近年、JNCCの下見にeMTB(電動アシストマウンテンバイク)を使用しているライダーが増えてきているのをご存知だろうか? 第7戦エコーバレーではFANTICの輸入代理店であるMOTORISTSに協力いただき、Off1.jp編集部が下見に同行。そのメリットを体感してみた

全日本クロスカントリー選手権JNCCをはじめ、エンデューロレースは自然の地形を生かしたコース設定が大きな特徴となっており、夏季休業期間中のスキーゲレンデや山など高低差のあるレイアウトが多い。そのため、レース前日に徒歩で下見を行うと何時間もかかってしまい、翌日のレースに疲労を引きずってしまうこともある。

そんな声を受けてJNCCが許可を出したのが、eMTBを使った下見だ。

エコーバレースキー場はJNCC初開催のステージということもあり、特に念入りな下見を行う必要があった。自らFUN-GPに出場するMOTORISTS代表の野口英康氏、MC-Japan代表の末石健次郎氏に加えて、COMP-AA2クラスに出場する加藤浩介選手ら、他にも既にFANTICのeMTBを活用している2名、総勢6名で構成されるFANTIC下見ツアーに同行させてもらった。

徒歩で下見を行う参加者たちを横目にeMTBはスイスイ登る。徒歩のツアーは一緒にスタートしても脚力のない人が次第に遅れ始め、帰ってくる時にはバラバラ、などということがよくあるのだが、eMTBではそれもない。体力のある若者から年配のライダー、女性まで同じペースで下見を行うことができる。

学生時代は陸上部で長距離の選手だったという加藤選手はさすがにハイペース。一度登ったゲレンデを一度下って、もう一度別ラインから登ってみたりと、トップカテゴリーで闘うCOMPライダーらしい、またeMTBならではの入念な下見を行なっていた。

ここはまだゲレンデの中腹にも満たない。徒歩での下見なら、ショートカットしてしまうような曲がりくねったコースも、eMTBならくまなく見ることができる。

実は現在MOTORISTSが取り扱うFANTIC eMTBの多くは、日本での公道走行を意識しない、欧州仕様(ということは世界のスタンダードでもある)での提供が中心となっている。これは何故かというと日本の道路交通法で定められているアシスト速度制限の問題だ。日本の公道を走ることができるeMTBは時速10kmまでは漕ぐ力1に対して電動アシストの上限は2であり、時速10kmを超えると徐々にアシスト力が下がっていき、時速24kmでアシストがゼロになるというもの。

それに対してFANTICはイタリアのメーカーのため、欧州の規制に沿って作られており、時速25kmまで入力に対して4倍のアシストが働き、そこでゼロになるように設定されている。

「JNCCに出場するライダーの多くが公道走行用のトレールバイクではなく、YZのようなレーシングモデルをチョイスするのと同様、eMTBもステージにあったチョイスが必要」そう考えたMOTORISTSでは、レースの下見で使っていくような用途に向けては欧州仕様のFANTIC製eMTBを提供し、用途に合わせた楽しみを提供しているというわけだ。

エコーバレー大会で多くのライダーが辛酸を舐めた難セクション「カオス」の中もeMTBで入っていける。実際にタイヤを転がすことで超えやすいポイントを探したり、草に隠れて見逃しがちな石や窪みも見つけることができる。

軽量なeMTBは担いで歩くこともできるため、どんなところにも持ち込める。

eMTBでガレ場を下ってみると、実際にバイクに乗って走る時のイメージが掴みやすく、バイクで走りやすいラインが鮮明に見えてくる。足を着くのに適した岩や、動いてしまう岩を特定できるため、レースでのリスクも軽減する。

FANTICのeMTBは4段階のアシストモードがあり、斜度によってアシストの強さを切り替えることができるのだが、実はもう一つ「押しモード」がある。左手スイッチボックスにあるボタンを押すとリアタイヤが回転し、JNCCでコースの至る所に出現するこのくらい急な坂道もグイグイ登っていくことができる。編集部・伊井も使ってみたが、意外にも全く空転せず、しっかりトラクションを感じながら登ることができて感動モノだった。

僕は今年43歳になったワケだが、こんな仕事をしているおかげでスポーツをしない一般的な43歳よりは少しばかし体力があると自負している。そんな僕でも歩いてゲレンデの下見をすると夜には足が攣りそうになり、翌日の取材もバイクなしでは無理なレベルで疲れてしまう。

