JNCCが主催する耐久レース10耐Gで日本人チームとして最高成績の総合3位を獲得したのはチーム「Rider team Young Gun」。JNCCで育った若手ライダー4人で構成されたドリームチームだ。

日本ではエンデューロはモトクロスに比べ平均年齢が高く、おじさんたちが楽しんでレースをしているイメージが強いのだが、昨今では少しずつ流れが変わってきている。JNCCが取り入れたKIDS&TRYでレースを始めたキッズライダーが成長し、フルサイズに乗ってFUNやCOMPで上位に食い込んできたり、モトクロスをやっていたキッズ・ジュニアが途中でエンデューロ/クロスカントリーに転向し、いきなり良い成績を出すことも珍しくない。

ここでは彼らのチームを組んだ経緯やチームメイトについての想い、レースで得た経験、自身のこれからについてなどをインタビューさせていただいた。彼ら4人以外にも、これからエンデューロ界での活躍を夢見る若きライダーたちに、少しでも励みになれば、嬉しく思う。

「チームをまとめたリーダー役の長男」
渡邉誉(23歳)

Off1:まず、今回のチーム結成について、経緯を教えていただけますか?

「最初はヨシカズ(保坂修一)に10耐に一緒に出ようって誘われたんです。その時は去年8耐で優勝したヨシカズとタイチ(宇津野泰地)と僕の3人チームの想定だったのですが、4人まで出られるんだから、せっかくだしイッコー(佐々木一晃)も誘ってみようと思って声をかけました。

4人目にイッコーを選んだのは、最近すごくレベルアップしてきているし、良い経験になるのではないかと考えたからです。イッコーは速いのにあんまりレースに対する貪欲さがなくて、自分からレースに出たいとか練習したいって言うことが少なかったみたいなんですよね。でも、10耐が本当に楽しかったみたいで、レースのあと自分から練習する気になってると聞いて嬉しいです」

Off1:最年長としてチームを引っ張っていく上で、何か意識したことはありますか?

「最初は、僕がみんなを引っ張っていかないといけないな、と少しプレッシャーがありました。レースが始まる前、第1ライダーのタイチは準備ですごく慌てていて、余裕がないように見えましたし、イッコーもすごく緊張していました。ヨシカズだけはいつも通りでしたけどね(笑)。

だけど実際レースが始まってみるとみんなすごくいい走りをするし、みんなで作戦を考えてパンクや怪我などのトラブルにも落ち着いて冷静に対処することができたので、後半はプレッシャーもなくなって自分の走りに集中することができました」

Off1:来日した外国人ライダーについて一言お願いします。

「JJ(ジョナサン・ジョンソン)ともライアンともほとんど絡めなかったんですよ。最後の周回のウッズでJJが後ろにいたんですけど、僕を抜かずに先にいかせてくれたので、ラストもう一周走ることができたんです。その周回は前にライダーがほとんどいなくて本当に気持ちよく走ることができて、JJには感謝しています」

Off1:JNCCの思い出や、今後の目標について聞かせてください。

「モトクロスをやめた後にキャンオフで初めてエンデューロというものに出て、それからヨシカズに誘われてJNCCに出たんです。初めて出たのが2015年のシーサイドバレー、僕がFUN-DでヨシカズがFUN-Cだったんですけど、ヨシカズに勝てたのがとても嬉しかったのをよく覚えています。だけどその後にAAGPでヨシカズがYZ250FXに乗り換えてきて、負けちゃったんですけどね(苦笑)。

僕がいまエンデューロをやっているのは間違いなく保坂家のおかげです。ヨシカズはどんどん上に行ってしまってますが、僕も負けないように成長していきたいと考えています」

渡邉は自動車大学校を出て、現在はディーラーで整備士として働いている。休日はバイクに乗って自身の練習をしたり、石戸谷蓮や石本麻衣とともにスクールで講師を務めたり、充実した日々を過ごしている。日・月が休日のためレース前日は大変だが、10耐の次の日も「ヨシカズのタイムに全然及ばなかったのが悔しくて」と、コースで練習をしているほどの貪欲さを持っている。

「クロスカントリーの経験ナンバー1の次男坊」
宇津野泰地(21歳)

Off1:まず今回のチームについて感じたことを教えてください。

「去年の8耐Gでヨシカズ(保坂修一)とチームを組んで勝っていて、連覇を狙っていたので、無事優勝(外人チームは除く)することができて嬉しいです。今回はキャンオフで知り合った誉さん(渡邉誉)に声をかけてもらって、最高のチームで走れたことも良かったです。

今回の4人の中で、僕だけはモトクロスを経験していなくて、乗り方も派手さや一発のスピードがないのは自覚していたので、できるだけ止まらず、スムーズに走ることを心がけました。JNCCではFUNクラスしか出ていないので、コンプガレを走ったのはGライド以来だったのですが、一回も転ばずに走りきることができたので、来年コンプに出た時にこの経験が活きると思います」

Off1:来日した外国人ライダーと走ってみてどうでしたか?

