KTM/ハスクバーナ/GASGASの3メーカーによる2023年モデルの試乗会に参加し、KTM 250EXCとハスクバーナ TE250を試乗。モトクロスマシンとエンデューロマシンはどう違うのか、乗り比べてみました

TESTER/辻健二郎
TEST TRACK/長野県ワイルドクロスパークGAIA

KTM
250 EXC

KTMの2023エンデューロモデルは90年代初期のカラーリングをオマージュ。フレームにはファクトリー同様のオレンジコーティングを採用している。

Husqvarna
TE 250

ハスクバーナの2023エンデューロモデルは、グラフィックをエレクトリックイエローとダークブルーに変更。フレームにはメタリックブルーを採用。

辻健二郎が語る、初めてのエンデューロ。「車体のベースは同じでも、全く異なる乗り心地」

試乗インプレッションを担当したのは元全日本モトクロス選手権ファクトリーライダーの辻健二郎。今までエンデューロを走った経験はなく、今回の試乗が初めてのエンデューロ走行となった。試乗したのはKTM 250EXCとハスクバーナ TE250。全日本モトクロス選手権元IAライダーが初めてエンデューロを走るとどのような印象を持つのか、モトクロスマシンとエンデューロマシンの違いをどう感じるのだろうか。

画像1: 辻健二郎が語る、初めてのエンデューロ。「車体のベースは同じでも、全く異なる乗り心地」

「初めてエンデューロを経験しましたが、いいっすねぇ(笑)エンデューロというとガレ場や狭いところを走るじゃないですか。今日走ったエンデューロコースも、木と木の間を通ったり、木の根っこが出てたり、石があったり...... 走り始めは稲垣さん(注:OFF1.jp編集長。自他共に認める万年ビギナー)が抜けていくところを一度止まって抜けるくらい恐る恐る走っていました。ただ、段々と慣れてくると、このセクションはどうやって抜けたら速くてカッコいいかな~と、楽しむことができましたね。

エンデューロマシンは、モトクロスマシンみたいにアクセルを開けてもエンジンの回転数が一気に上がらないため、走りやすかったですね。たとえば、モトクロスマシンはアクセルを開け閉めするとマシンの動きがギクシャクするような感覚があります。一方、エンデューロマシンはアクセルを開け閉めしてもギクシャクした動きを感じることはありませんでした。このエンジン性能の違いによって、エンデューロコースも面白いって思えるくらい乗りやすかったですし、ガレ場や木の根っこがある中でも走りやすいよう作られているんだなと感じました。

車体のベースはモトクロスマシンと同じですが、全く異なる乗り心地でした。モトクロスマシンは踏ん張る時にグッと止まるような、突っ張る感じがあります。さらに、アクセルの開けに応じてすぐ反応するし、いつでもMAXのパワーで走ってくれます。一方、エンデューロマシンにはその突っ張り感が無くて、猫が歩いているような、しなやかさがある印象を受けました。当たりが柔らかいので、難しいセクションも弾かれずに走ってくれる柔軟性がありました。

今回、このエンデューロマシンでモトクロスコースを走る機会があったので、乗ってみました。モトクロスマシンだと、たとえばストレートのここからここまでという範囲内で思いっきり加速をしたら、スピードが乗るので、コーナー前の減速時では止まりたいポイントよりも行きすぎてしまったり、帳尻を合わせないといけない感覚があります。一方、エンデューロマシンに乗ってみると、モトクロスと比べて素早い加速感はありませんが、地面を捉えている時間がめちゃくちゃ長くて、コースのセクション全てが繋がって走っている感覚でした。モトクロスのレースを走るとなると加速感が物足らないと思いますが、ジャンプもコーナーもすべてクリアできるし、タフネスが足りないわけでもありませんでした。意外とモトクロスコースも走れちゃいましたね」

