8月23日(土)、アメリカのメリーランド州にあるバッズクリークモトクロスパークで、2025 AMAプロモトクロス選手権最終戦が開催されました。

注目ポイント
・ヘイデン・ディーガン、Moto1で15位以内に入ればチャンピオン決定
・2ヒートとも赤旗リスタート、ディーガンと下田にペナルティ付与も
・下田の序盤の速さに注目
・SMXに向けて知っておきたいポイントランキング
・WMX最終戦、本田七海が7-6-11で総合7位

ついに迎えた最終戦。下田丈が出場する250クラスは今大会でチャンピオンが決定する大事な1戦となりました。第10戦を終えた時点で、ランキングトップのヘイデン・ディーガンと2位の下田の差は43ポイント。Moto1でディーガンが15位以内に入ればその時点でチャンピオン獲得となります。

タイムドクオリファイでは、セス・ハマカーが1分54秒901で1位通過、2位に1分55秒264でドリュー・アダムスがついており、下田は1分55秒461で5位、ディーガンは1分55秒612で7位という僅差で決勝を迎えました。

2ヒートとも赤旗で再スタート、下田は動じず3-2で総合2位

Moto1はトム・ビアルがホールショットを獲得。2番手にセス・ハマカーがつき、下田はコーナーで抜け出し3番手から追い上げます。しかし1周目に赤旗が振られ、レースは一時中断。再スタートとなりました。

再びホールショットを獲ったのはビアル。続いてコール・デイビス、アダムス、ディーガンと続き、下田は7番手からレースを進めます。1周目で5番手に順位を上げると、転倒で4番手に順位を下げたビアルを捉え、レース開始6分が過ぎる頃にパス。さらにその勢いに乗りアダムスをかわして3番手に浮上します。一方、レース開始10分が過ぎた頃、ディーガンがデイビスに迫りトップ争いを展開。下田はその後方から徐々に距離を詰めていきます。デイビスが粘りの走りを見せますが、ディーガンがトップに浮上。その後、下田もデイビスをかわし、ディーガンを約3秒差で追いかけます。しかしその差は縮まらず、1位ディーガン、2位下田、3位デイビスという順位でチェッカーを受けました。

なお、レース後、ディーガンと下田の2人は黄旗が振られている中ジャンプをしたこと、また他のライダーをパスしたとして1順位降格かつ5ポイントマイナスのペナルティが課されました。これによりMoto1の順位は1位デイビス、2位ディーガン、3位下田となり、この時点でディーガンと下田のポイント差は25以上であったため、ディーガンのチャンピオンが決定。プロモトクロス選手権においてキャリア2度目の栄冠を手にしました。

Moto2では下田は好スタートを決め3番手につけると、前を走るディーガンとネイト・スラッシャーに迫ります。序盤でスラッシャーをパスし、ディーガンとの距離も縮めようというところで、Moto1に続き2度目の赤旗が振られ、再スタートが行われました。中断した時の順位でスタートし、ディーガンと下田の差は1.7秒ほどでしたが、徐々にその差は開き、レース中盤にはディーガンが約11秒のアドバンテージを築きます。下田は後半での粘り強さと安定感を発揮しますが、そのままの順位でフィニッシュ。ディーガンが優勝を飾り、2-1で総合優勝を獲得。下田は3-2で総合2位となり、ランキング2位でシーズンを終えました。

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450クラスは前大会でジェット・ローレンスがチャンピオンを獲得。今回はランキング2位以降の行方に注目が集まりました。

Moto1、ジェット・ローレンスは好スタートを決めると、同じくスタートで前に出たジャスティン・クーパーと激しい攻防を繰り広げます。ジャスティンがミスをした隙にジェットはリードを拡大、そのまま1位でゴールを果たしました。一方、スタートで出遅れたハンター・ローレンスが追い上げ、2番手を走るジャスティンに迫ります。しかし順位は変わらずゴール。1位ジェット、2位ジャスティン、3位ハンターとなりました。

Moto2ではハンターが完璧なスタートでホールショットを奪い、レースをリード。2番手にジェットがつき追いかけますが、ハンターがその差を拡大していきます。優勝をかけた兄弟対決に注目が集まりましたが、ハンターが最後までトップを死守しフィニッシュ。ハンターが3-1で総合2位、ジェットが1-2で総合優勝を果たしました。なお、ローレンス兄弟は今シーズン約半数のレースでワンツーフィニッシュを達成しています。

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シーズンを通して見せた成長、課題を強みに変えてSMXへ挑む

下田は今回スタートで出遅れたものの、序盤からハイペースでレースを進めポジションを上げていく姿に注目が集まりました。ベストラップタイムを見ると、Moto1は7周目、Moto2は1周目で最速タイムを記録しています。

