毎日上がってくるニュースを飾る映像が、ここまで砂漠ばかりだった年は、ダカールラリーが南米に移ってから無かった。日数も、距離も例年より大幅に短く、しかし「70%がサンドである」というまったく別のレースではないかと思われるほどの改革に挑んでいるダカールラリー。レストデイに入った1月12日、これまでの前半戦を振り返ってみよう。

キャンセルがほとんど無い、中身の濃厚さ

この数年、ダカールラリーはステージキャンセルの悩みに脅かされてきた。主に、アルゼンチンで前半におこりがちだった豪雨被害によるキャンセルは、酷いときには2日続けて休みに。2018年に、せっかく用意されたマラソンステージが半分無くなったのは、記憶に新しい。だが、この2019年はモト部門においてはキャンセルの情報が入ってきていない(ステージ5で、トラック他の部門は濃霧でキャンセルになった区間があるとのこと)。

画像: キャンセルがほとんど無い、中身の濃厚さ

加えて、このサンド率の高さだ。僕稲垣は、2016年のダカール現地取材に行っているのだけど、その時は今年に比べると「おまけ」くらいの砂漠しかなかった。ダカールと言えば砂漠だ! デューンの絵が欲しい! と探し続け、結局撮れなかった残念な思い出がある。それほどに、砂率は低かったのだ。

この中間地点において、これほどまでのサバイバル戦になったのは、今回のダカールラリーの趣旨によるものだと思われる。おそらく、その密度から言えば、例年の前半よりも濃厚なものになっている。

相次ぐホンダ優勝候補の離脱

ダカールが牙をむいたのは、ステージ3。Team HRCのエースであるJ・バレダの離脱だ。M・ウォークナーやR・ブラベックらも迷い込んだというルートミスに、バレダは思い切り先頭で突っ込んでしまい、崖から落ちてしまう。谷底からの復帰を試みたものの、這い上がるルートを見つけられずにリタイア。

続くステージ4、5はマラソンステージ。マラソンステージは、パリ=ダカール時代に1000kmを超えるステージがあったことをリスペクトしたシステムで、1日目のビバークにはチームのアシスタンスがアクセス出来ない。2日目のスタートまで、ライダー達は自分でマシンをメンテナンスしてスタートさせなければならないし、大きなモーターホームで体を休めていたファクトリーライダーも、体育館のような場所で一夜を過ごす。だから、マラソンステージはまさに「試されるステージ」なのだ。

マラソンステージ後半のステージ5、さらにリタイアが増えてしまう。

画像1: 相次ぐホンダ優勝候補の離脱

ステージ5のモト部門は、モトクロススタイルの10台一斉スタート。ギャラリーに人気の迫力ある形式だが、確実にナビをこなして1台でもルートをフォローし続ける能力よりも、ライディングスキル、スピードが試される傾向にある。無理もしやすい場面だが、ここでスーパークロスの元スターであるA・ショートがステージ5位と健闘していることが印象的。

画像2: 相次ぐホンダ優勝候補の離脱

Team HRCにおいて12回の参戦経験を持つレジェンドライダーでありながら、優勝を狙えるライダーであるP・ゴンサルベスは、この一斉スタートの影響があったのかは定かではないものの、150km地点でクラッシュして手首を骨折。リタイアになってしまった。また、MEC HRCのD・デュプレシも転倒でリタイアしており、HRCをサポートするライダーが一人失われてしまった形だ。

HRCのJ・コルネホは「今日のステージは、モトクロスのような一斉スタートで行われました。ほこりが多く、石もたくさんあって危険でしたから、一斉スタートという方法はよくなかったと、私は思います。(https://www.honda.co.jp/DAKAR/race2019/dakar-rd05/より引用)」と苦言を呈している。

このゴンサルベスの窮地に、かつてのチームメイトであったS・サンダーランド(KTM)は手当に10分ほど停止。ダカールでは、このような紳士的行動を評価しており、今回はサンダーランドのタイムに救済措置を加えている。

ヤマハはトップ2名だけの戦いへ

画像: ヤマハはトップ2名だけの戦いへ

ヤマハは、昨年に引き続き快走を続けているようにみえる。X・ソルトレイトは特に好調で、ステージ5もサンダーランドの救済がなければトップタイムであった。しかし、コンパクトなチーム体制の4名で挑んだ今大会、すでにウォーターボーイであったF・カイミ、R・ファゴッタがリタイアを喫している。快調なソルトレイト、およびエースのA・ビバレンをバックアップするライダーはもういないのだ。

