画像2: 手に汗握るタイトル争いに、藤原が割って入る

ハードエンデューロではなく、全日本トライアルを主戦場とし、今年通天閣でのシティ・トライアルを主導。目下、オフロードの世界で活動の幅を広げるトライアルライダー。

誰もが難しいと言うこの日野を「簡単ですね。長いヒルクライムが多いと聞いてたので、いつもつかってるKTMのフリーライド350はフルパワー化してきました。でも、そんな難しいところはない」とあっさり言ってのける藤原は、2周目にキヨミズヒルで山本をもパス。単独トップに立ち、一時ガソリン補給で山本にトップを譲るものの、3周目再び抜き返す強さを見せつける。が、残り時間少なくこの周で勝敗が決まるという段になって、リアタイヤをパンク。線戦を離脱した。

画像3: 手に汗握るタイトル争いに、藤原が割って入る

山本は後半になってミスが目立つ中、淡々と追い上げる高橋がいよいよ山本を捉える。コースの中はヒルクライム合戦で、ミスれば順位を明け渡さざるをえない、そんな一進一退の攻防が3周目続いた。

フィニッシュヒル、この坂を登ったほうが勝ちだ!

そうこうして、高橋と山本はゴール前まで、ほぼ同時に辿りつくというホットな展開。

画像1: フィニッシュヒル、この坂を登ったほうが勝ちだ!

主催者の粋な計らいが、最大の効果を発揮した。

最後の最後、ギャラリーが見守る中でのヒルクライムを登頂したところに、チェッカーが用意されているのだ。しかもこのヒルクライムが難しすぎて、このレースですんなり登頂できたのは1名しかいないといういわくつきのセクション。

先にクリアした者が、チャンピオン。こんなドラマチックな展開、ありなのか!

画像2: フィニッシュヒル、この坂を登ったほうが勝ちだ!

失敗した山本が、高橋のアタックを見守る、何度目かのチャレンジ。二人は、この難セクションに挑み、阻まれ、体力を消耗していく。

画像3: フィニッシュヒル、この坂を登ったほうが勝ちだ!

10分か、20分くらいチャレンジが続いただろうか。ギャラリーが集まる中で、山本陣営が奇策に出た。ライダー同士のヘルプは認められているという前提での、人海戦術。

画像4: フィニッシュヒル、この坂を登ったほうが勝ちだ!

「それでいいのか」という声も、現場で出た。また、この局面においてライダー同志とは言え、ヘルプをしていいのか、それを判断できる人がここにはいなかった。

画像5: フィニッシュヒル、この坂を登ったほうが勝ちだ!

高橋は、空いたラインを果敢にチャレンジ。中腹でストップしてしまうが、同じように手伝おうとする人間を振り払い、自力で押し上げようと試みる。しかし、山本が先にゴールを切ってしまう。この時点で、無線で連絡が入り「ヘルプは認めない、山本は戻って再度やりなおし」との指示も出ていた。出ていたが、無線が入り乱れたか、現場の緊張のせいか、「OK」の声が出てようやく山本は緊張の糸を振りほどいた。いいのか、わるいのか、それすらわからず山本はガッツポーズできずにいた。

画像6: フィニッシュヒル、この坂を登ったほうが勝ちだ!

レース後、このフィニッシュヒルの一件は、審議にかけられた結果、山本のフィニッシュは観客のヘルプで上ったことによって、無効となる。

表彰台では、G-NET代表の栗田氏がこの件について触れている。
「レース時間の3時間をすぎ、チェッカーフラッグが振られているという状況のなかでは、ヘルプしたのはライダーではなく観客と見なします。また、結果に著しく影響するヘルプ(ルール違反)は日野ハードエンデューロに(の規則)にも書いてあるんですけども、それに抵触するということで最後の周はミスとのことで引かせていただきました。私も監督不行き届きのところがありまして、ご迷惑おかけしました。この場を借りて、謝りたいと思います」そう言って、栗田氏は山本に頭を下げ、山本はこれを受け止めた。

山本は「僕のルール認識不足ってこともあって、悔しいんですけど、今回は戦えるっていう自信をしっかりもてました。来年はチャンピオンをとれる自信があります。僕はまだ若いし」とコメントしている。

つかみ取った5連覇、48歳高橋の2019年

画像1: つかみ取った5連覇、48歳高橋の2019年

序盤の大クラッシュが響いた高橋博。

画像2: つかみ取った5連覇、48歳高橋の2019年

ブレーキペダルを曲げてしまいつつも、攻めに転じ最後まで諦めなかった。「自分が序盤走れていないこともありますが、ここまで追い詰められる展開は初めてで、いよいよ若手がやってきたことを感じています。僕も、いつまでも同じことをやっていないで若手の育成に力をいれようと思っているところです」と高橋。元々師弟の関係であった高橋と山本が、来シーズンはさらに僅差の戦いを繰り広げてくれることを楽しみにしたい。

画像3: つかみ取った5連覇、48歳高橋の2019年

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