しかしこの日は確かに少しは疲れはしたものの、実にちょうどいい心地よい疲れ方で、翌日にも疲れを残さなかった。また、実際に購入して使用しているトップライダーたちは独自のメリットを感じているようだ。

加藤浩介選手
「僕はもう3年くらいeMTBを使って下見をしています。最初はとにかく下見を楽にしたいという目的だったのですが、どうせならバイクに近い自転車で下見をしたいと考え、MC-Japanの末石さんに相談してeMTBを使わせてもらいました。最初はレンタルして乗っていたのですが、あまりにも良いのでどうせ毎回借りるのならと、思い切って購入しました。
確かに価格はそれなりにしますが、せっかく高いお金を出してJNCCにフル参戦しているのだから、必要経費だと思っています。実際ちょっと無理して購入しましたが、費用対効果は確実にあったと自信を持って言えますね。僕は自分で購入したeMTBを、仲の良い友人たちに貸し出しているのですが、みんなすごく気に入ってくれます。
歩いて下見をするのに対して疲れが少ないのは言うまでもありませんが、eMTBを使うことで、よりリアルな下見を行うことができるのも大きなメリットです。実際にタイヤを転がしてコースを走ることができるので、路面の滑りやすさも感じることができるんです。
例えば今回もゲレンデの登りで一箇所、eMTBのフルアシストで下見をしている時にタイヤが滑るラインがあったんです。僕の体重が80kgくらいなんですけど、これだけ柔らかいタイヤでバイクよりもパワーがないのに漕いだだけで滑るということは、バイクだと確実に滑るんです。特に今回はFIMタイヤですから。なのでレースではその滑るラインは避けて走るようにしていました。
また、歩いていては絶対にわからないゲレンデの細かい凹凸とかも感じることができ、丸太もeMTBで腹を擦らずに越えることができればバイクでも安心して走ることができるんです。
ディレイラーはどうしても繊細で、ガレ場とかでぶつけてしまうと曲がったり壊れたりしちゃうことがあります。だけどMOTORISTSさんがパーツを十分に確保してくれていますので、その点も安心ですね。モーターの中に入っているゴム製のベルトも消耗品で3年に一度くらい交換しないといけないのですが、そういうマニアックな部品もしっかり在庫してくれていて、すぐに交換することができました。
あと僕は日々のトレーニングにもeMTBを使っています。欧州仕様なのでアシストを使うと日本の公道では走れないのですが、アシストオフの状態なら普通のMTBとして使うことができます。毎日朝晩合わせて120kmくらい走っていますので、十分に元は取れているんじゃないかな」

加藤は今年の第4戦高井富士からレースでもFANTICのエンデューロレーサーを乗り始めた。MOTORISTSではJNCCにFANTICブースを出展し、万全のレースサポート体制を築いている。

さらに今回のツアーには参加できなかったが、加藤と同じCOMP-AA2クラスに出場する大橋銀河選手もFANTICのeMTBを購入し、下見に使用している。

大橋銀河選手
「僕も今年からFANTICのeMTBを購入し、下見に使用しています。僕は土曜日に仕事が入ることが多くて、いつも日曜日の早朝に来て下見をしていたんです。ですが、歩いて下見をしていると時間がかかりすぎてFUN-GPのレースが始まってしまい、十分な下見ができませんでした。ところがeMTBを購入してからは朝の短い時間でもしっかり全周見ることができますし、難しいセクションをじっくり見る余裕もあるんです。
僕は腰と膝があまり良くないので、日曜日の朝に歩いて下見をすると午後のレースまでに回復しないんです。それがeMTBだと疲れが残らないですし、斜面を歩いて登っているとバイクに乗った時のイメージが湧きにくいのですが、eMTBだと斜度がすごくリアルにわかるので、リスク回避にも繋がっていると感じています」

野口英康氏
「たくさんの自転車メーカーがeMTBを発売していますが、僕たちはオートバイも売っている会社なので、FANTICのeMTBを購入してくれたライダーさんに関しては、例え他メーカーさんのバイクに乗っていてもレースサポートを提供しています。これが普通の自転車メーカーさんと僕らの違うところです。
純正パーツは自社でしっかり在庫を持つようにしていますし、社外パーツでも例えばSramはダートフリークさんが代理店ですので、自転車と共通の部品とかはダートフリークさんでも購入できます。そういう意味でも他の自転車メーカーに比べて安心していただけると思います。
円安の影響もあって日本の輸入車はeMTBを含め高額に感じられがちですが、MOTORISTSではむしろFANTICの欧州での実勢より買いやすい価格に設定し、日本でこの魅力に気づいていただける方を増やしたいと願っています。似た仕様、あるいはFANTICに近いモーター性能の他社製品と比較していただくと、FANTICのeMTBの価格が実は安価であることにお気づきいただけるはずです。
実はヨーロッパではもうeMTBが一般的になっていて、トレイルに行くと半分以上がeMTBで、電動アシストのない普通のMTBは『マッスルバイク』と呼ばれていたりもするんです。もちろんオートバイレースの下見にもたくさん使われていますし、eMTBのレースも色々とあって、FANTICは世界選手権でもヨーロッパ選手権でも優勝しているんですよ」