無傷、無敵艦隊KTM

画像1: 無傷、無敵艦隊KTM

さて…そこで総合順位をみてみると、上位10名中の4名がKTMで2名がハスクバーナである。

2位 S・サンダーランド 2017年優勝
4位 T・プライス 2016年優勝
7位 M・ウォークナー 2018年優勝

と、そのKTMの4名中3名が優勝経験者なのだ…。9位のS・スヴィツコも、2016年2位に入った、驚異的なプライベーターであり、スロバキアの英雄。この層の厚さこそ、KTMの王者ぶりを示している。このうちの、誰が後半でトップに浮上してきてもまったくおかしくなく、10位以内でのバックアップも存分に可能。チーム戦である現代ダカールにおいて、折り返し地点でのこの勢力図は、フラットな目でみれば「今年も盤石」といったところ。

画像1: Photographer: Marcin Kin

Photographer: Marcin Kin

前述したとおり、ライバルであるP・ゴンサルベスを救助するためにタイムロスをしたサンダーランドは観衆をも味方につけていて、現状2番手。

画像2: Photographer: Marcin Kin

Photographer: Marcin Kin

画像3: Photographer: Marcin Kin

Photographer: Marcin Kin

KTMは2018シーズンに新型の450RALLYを投入しており、2019年は2期目にあたる。フルモデルチェンジに関する不安要素は見る限りなさそうにみえる。

画像2: 無傷、無敵艦隊KTM

女王L・サンツは折り返し地点で19位。ここから底力をみせるはず。

覚醒したR・ブラベックがトップを死守

画像1: 覚醒したR・ブラベックがトップを死守

無敵艦隊KTMを崩すとすれば、一点突破の鋭利な槍。その飛槍となりそうなのが、2019年のダカールで覚醒したR・ブラベックである。ダカールライダーとしては、珍しいアメリカンライダーでデザートレースをバックグラウンドに持つ27歳。

20152nd Hare&Hound AMA Championship; Best Junior rider Abu Dhabi Desert Challenge, 5th place overall
2014Champion Hare&Hound AMA Championship; Winner San Felipe 250; Winner Baja 500; Winner Baja 1000; Winner Vegas to Reno; Winner Imperial Valley; Winner SCORE International Pro Motorcycle
2013Winner 'Best in the Desert' series
2012Runner-up 'Best in the Desert' series
2007Start in off-road competition. District 37 series

ダカール4年目になるHRCの秘蔵っ子、ブラベックはアメリカの名門オフロードチーム、JCR Hondaにも属している。バハの王者ジョニー・キャンベルの教えを引いていて、アメリカのオフロードシーンにおけるアイコンへと成長しつつある。

画像2: 覚醒したR・ブラベックがトップを死守

自ら歩んできたデザートレースのキャリアと、今回のダカールとの相性もいいのだろう。

ステージ4の快挙は、奇跡的。20分もの差をつけてP・キンタニラをあっさりパス。一気に首位に踊りたった。ここまで急激なペースアップを近年してきたのは、リタイア済みのJ・バレダくらいのものだったと思う。ステージ4では「今日は勝ちにいく日として終始プッシュし、作戦通りこの結果を勝ち取りました。そして明日は、モトクロスのようにグリッドに並ぶ一斉スタートになるので、先頭でリスキーなナビゲーションをする必要がなく、今日の勝利は明日にも活きるといえるでしょう。(https://www.honda.co.jp/DAKAR/race2019/dakar-rd04/)」と興奮気味。

昨シーズン、A・ショートと共にJ・ルイスのトレーニングを受けたのだろうか。2018年2位のK・ベナバイズと共に、HRCはツートップでKTMの牙城を崩しに行く。

あのライダーは今…

下半身不随でダカールのゴールを目指したN・デュットはステージ5でマシントラブルがあってスタートできず。あえなくリタイアになってしまったが、不可能に挑戦するその姿勢に、多くのオフロードライダーを勇気づけたことだろう。

こちらアナスタシアは、ステージ5を無事おえて92位。

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