また、今季のプロモトクロス選手権を振り返ると、シーズン前半は下田の安定性とレース後半で追い上げる粘り強さが強みとして光っていた一方、スタートとオープニングラップから序盤にかけてのペースが課題として見られていました。しかし、シーズン後半ではスタートで前に出る安定感と、序盤から後方を引き離すレース展開が加わり、自身の課題を強みに繋げていることがうかがえます。ランキングは2位で終えましたが、シーズンを通した著しい成長は、9月6日から開幕するスーパーモトクロス選手権(SMX)での結果に確実につながるでしょう。

SMXに向けて知っておきたいポイントランキング

スーパーモトクロス選手権(SMX)に出場できる選手は、スーパークロスとプロモトクロスシリーズのポイントを合算したランキング上位20名のみです。SMXのコースはスーパークロスとモトクロスの特徴を合わせたレイアウトのため、全体のポイントランキングをみることでその勢力図がわかります。

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250クラスはヘイデン・ディーガンが723ポイントでトップ。下田丈が617ポイントで2位。さらに3位には497ポイントでガレット・マーチバンクス、4位には468ポイントでトム・ビアルがランクインしています。

2024年を振り返ると、前年に続きディーガンがチャンピオンを獲得。全3戦6ヒートが行われた中、5ヒートで勝利を収め、その強さを示しました。一方下田は第1戦で3-5の総合4位、第2戦は2-3で総合3位、第3戦で4-5 の総合4位になり、ランキング4位で終えています。今年も依然としてディーガンの存在感が大きいですが、下田も追い上げやラップタイムの安定性、スピード、スタートなど着実に実力を伸ばしてきており、チャンピオン候補の1人と見られています。しかし、全体ランキング3位以降を占めるマーチバンクスやビアル、ハマカー、リーバイ・キッチンなども調子を上げてきており、油断はできない状況です。

一方、450クラスはジャスティン・クーパーが670ポイントでランキングトップに立ち、怪我によってスーパークロス選手権を一時欠場していたジェットが580ポイントで2位につけています。さらにマルコム・スチュワートが517ポイントで3位、クーパー・ウェブとハンターが同じ516ポイントで4・5位につけており、実力が拮抗しています。

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なお、SMXは全3戦の総合ポイント数でチャンピオンが決まります。ポイントスケールが特殊で、第2戦が2倍、第3戦で3倍と大会を重ねるごとに獲得ポイント数が増えていくため、最終戦で大逆転劇が起きるという可能性も十分にありえます。SMXのシリーズチャンピオンは誰の手に渡るのか、最後まで見逃せません。

本田七海が7-6-11で総合7位入賞。AMAプロモトクロス選手権併催「Women’s Motocross Championship」

AMAプロモトクロス選手権では第9戦から最終戦までの3戦にわたってWomen’s Motocross Championship(WMX)が併催されています。今回はその3戦目、WMX最終戦バッズクリーク大会が行われ、全日本モトクロス選手権レディースクラス2019年チャンピオンの本田七海が出場しました。

今回は3ヒート制のフォーマットで、Moto1とMoto2が8月22日の金曜日、Moto3がAMAプロモトクロス選手権当日の8月23日に行われました。

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Moto1、本田は好スタートを決めて1周目で5番手につけます。上位に食い込む勢いを見せますが2周目に7位に後退。一時8番手にポジションを下げますが、レース中盤で順位を上げ7位でチェッカーを受けます。続くMoto2でも1コーナーを3・4番手あたりで通過する好スタートを決めます。その後6番手につき、一時タイムを10秒ほど落とす周回もありましたが、ポジションをキープして6位フィニッシュ。スタートの安定感は最終ヒートもブレることなく発揮され、5番手あたりにつけますが、ミスにより1周目を21位で通過。追い上げを強いられる中、周回を重ねるごとに順位を上げ、ラスト2周で11位に浮上。そこでタイムアップとなりました。結果、7-6-11で総合7位を獲得。わずか3戦の出場ながらシリーズランキング10位となっています。

なお、総合優勝は2-1-1でラクラン・ララ・ターナー。転倒があったものの1位まで追い上げる速さで他を圧倒し、見事2年連続のチャンピオンに輝きました。総合2位にはチャーリー・キャノン、3位にはミカイラ・ニールソンが入賞しました。

AMAプロモトクロス選手権シリーズは今回で閉幕しましたが、2週間後の9月6日(土)にはスーパーモトクロス選手権(SMX)が開幕します。第1戦目はアメリカ・ノースカロライナ州にあるシャーロット・モーター・スピードウェイで行われます。成長を遂げた下田はSMXの舞台でチャンピオンを獲得できるのか、引き続き注目です。