「ウッズの入り口でJJ(ジョナサン・ジョンソン)に抜かれた時にラインをトレースして後ろをついていったら、そこから半周くらい一緒に走ることができて、結局リアがパンクして離れてしまったのですが、自信にもなりましたし、そのあともウッズのJJラインを使うことでペースをあげることができました」

Off1:他の3人のメンバーについて、感じたことを一言ずつお願いします。

「ヨシカズはやっぱりすごく速くて、年のわりにすごく落ち着いていて頼りになるし、誉さんはみんなをうまくまとめて引っ張ってくれました。イッコー(佐々木一晃)とはほとんど話したことがなかったのですが、今回いっぱい話すことができて良かったです。走りもすごく速くて、うかうかしてるとすぐに抜かされてしまうな、と危機感を感じましたね」

Off1:今やっているトレーニングと、今後の目標について教えてください。

「高校時代は長野の山を片道17km、高校まで自転車で通学していて足腰に自信があったのですが、大学は電車通学で下半身が衰えてしまっているのを感じています。バイトや学校が忙しくてなかなかトレーニングする時間が取れないのですが、今は腕上がり対策に時間を見つけて雑巾絞りをやっています。実際90分のFUNクラスでは腕上がりしなくなってきています。

できれば今年の糸魚川かAAGPでもう一回FUNで総合優勝して、来年はCOMPクラスに出たいと思っています。将来はやっぱりCOMPでいい成績を出して、GNCCの派遣枠に入れるようなライダーになりたいですね」

宇津野は現在、車屋さんでアルバイトをしながら大学で外国語を学んでいる。3年生なのでこれから就職活動が本格化するが、来年もできるだけJNCCには出たいと語っている。モトクロスをまったく経験していない純粋なエンデューロライダーとして、どこまでいけるのか。ぜひその可能性を証明し、多くの若きエンデューロライダーの目標となってもらいたい。

「ここ一番のスピードはピカイチ、頼れる3男」
保坂修一(16歳)

Off1:去年の8耐Gの優勝と、今回の10耐Gとで何か違いはありましたか?

「今回の10耐は絶対に2連覇したかったんです。10時間もあるので2人じゃ大変かな、と誉くんとイッコーを誘ったのですが、正直ちょっと走り足りなかったですね(笑)。誉くんが10耐の次の日に練習してるのをSNSで見て、ウズウズしてました。

去年の8耐のレイアウトとほとんど同じコースでしたが、荒れるのが早くて、ギャップもどんどん深くなってきましたし、セクション以外もガレてて休める場所がなくて大変でした。毎周毎周コースコンディションが変わるので、ライダー交代の時に、宇津野くんがコンプガレの状況を詳しく教えてくれたのが、すごく助かりましたね」

Off1:チームで走ることと、一人でレースするのとで、意識して変えたことはありましたか?

「他のみんなはチーム戦ということを意識して安定感のある走りをしてくれていたのですが、僕は自分の仕事はいいタイムを出して順位をあげ、他のみんなに負担をかけないことだと思っていたので、かなりプッシュして走っていました。

プッシュしても取り返しのつかないようなクラッシュはしない自信がありましたし、やらかしても対応できるようにいろいろ準備もしていました。例えばこのあいだのJEC富山ではブレーキガードが溶けてディスクをコーティングしたみたいになってしまったのですが、今回は同じことになってもすぐに直せるように紙ヤスリを用意したりしていました」

Off1:最近、走り方を変えてるとお聞きしましたが?

「はい。先日のナイター閣下(デヴィッド・ナイト)のスクールに参加してアドバイスをもらってから、走り方を変えているんです。例えば、コーナーの突っ込みを頑張りすぎず、コーナー全体を通してスピードをなるべく一定にするような走りを研究しています。またコーナーの進入の仕方、脱出の仕方も変えてみています。モトクロスだと他のライダーとの駆け引きがあるので、コーナーで突っ込んで前に出たりコーナーを鋭角に曲がったりというテクニックが必要になってくるのですが、オンタイムでタイムを出すためのライディングを意識しています。

なので今回の10耐は実践でそれを試せるいい機会でした。実際に31周目かな? もうけっこうコースが荒れてきている後半なのにベストラップで8分台を出すことができて、神馬(匠)さんのベストタイムよりもいいタイムだったんですよ。4秒だけですけどね(笑)。また、JJやライアンとはレース中にまったく絡めなかったのですが、タイムは常にライブタイミングでチェックして意識するようにしていました」

Off1:モトクロスをやめたあと、ここまでJNCCを続けてこれたのはなぜですか?

「僕はキッズから85ccまでモトクロスをやってました。全日本モトクロスにも一回だけ出たことがあるんです。けど、ジャンプがあまり得意ではなくて結果がついてこず、悩んでいた時にJNCCに誘ってもらったんです。

とにかく前夜祭が楽しくて、あとコースの景観ですね。特にやっぱりシーサイドバレーを初めて走った時の衝撃は忘れられません。空がすごく開けていて気持ちがよかったし、雲海の中に突っ込んでいった時には最高の気分でした。今年でファイナルになってしまうらしいので、できれば出たいんですけど、時期的に難しいかもしれません…AAGPには出ようと思っています」

Off1:最後にいつも応援してくれているお父さんに一言!

