20年前「ムース」という言葉は浸透していなかった。ムースとは、チューブと空気の代わりにつめる発泡性の素材で、主にパンクをふせぐために重宝されるものだ。限られたラリーの世界で一部使われたりするのみ。2000年代になってオンタイムエンデューロがじわじわ一般化してくるにつれて、欧州にならいエンデューロタイヤ×ムースの組み合わせが増えていった。そして今現在は、ゆりかえしとしてトップライダーもチューブとムースを使い分けるような時代になっているが、この1〜2年でさらなるゲームチェンジがおこなわれようとしている。

なぜならムースの性能が飛躍的に上がっているからだ

「弾丸ママ」連載の最終回として、だいぶお待たせしてしまったが、今回は使用したムースについて。増田が使用したのは、ダンロップ製のムースである。

オフロード競技用ムース

日米欧のモトクロス/エンデューロトップライダー達が耐久性と操安性を実証

タイヤ/リム適合表

ムースサイズM.CODE適用タイヤサイズ適用リムサイズ
FM2113768580/100-21
90/100-21
90/90-21
21 X 1.60
FM19S137687100/90-19
110/80-19
19 X 1.85
FM19L137689110/90-1919 X 1.85
19 X 2.15
120/80-1919 X 2.15
FM18C137693110/100-18
120/90-18
140/80-18
ENDURO
19 X 1.85
19 X 2.15

みてのとおり、モトクロス・エンデューロに対応したサイズをダンロップではラインアップ。

ようやく10月の初旬に、日本へ戻ってきた増田のAXCRレース車。この状態を確認に、ホンダドリーム世田谷へ取材協力いただいた。右は、ドリーム世田谷で働いている川島雄一郎さん(元全日本モトクロスチャンピオン)、今回は川島さんがマシンのダメージを診てくれる。

早速だけど、ムースに冠して。
こちら2000kmを走ったムース、サイズ表記の刻印すら消えていなというから、まったく内部で摩擦はおこっていないと思われる。

ムースの場合、タイヤの中でムースが暴れてしまい、タイヤとの摩擦熱が生じる。この熱がたかくなりすぎると、発泡の空気が膨張してムースがパンク(粉々になる)したり、裂けたりする。また、ムースは熱を加えられることで徐々に痩せていってしまうのだが、この状態をよしとする人は多い。なぜならムースはダンロップで約90kpaの空気圧相当の固さであって、70くらいまで落としたい、あるいはもっと柔らかいものをほしがるライダーが多いからだ。

増田は、このムースについて「3日くらいでなじんできて痩せたおかげで、さらに乗りやすくなった」とインプレしている。2000kmの走行テストとしては、まったく問題無く、いまがもっとも「乗りやすい」とされる時期だ。

特に100km/h以上の高速で走るとムースは傷みやすいが、ダンロップがリリースしている最新型のムースでは、みてのとおりそれにも耐えきれる耐久性がある。空気のクッション性にはかなわないものの、チューブ×空気の置換として、かなり高性能になってきたと言えるだろう。

川島さんは、しかし「車両はかなり傷みましたね」と苦笑。まず転倒によって折れてしまったウインカーと、外れてしまったスクリーン。

完全に鉄パッドと化した、リアブレーキのパッド。

マシンにはどんどんとダメージが加算されていくが、タイヤは2000kmでは充分まだ戦える耐久性を持っている。ぜひ、ラリー参戦の際には、この結果を参考にしていただきたい。

取材協力:ホンダドリーム世田谷

〒158-0083 東京都世田谷区奥沢6丁目3−2
電話: 03-5758-3633
http://www.dream-tokyo.co.jp/shop_setagaya/