世界一過酷なエンデューロと言われている、エルズベルグロデオにイギリス人LyndonPoskit(リンドン・ポスキット)が挑戦する。相棒に選んだのはAlta Motorsエレクトリックダートバイク。電動バイクだ。次世代のマシンでの参戦に、世界中から注目が集まる中、彼のバイクは盗まれてしまった。

2019年のエルズベルグロデオまとめはコチラ

24時間以内に返却を!

Alta Motorsエレクトリックダートバイク2台、ホンダ発電機2台、カメラ装備のフライトケース2個、Mac Bookプロとドローンがレース直前に彼のトランポから盗まれてしまった。理由は問わず、返却された場合には5000ポンドの報酬を支払うという。とにかく彼はマシンが返ってくることだけを望んでいる。

Lyndon Poskitt Racing

電動バイクALTA MOTORSとリンドンにかかる期待

エルズベルグロデオとは、オーストリアのアイゼンナーツという鉱山で行われるレースで、毎年1000人以上が世界から参加する。2日間の予選で500人が選考され、本戦では皆一斉に鉱山の岩壁のてっぺんを目指してマシンと共に発射していく。完走できるのはごく僅かな精鋭のみ。2016年の完走者は10名、昨年2017年の完走者は25名であった。

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そんなレースに挑むリンドンは、KTM690ラリーと共に単独で世界を旅しながら、各国のラリーやエンデューロに参戦しているライダーであり、2017年、2018年にはプライベーターとしてダカールに参戦。Malle Moto(チームサポートを受けずに自らの力で走る)クラスで完走を果たしている。2016年には北海道にて行われたHTDE(日高2デイズエンデューロ)にも参戦、上位入賞するほどの実力者だ。礼儀正しく、フレンドリーなキャラクターは、出会った人々を魅了し、世界中で愛されている。そんな彼が今回巻き込まれた事件に世界の友人達の怒りは心頭だ。

altamotors.co

マシンはALTA MOTORS社のENDURO(EX)、本来のマシンであれば、エンジンが積まれている位置にバッテリーを含む駆動システムが搭載されており、重量は30kgほど。総重量は125kg、馬力は42HP、4ストローク250ccクラスのマシンに相当するよう設定されている。燃料を必要としない代わりに充電は必要で、充電にかかる時間はおよそ2時間。1回の充電で走行の条件にもよるが、シングルトラックやウッズなどのライディングで4時間以上、街乗りで96km程度走行可能であると発表されている。

実際に完走は可能なのか?

まず最初に心配されるのはバッテリーのもち。2時間でフル充電できるとはいえ、レース中にバッテリーがあがってしまったらバッテリーの積み替えでも行わない限り終了だ。トップライダーのゴール時間を見てみると、昨年で2時間14分48秒であるため、レーシングスピードでの走行でも十分なマージンを残していると考えられる。ただしこれは、本戦に生き残れたら、の話で、まずは予選で上位500名に残らなくては意味がない。では、どうしたら本戦に残れるのか?予選はダートのハイスピードタイムアタックで、140−150km/hレベルの戦いだと言う。このEXのオフィシャルデータでは最高速が114.2km/hであるので、少し不安が残る。しかしこれはパワーとトルクを制限した状態での数値なので、レースに向けてどのように照準を合わせてくるのか楽しみだ。

精密な電子部品で作られているマシンで、一番重要なのは、転倒時などの衝撃に果たして耐えられることができるのか?ということであろう。剥き出しの岩場、急斜面からマシンごと転がり落ちてしまうこともあるかもしれない。答えは問題なし。何千回ものテストを繰り返し、あらゆる衝撃や振動に耐えられるよう設計されている。エンデューロマシンとして作られたこのEXのベースは同社のモトクロッサーであり、70ft(約21m)ジャンプの着地時の衝撃も全く問題ない。データ上では申し分ないマシンであるが、実戦での実力は未知。この測り知れないマシンと世界的人気ライダーのリンドンのマッチングが、世界一過酷なレースでどのような活躍をするのか楽しみでならない。

祈るばかり

とにかく、マシンがなくてはレースを走ることができない。開発途中ともいえるこのEXは、イギリスにたった2台(リンドンのもの)しかない非常に貴重なマシンだ。盗んだところでどうしようもないではないか。どうか早急にリンドンの元へ返して欲しいと祈るばかりだ。今週末、リンドン・ポスキットがスタートラインに列ぶことを強く願う。

リンドンからの切実なメッセージです

エルズベルグは6/3(日)日本時間PM9:00から

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