野口氏は自らもメカニックであり、JNCCのレースサポートについても経験豊富だ。さらに今回、eMTBを一台お借りして実際に下見に参加させてもらった取材班が感じたのは、このeMTBを使った下見自体が、一つのアクティビティとして成立している、ということだった。

正直に言うと僕はJNCCのレース前日である土曜日には試乗会やキッズレース、キャブセッティングなどはあるものの、もう一つ何か楽しみがあると良いな、と思っていた。そこでこのeMTBによる下見である。登りはいくら電動アシストがあるとはいえ、それなりに良い運動になる。とはいえ翌日に疲れを残すほどではないし、オフロードバイクで競技をやっているようなスポーツ好きの人間にとっては実に適度なものだ。そして下りはもう爽快の一言。爽やかに風を感じながらゲレンデを駆け下りていると、高校生の頃に自転車で片道10km山道を漕いで通学していた時を思い出し、やっぱり自転車もいいな、と懐かしい気持ちになることができた。たとえばレジャーとして訪れたゲレンデでeMTBを体験できるツアーがあれば、お金を払って参加する人がいる。それと同じように、このeMTBでJNCCの下見を行うという行為自体が、新しいレジャーであり、目的にもなり得るのではないかと感じた。

様々なラインナップから好みのモデルを探そう

FANTICではSPORT&RACEカテゴリーをさらにTRAIL、ALL MOUNTAIN、DOWN HILL、HARD TAILの4つに分類。JNCCライダーや、その他のカテゴリーのライダーが下見を中心に考えるなら、今回試乗したTRAILモデルでも十分。国産eMTBを下回る価格設定にもかかわらず、登り坂さえ楽しめる力強さを味わえる。クロスカントリー・マウンテンバイクレースでは、FANTIC+MOTORISTSがサポートする女性ライダーが並み居るファクトリーライダーを軽々と抜き去って優勝したほど実績あるバイクでもある。同じく買いやすい価格のHARD TAILモデルからは、太いタイヤが魅力的なFAT SPORTSもチョイスしたい。下見はもちろんだが、サンド/ビーチやスノーライディングといった、他では味わえないファンライドの可能性を広げてくれるモデルであるからだ。

FANTIC
XTF1.5(TRAIL)
¥627,000(税込)

モーターbrose S-ALU 36V, 最大出力: 250W, 最大トルク: 90Nm
バッテリーリチウムイオン電池, 36V, 630Wh
ディスプレイbrose オールラウンド4 多機能ディスプレイ&プッシュアシスト式選択ユニット
フレームアルミニウム, サイズ: S – M – L
フォークRockShox RECON Silver RL e-bike – 29″ 150mm
ショックRockShox Deluxe Select T205x57,5 Air
フロントスプロケットSram 34t Steel Eagle
クランクMiranda Delta Isis – 165mm
リアディレイラーSram SX Eagle 12V
シフトレバーSram SX E-click
カセットSram SX Eagle 12V, 11-50
チェーンSram SX Eagle 12V
フロントブレーキSram LEVEL 2ピストン ディスクブレーキ
リアブレーキSram LEVEL 2ピストン ディスクブレーキ
フロントディスクSram CenterLine, 200mm
リアディスクSram CenterLine, 180mm
フロントタイヤIRC TANKEN 29″x 2.6
リアタイヤIRC TANKEN 29″x 2.6
ホイールRodi BlackJack TRIP30
ハンドルバーGBC-MHB-A6074BT-780MM-RISE-20mm
ステムGBC-MAS-D6293-50MM±8°-ø31,8
シートポストPromax teles. SP -2038 Ø 30.9, S 80mm (SWITCH)/ M-L 100mm
サドルSelle Italia MODEL-X Comfort Superflow 145

