今年、Hondaが発表したCRFシリーズの中でも特に注目を集めているのがモトクロスレーサーCRF450Rを元に作られたトレールマシンCRF450Lです。発表されているスペックをみると最高出力が18kW(24PS)/7,500rpm、そして最大トルクが32N・m/3,500rpmと、トルク重視でパワーは出過ぎず、扱いやすいマシンのように感じます。また、それを支える足回りやフレームはほぼCRF450Rまんまの高性能なため、まさに「レーサーの車体にトレールのエンジンを積んだ」マシン。

9月23日、三重県いなべモータースポーツランドで開催されたホンダオフロードミーティング内で試乗していたサンデーライダーの皆さんに生の感想を聞かせていただきました!

実践的なコースで再試乗したい!

井口慎也さん

「今はもう手放してしまいましたが、以前セローに乗っていたことがあって、CRF450Lの使い方としてはアタック的な林道ツーリングをイメージしていました。ちょっと回っただけなので、戦闘力という部分については、正直、ほとんど分かりませんでした。JNCCがレース会場でやっているような、実戦的なコースを走れる試乗会があれば是非参加したいです。

逆に分かったことは、とりあえず静か! 公道を走らせるなら、これくらい静かなのは良いなと。あと、サスはイメージしていたより柔らかかったので、いろんな使い方ができそうですね」

普段、最新のエンデューロレーサーに乗っている井口さんは、インプレッションがそちら側からの目線になるのは当然でしょう。今回の試乗コースがフラット路面の小さいオーバルで、ポテンシャルがどうなのかを感じるところまで使い切れなかったのが残念そうでした。

走り出したら驚くほど軽い!

山田壮平さん

「購入したとしたら、トランポに載せて目的地まで行って、そこで降ろして林道ツーリングを楽しむといった感じでしょうか。スタンドを払って押した時にはちょっと重いかなと思ったのですが、走り出したらとても軽くて驚きました。ひょっとしたらWR250Rより軽いかも知れません。

エンジンはとても軽く回ります。レーサーに近いフィーリングだからか、1速の極低速は若干ギクシャクする感じはありますけど、アクセルワークを丁寧にすれば問題ないです。2速に入れてからはずっとスムーズに走れました。

車検があるから、ちょっと、購入はどうしようかなと思うけど、この乗り味で250だったら(車検がなければ)、すぐ買っていたかも知れないですね。なので、もう少し実戦的な走りを試してみたいです」

WR250Rからの乗り換えの可能性を探るべく、試乗会に参加していた山田さん。もちろん450ccだからこそのメリットもありますが、やはり市販車である以上、車検の有無は大きな購入の指標になりますね。

体感のパワーはカタログ数値以上⁉︎

椙浦俊和さん

「おもな使い道としては、普段は通勤の足として。それと、自宅から1時間ほどのところに林道があるので、休日にはアタックツーリングなども楽しみたいと思っています。

カタログに出ているエンジン出力は24psですけど、実際にはその数値以上の力強さを感じました。以前、CRF250Rに乗っていたことがありますが、レーサーに保安部品を付けただけという触れ込みがホントっぽい。思っていたよりパワフルですね。

敢えて難点を挙げるとしたら、カタログ数値でXRとほぼ同じだった車重が、車格が大きいせいかCRF450Lは少し重い気がしました。それと、コーナーで減速した時など、極低速でクラッチを切るとエンストしやすいようです。回転が落ち込まないように、少しアクセルを煽らないといけないのかも知れませんね。購入の可能性は80%くらいでしょうか。XR250を手放すことを条件に検討しています。XRは絶版車だし、あれはあれで良いバイクなので、どちらを採るべきか悩んでいます」

普段はXR250とモトクロスレーサーを2台所有しているという椙浦さんですが、そのほかは期待していた以上に良かったと評価。購入の暁には、実用性のインプレッションも聞かせていただきたいですね。

今までになかった新しい選択肢!