画像2: 辻健二郎が語る、初めてのエンデューロ。「車体のベースは同じでも、全く異なる乗り心地」

「逆に、モトクロスマシンでエンデューロコースを走ることを想像すると、おっかないなと思います。エンデューロコースにできた細かいギャップを、フロント上げてタップさせていくのはやりやすいと思いますが、コーナーを曲がる時にブレーキをかけると、地面の方がバイクの力強さに負けちゃうと思います。特に感じたのは、エンデューロコースの狭い下りを降りた後に丸石があったところ。エンデューロマシンで走行していても、わずかにスピードが乗っただけでフロントが変な方向に行っちゃったので、モトクロスマシンでそんなところを走ったら「サヨナラ〜」ってコースアウトして崖から落ちちゃうんだろうなと思いました。

ちなみに、『地面がバイクの力強さに負ける』という表現は私の感覚です。モトクロスコースでマシンを曲げたい時、私は地面のギャップやちょっとしたバンクにマシンのエネルギーを当てて曲げています。しかし、エンデューロコースはモトクロスと走り方が違うので、当然コースの土の盛り上がり方も違います。なので、モトクロスマシンで、モトクロスと同じ感覚で曲がろうとすると、マシンのエネルギーが強すぎてエンデューロコースの地面が負けてしまうと思いました」

WP製サスペンション、ノーマルとPRO仕様の違い

今回試乗した250 EXCとTE250だが、ともにWP製サスペンションが採用されている。試乗会にはWP製ノーマルサスペンションとWP PRO仕様の2種類のマシンが用意されており、辻には両方を乗り比べてもらった。

画像: WP製サスペンション、ノーマルとPRO仕様の違い

ノーマルとPRO仕様の一番の違いは減衰力を生む機構。ノーマルはシムと呼ばれる円盤形のパーツを積層し、この隙間をオイルが通ることで減衰力のキャラクターをセッティングできるようになっている。WP PROはコーンバルブと呼ばれる円錐状のパーツがこれを担うシステムで、サスの初期からボトムまできめ細やかにセッティングすることができるのが特徴だ。また、特に積層シムでは対応しきれなかった極微細の衝撃時でもダンピング性能を発揮できるため、コツコツ感が出づらいと言われている。モトクロスではAMA、MXGPともに多くのチャンピオンを生み出してきた実戦的システムである。

一方、リアショックにはスーパートラックス機構を搭載。リアへの荷重が抜けた時に瞬時にリアホイールを地面に押し付ける力が発生するという夢のような機構で、長くリアタイヤが地面を掻くことで加速区間を伸ばすことができる。この機構は従来のトラックスから進化して作動性を向上、またトラックス自体の効きをダイヤルで手軽にアジャストすることもできるようになった。これらWP PROのセッティングは、メーカーの基本設定で試乗会に並んでおり若干硬めの減衰だった。

画像: 試乗インプレッションを担当したのは元全日本モトクロス選手権ファクトリーライダー辻健二郎。現在はモトクロスウエアブランド「seven」の正規取扱店「2G MOTO SHOP」を運営する

試乗インプレッションを担当したのは元全日本モトクロス選手権ファクトリーライダー辻健二郎。現在はモトクロスウエアブランド「seven」の正規取扱店「2G MOTO SHOP」を運営する

「実際、KTM250 EXC WP PRO仕様に乗ってみると、レース指向のセッティングで若干フロントが低い傾向に感じました。モトクロスマシンと同様、スタンディングでセンター乗りを多用するとマシンをコントロールしやすく、乗り心地がよかったです。スタンダードでもコントロール性はよく、エンデューロビギナーの自分には十分なポテンシャルと乗り心地でした。

ハスクバーナのTE250は、モトクロスマシンFC250の特徴と同じく、乗りやすさを感じるマシンでした。スタンダードとWP PRO仕様、どちらとも楽しかったです。エンデューロ初心者の自分でも走行を楽しむことができたし、恐怖感を解いてくれるマシンでした。PRO仕様はレーサー向けとはいえ、初心者の方も違いがわかると思います。調整幅が広いから、むしろ自分のライディングに合わせやすいのではないでしょうか」