「普段はあまり言わないのですが、親にはとても感謝しています。いつも長距離を一人で運転してくれて、トレーニングメニューやライディングの相談にも乗ってくれます。こんな親、なかなかいないですよね。いつもありがとうございます」

ここ2〜3年で圧倒的に力をつけてきた保坂は16歳にしてエンデューロIBライセンスを持ち、その中でもテストタイムはIAの上位にも匹敵している。「鈴木健二さんや釘村忠さんと肩を並べて戦って、そして勝てるライダーになりたい。目標はもちろんISDEのゴールドメダルです」と臆面もなく保坂は言う。聞く人によっては自信過剰で少し生意気に聞こえるかも知れないが、16歳とは思えないほどマシンやライディングをしっかり研究しているし、実際にそれだけのトレーニングをこなし、結果を出してきているライダーだと、筆者は思っている。

「今年一番の成長株、期待の末っ子」
佐々木一晃(14歳)

Off1:まずは日本人優勝できたことについて、素直な感想をお願いします。

「正直、本当に勝てるとは思ってなかったので、驚きました。一人でFUN-Cクラスで勝てた時よりも全然嬉しいです」

Off1:チームで戦ったこと、他のメンバーに対して感じたことを教えてください。

「作戦として1時間交代で走る予定だったのですが、僕が手のマメを潰して走れなくなってしまった時に宇津野くんが予定より早く交代して走ってくれました。でもその宇津野くんもすぐにパンクして戻ってきてしまったんです。そこで交代したヨシカズが本当に速くて。その時にはまだ神馬さんチームが前にいたんですけど、逆転してさらに半周くらい差を広げてくれたんです。

また、誉くんがすごくいっぱい走ってくれたおかげでゆっくり休憩を取ることができました。僕は前半でマメを潰したあと、痛くてもう走れない感じだったんですけど、おかげで少し回復することができたので、後半も頑張って走ろうと思いました。ライダー交代する時も、コンディションの変化に対応する走り方をアドバイスしてくれたりして、本当に頼もしかったです。

宇津野くんとはいつも同じFUN-GPに出ているのですが、クラスが違うのでスタート位置も違うしレース中も全然絡まなくて。初めてちゃんと話したんですけど、向こうからいっぱい話しかけてくれました。話してみるとすごく話しやすくて、楽しくレースすることができました」

Off1:コースや外国人ライダーとの絡みについて、何か得るものはありましたか?

「いつもはFUN-GPしか出ていないので、コンプガレに初めて登りました。ファンガレよりも石が少なかったのですが、動かない石がまばらにあるせいで弾かれやすくて、苦労しました。スタックも転倒もなく登ることはできたのですが、何回か登ったらすごく疲れてしまって、途中からエスケープしていました。

レースの途中でライアンと一緒に走る機会があったのですが、半周くらい後ろについて走ることができました。でもロックンロールリバーがすごく速くて、そこで離されてしまいましたけど。全体的にお尻を後ろに出して頭を低くするフォームで、リア荷重で走っているように見えたので、マネしてみたらフロントが弾かれにくくて楽に走ることができました」

Off1:10耐のあと、すごくやる気になっていると聞いているのですが?

「いま中学3年生で受験生なんですけど、10耐が本当に楽しかったので、残りの糸魚川とAAGPもぜひ出たいと思っています。鈴蘭でFUN総合7位までいけたので、目標としてはFUN総合で5位以内を目指したいです。

ヨシカズが縄跳びトレーニングで成績が伸びたという話をしていたので、取り入れてみようかな、と考えています。来年はFUNの上の方のクラスに上がって総合優勝も狙えるようになりたいです。そして将来的にはヨシカズや誉くんにも勝てるライダーになりたいです」

佐々木一晃は今回のチームでも最年少の14歳。ここ1年でメキメキと力をつけてきており、ほうのきではFUN-Cクラスで優勝を飾っている。これまではほとんど練習もせず、父親に言われるがままレースに参加してきた佐々木が、この10耐のあとは自分から「練習がしたい。レースに出たい」と言うようになったという。この10耐で一番大きく成長したのは佐々木なのかもしれない。

「また来年もこのチームで勝てたら嬉しい」

14歳から23歳、平均年齢18.5歳のこのチームは本当に最高のチームだった。お互いがお互いを支えあい、信頼し、心からレースを楽しんでいた。そして10時間の長丁場、このチームを支え続けたのは他ならぬ彼らの父親たちだ。

保坂一洋(修一の父)と佐々木亨(一晃の父)は10時間ほぼぶっ通しで炎天下のピットに居続け、自分の息子以外でもチームのライダーが周回してくるたびにサインボードをだし、声援を送り続けた。しかもレースが終わった後は息子が助手席で寝息を立てる中、一人で関東まで車を走らせたのだ。

保坂のコメントにもあったように、10代のライダーのレース活動には親の理解と協力が不可欠だ。ライダー本人はもちろんだが、こんな親たちにこそ、この記事を捧げたい。