山川敦司さん

「走り出しや半クラを使って回る極低速のコーナリングで何度かエンストしました。例えば、レースの周回チェック前後にあるようなシケインでは、クラッチ操作に気をつけてアクセルは若干開け気味が良いのかも。KTMやハスクバーナに比べると、少しシビアな感じがしました。ただ、ずっと1速で走っていたんですが、極低速さえ注意すれば基本的なフィーリングはマイルドだし、1速でカバーできるスピードレンジが広いのはラクですね。

車体については、450とは思えない軽さです。サイズ感も250くらい、いや、250より小さいくらいですね。感覚的にはKTMの200とか、その辺りのモデルに近いけれど、ポジションはそれよりコンパクトなので、見た目の印象と違い、乗ったときのしっくり感が強いんです。また、リアサスが適度に沈み込むので、足着きはレーサーより格段に良くて、それでいてフレームやブレーキはしっかりしているから安心感もあります。

上がどこまで伸びるのか試してみたいと思いますが、極低速の乗り方(エンストしないよう)に慣れればかなり乗りやすいのでは。リアの両サイドとトップにパニアケースを装着して、長めの旅をしたら楽しそうですね。

少し心配なのは、この系統のエンジンの特性というか、バルブまわりの耐久性がレーサーと比べて良くなっているか。あとは、カタログ数値24psというパフォーマンスが、市街地や林道を走った時にどうなのかといった部分も気になります。このバイクはセッティングの範囲が広いし、いざとなればCRF450R用のパーツで更なる進化も見込めるので、判断は難しそう。個人的には、車体の耐久性が一般の市販車と同レベルと仮定して、値段が100万円ちょいだったら即買いですね!」

競技専用モデルのCRF450RやCRF450RXはもちろん、名称が似通ったCRF250Lとも別物なのがCRF450L。山川さんが漏らした、「このバイクは、今までになかった新しい選択肢かも知れませんね」とのコメントは、まさにその通りなのでしょう。

昨日CRF450L納車しました!

平野克博さん

「じつは予約開始直後にCRF450Lの購入手続きを済ませていて、昨日届きました。今回の試乗会を知った時はまだ納車日が確定しておらず、色んな話を聞きたかったし、せっかくなので乗らせてもらおうと。

使い方は、モトクロスをメインで考えています。モトクロスは以前やっていたんですが、レーサーは手放して最近までアフリカツインに乗っていました。でも、林道をあちこち走ってみたけれど良いルートがなくて、思い切り楽しむならやはりモトクロスコースというのが結論です。

レーサーではなくCRF450Lを選んだのは、林道に限らずツーリングには行きたいし、もともと趣味が多いので、レーサーと街乗りの2台態勢ではきっとどちらかを乗らなくなってしまう。だから、モトクロスとツーリングの両方を楽しめるバイクが欲しかったんです。今までにも、戦闘力が高いとされるモデルはありましたが、どれもトレール車の域を脱せず、ジャンプすれば簡単にフルボトムでしょう。やはり、サスが良くないと面白くないですよね。

試乗せずに購入することへの不安はゼロではなかったけれど、一応モトクロス経験者なので、スペックである程度の判断はつくし、ネットや雑誌でも色々調べてレーサーに近いレベルだと分かりました。実際、こんなバイクが出るとは思ってなかったので、即予約しました。

今回の試乗コースですべては分かりませんが、やはり足まわりはしっかりしていますね。押しただけでは硬さも感じましたが、走り出すと柔らかくて路面の変化をしっかり捉えてくれます。セッティング次第でモトクロス仕様に振れるとか、CRF450R用のパーツを使えば更に良くなるといった情報もあるので、色々試してみるつもりです。自走で近くのコースに行ったりトランポに載せて遠征したり、使い方もこれからもっと考えたいです」

平野さんの購入に至る経緯や背景が理解できたのは、話を掘り下げて聞いた後のこと。ツーリングを楽しめる市販車であり、その戦闘力がモトクロス経験者を満足させるレベルという、従来にない2大要素を併せ持ったこのバイクの特殊性ゆえなのでしょう。