630Whのバッテリーはフル充電に要する時間は約5時間。アシストレベルや走り方にもよるが最大走行距離はおよそ120kmとなっている。

Brose製モーターを搭載。日本のアシスト規制に縛られない欧州製で、力強いアシストを得ることができる。

リアにもサスペンションを備えている「フルサスモデル」と呼ばれるeMTB。荒れた路面での走行はもちろん、ゲレンデの登りでもトラクションがかけやすく、安定して登ることができる。

ホイールサイズは走破性重視のトレールモデルでは前後とも29インチ。とはいえタイヤハイトが小さいので結果的にフルサイズのオフロードバイクと同じくらいのサイズ感となる。タイヤ幅は2.6インチで一昔前ならセミファットと呼べるサイズだ。

ディレイラーはSRAM製の12速、もちろんフロントシングルの1×12(11-50)だ。斜面や路面の変化に合わせて積極的に変速したい。上り坂でアシストモードを強めにする場合は、コントロール性を高めるため、及びチェーンにかかる負荷を小さくするために軽めのギヤで高いケイデンス(ペダルの回転数)を維持するのがコツだ。

ハンドルバーはオフロードバイクのファットバーよりさらに太いφ31.8mm(1.25インチ)。必要十分な剛性があり、下り坂など少しスピードを出しても不安は感じなかった。(写真はXFT 1.5 SPORT)

フロントサスペンションは150mmのストローク量があり、セッティング変更も可能。

左手スイッチボックスにはディスプレイが装備され、速度やアシスト強度、バッテリー残量などの各種情報を表示する。ディスプレイ下のボタンでアシスト強度の変更が可能だ。

12速(1×12)のため、シフターは右手側のみ。

FANTIC
FAT SPORT
¥583,000(税込)

モーターBrose T-ALU 36V, 最大出力: 250W, 最大トルク: 70Nm
バッテリーリチウムイオン電池, 36V, 630Wh
ディスプレイbrose オールラウンド4 多機能ディスプレイ&プッシュアシスト式選択ユニット
フレームアルミニウム, サイズ: S – M – L
フォークRockShox Bluto, 120mmトラベル
グループセットSRAM SX E-click Eagle12v
クランクMiranda Delta Isis 165mm FAT-2 Asym
カセットSram SX Eagle 12V 11-50
チェーンSram SX Eagle 12V
フロントブレーキSram Level, 2ピストン 200mmディスクブレーキ
リアブレーキSram Level, 2ピストン 180mmディスクブレーキ
タイヤSchwalbe JUMBO-JIM, 26x 4
ホイールGPM Fat
フロントハブGpM 150 mm thru axle 15mm
リアアブGPM 197 mm thru axle 12mm
ハンドルバーFSA Ø31,8 L.760m Rise15
ステムFSA Logo Ø31,8 L.60mm
シートポストFSA 400mm
サドルSelleItalia X-Land Flow

アシストモーターの性能はXTF1.5と同じだが、大きな違いはタイヤ幅4インチのファットタイヤを装備していること。タイヤがある程度の衝撃を吸収してくれるためリアサスは省略されている(ハードテイル)。低圧にしたファットタイヤでの走行は、細かなギャップにハンドルを取られず、また砂や雪、生い茂る草に埋まることなく戦車のような走破性を見せる。一般的なFAT BIKEは走行抵抗の大きさや車重のため急な登りは苦手だが、電動アシストによってそのネガな部分を打ち消し、通常のeMTBと同じペースで走れてしまう(ただしリアサスが無いため、ダウンヒル性能では及ばない)。

タイヤ径は前後26インチ、タイヤ幅4インチのファットタイヤを装備しており、XTF1.5に比べて速度は乗りにくいが少々のギャップや轍も吸収して突き進む。サンド路面やマディ路面での走破性も良い。

リムには穴開け加工が施され、軽量化されている。

なお、FANTICのeBIKEのうちTRAILモデルやシティランナバウトモデルの一部には、来シーズンからヤマハ製モーターを搭載したタイプが用意される。公道中心の用途にはこうしたモデルで応えつつ、ファンライドにはeMTBとしては最もトルクフルである現在のBROSE製モーターをチューニングしたFANTICらしい走りを提供し、多くのライダーの要望に様々な形での答えを用意していく計画だ。土曜日の下見を楽しさに変えていくFANTICのeMTBをぜひ体感し、サポートライダーの一人に加わってみてはどうだろうか。会場ではeMTBディーラーでもあるMC-Japanや輸入元のMOTORISTSが万全の態勢でサポートしているから気軽に相談してみてほしい。

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