永遠のビギナー! ジャンキー稲垣インプレ

オンタイムエンデューロだけでなく、クロスカントリーや、山間コースのフリーライディングなど、エンデューロバイクはモトクロッサーに比べると比較にならないほど様々な用途で使われているため、いかにその懐を広く持っておくかが大事な要素だ。欧州・北米において昨今のオフロードバイク市場は20年前とは大きく変化している。特に北米では広大なフリーライドエリアで遊ぶ層だけでなく、トレイルをつないで走って遊ぶ層が増えており、2018年に鳴り物入りでマーケットインしたCRF450Lはそういった「ナンバーを取得できるマシンが欲しい層が増えている」という背景を持っている。

画像1: 永遠のビギナー! ジャンキー稲垣インプレ

日本ではコアなオフロードバイク乗りがRMX250などのハイパワーな2ストトレールバイクからエンデューロバイクへ乗り換える動きがあったのが2000年代前半。某外車ブランドでも「8割方レースユースではなく、林道ツーリングに使用されている」という話を聞いたことがある。エンデューロバイクに期待される性能は、ただパワーが出ていればいい、エンデューロで勝てればいい、というものではないのだ。エンデューロのレジェンドであり、現代のEXCシリーズ開発に大きく寄与したジョバンニ・サラはインタビューで「エンデュランサーの開発では誰にでも扱えるマシンにするであることが、一番大事だ」と答えてくれたことがある。とはいうもののエンデューロバイクに求めるものはトレールバイクのような性格ではないから、ますますそのレベル感のさじ加減が難しい。

長年EXCシリーズを追いかけてきた自分からすると、どうやらEXCシリーズは扱いやすくなる年とレーシーになる年で分かれているように思う。時代やマーケットの中心にいる世代を考慮にいれた結果なのだろう。2017年式、2020年式でフルモデルチェンジをしたEXCシリーズだが、昨今は年々レーシーな方向性に味付けを振ってきていると感じている。そういった前情報を加味しながら2023年式に乗ってみた。

KTMの250EXCについて感じるのはポジショニングのとりやすさだ。僕稲垣は身長180cmで大柄な類いに入るのだけれど、数ある国内外のエンデューロバイクの中でもハンドル・ステップ・シートの三角が大きく感じ、狭くるしさがない。反面シート高や重心位置は高めの設定でレーシーな味付けだと感じる。エンジンについても全体的にだいぶシャキッとした感じがあってモトクロッサーに近づいている感触がある。レスポンスが特に歴代EXCのなかでもクリアに感じるため、いつもどこで開けたら登れるかわからず躊躇してしまう木の根や大きなギャップでもすんなり「ここだ!」とタイミングを掴むことができた。かといって砂利のスリッパリーな路面をひっかきすぎるようなこともなくて、僕のような万年ビギナーをしっかり助けてくれる優しさは健在である。厳しくなったらEXCじゃない。そんなEXCは嫌です。

2ストロークのEXCシリーズは2017年にエンジンを刷新しており、このタイミングでバランサーが内蔵されている。2ストローク特有の振動がほとんど消えていてかつての国産2ストトレールマシン以上に穏やかなフィーリングが生まれた。その翌年2018年モデルでTPI、つまりインジェクション化されたのだが、この5年でのTPIの進化はめざましく、いまやキャブレターのほうがいいというライダーはほぼ皆無になったのではないかと思う。年々FI特有のツキの堅さがまろやかになり、ライダーの意図しないレスポンスが急に出てしまうような場面はゼロになった。250ccもあるから回せば必要以上のパワーが出るし、速度も乗りやすい。現代のエンデューロにおけるマスターピースと表現したい。

画像2: 永遠のビギナー! ジャンキー稲垣インプレ

ハスクバーナのTE250はKTMに比べると少しマイルドで車体も低め。モトクロッサーと同様の傾向にあるのだが、KTMよりもさらに多くのライダーにおすすめできるもの。エンジンの違いはあまりわからなかったのだけど、車体は重心も低くなることで、より低速のコーナリングに安定感が出る。しっとりした乗り心地のほうが好み、というライダーにはハスクバーナのほうがマッチするはず。

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