日本(成田)34℃、ウランバートル5℃から始まった大大大冒険!!
9月6日。真夏の暑さが続く成田空港の気温は34℃だった。これから始まるのは、モンゴルの大草原をオフロードバイクで1000kmを駆け抜ける7日間の旅、である。
かつて、モンゴルを走った経験のある者もいれば、初めての人もいる。待ち合わせの成田空港第2ターミナルのカウンター前に集結したメンバーは計6名。「初めまして!」と、顔を合わせた瞬間から、もう既に「モンゴルを共に走る親愛なる仲間」になった。
成田から5時間半のフライトを経て、モンゴルの表玄関となる「チンギスハーン新国際空港」(2021年完成)に降り立つ。出迎えてくれたのは “5℃” の冷たい空気。成田との気温差はなんと30℃近く。現地に着いたその瞬間から、今回のツーリングの性格はもしや自然との格闘か? と予感させるものだった。空港近くの宿にチェックインした後、誰もが早速、厚手のウエアや防寒具を再確認。メリノウールからダウンまで、重ね着の枚数を数える仲間たちの姿に、明日からの走りへの緊張感と期待感が何だかとても高まってしまうのでした。
翌7日、いよいよ出発の朝である。肌寒い冷たい空気の草原に走り出すと、否応なしに冷気が頬を刺す。アンダーウエアーに1枚のフリースないし薄手のダウンパーカーをライディングジャケットに重ね合わせた装備でも、風を切れば容赦なく体温は奪われていくのだが、次第にそんな寒さも忘れるほどの素晴らしい感動の風景が前方に広がって見えて来た。
目の前にあるのは、ただひたすらに続く大地。色鮮やかな緑と褐色(紫色にも見える)が入り混じる草原が地平線まで広がって、その先には白い雲の浮かぶ青空が大きく覆いかぶさっている。
草原にはこれといった道らしい路はなく、微かな轍が暫く続いて、消えたり交差しながらまた続いたり……とそんな状態の路面状況なのだ。
正に「地球を走る!」と言う形容詞がビッタシで、ただそこに有るのは地上の“大地”と上空の“青空”と言う感じなのである。そんな大空間の中に響くものは我々のバイクの小気味よいエンジン音。それ以外は、進む前方に向かって切り裂く“風”の音と、草の甘い匂いだけがこの旅を彩る……。
初日の走行距離は約170km。幾つかの丘を越え、川を渡り、時には小石混じりの荒れた路面にハンドルを取られながら、ただただ広大な草原に圧倒されつつ、行く手の息を呑む様な素晴らしい景色に感動しっぱなしのモンゴル初日のオフロード体験だった。
特に印象に残るのは先述の草原を走っている途中に、フワッと何処からか匂って来る“ニガヨモギ”(草)のめちゃくちゃ良い香りだった。草原の冷たい風に混じるその甘苦い匂いは、数年前にここを走った時の記憶を今に再び呼び起こし、またこの地に戻れたことの実感と喜びを噛み締めるのだった。
朝からの走行8時間。夕刻にキャンプ地に着いた頃には全員が顔を土埃で真っ黒にしていた(笑)。辺りには素晴らしい風景が一面に広がっている。「こんな所でキャンプが出来るの?」と、込み上げる喜び。早速、テントを張り、焚き火を囲みながらの夕食である。温かいスープが体の芯にまで染みわたり、今日を無事に走り終えたことに感謝一念の気分だった。気温は再び下がり、夜空は満天の星々がくっきりと頭上いっぱいに広がっていた。
成田を発ってまだたった2日。しかし、すでに普段の自分の日常とはかけ離れた時間が流れている。この寒暖差、広大な大地、そして仲間との脅威的に楽しいロングトレイル(マジでこんなに長いのはない)ロード。
モンゴルでの大冒険は、ここから本格的に始まっていく。(次回に続く)