トライアンフが新型TIGER1200を発表、プレス向けに技術説明会が催された。ラインナップは旧モデル同様に、GT PRO、RALLY PRO、GT EXPLORERの3機種。全モデルのホイールがフロント19インチ、リア17インチに統一され、エンジンは8PSアップの158PSに。前後のレーダーを使うACC(アダプティブクルーズコントロール)をはじめ、ライダー支援システムが大きく充実したほか、停車時に自動でシート高を30mm下げるSHOWAのEERA HEIGHTFLEX、Apple CarPlay/Android Auto対応の7インチタッチスクリーンも新たに採用している

新型TIGER1200 GT Exploler

ツーリング性能へ舵を切り、ACCを大きく充実

先代のTIGER1200は、ロード向けのGTとオフロード向けのRALLYにはっきり分かれていた。新型は、RALLYも含めてツーリング性能の側へはっきり舵を切っている。それがまず表れているのが、ライダー支援システムだ。ボッシュと共同開発した前後のレーダーを使い、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を中心に多くの機能を備えた。ACCは設定した速度、または前の車との車間をスロットルとブレーキで保つもので、反応の違うコンフォートとダイナミックの2モードをプリセット。ウインカーを出すと、死角に車がいないのを確かめて追い越しに備えるオーバーテイクアシスト、コンフォートモードでは長いコーナーで速度を落とすカーブスピードコントロールも働く。グループライドアシストは前を走るバイクの位置と速度から適切な間隔を保ち、千鳥走行(欧州でも千鳥走行がグループライドの基本らしい!)の隊列も維持する。前の車には反応せず設定速度だけを保つダイナミッククルーズコントロールも選べ、こちらも下り坂ではエンジンブレーキとブレーキを使って速度を守る。四輪のACCのように、疲労の少ないツーリングができるという。

前方のレーダーは、前の車に近づきすぎないよう加速を抑えて必要ならブレーキもかける車間距離アシスト(車間は3段階)、急ブレーキの際に衝突の恐れを検知するとブレーキ圧を高める緊急ブレーキアシスト、前方衝突警告にも使われる。前方衝突警告は画面表示に続いて、それでも距離が縮まるとリアブレーキペダルの振動で知らせる。後方のレーダーは、死角にいる車や後ろから急接近する車をミラーのランプで知らせるブラインドスポットアシストと、後ろの車が近すぎるときに知らせる後方接近警告を担う。

説明会では、これだけ情報が増えると走りの邪魔にならないか、という質問も出ていた。

「これらのシステムは気を散らすためのものではなくて、スポーティな走りや快適なロングツーリングを助けるためのものです。周りで起きていることをライダーにより把握してもらって、情報を直感的に届ける。クルマの技術をそのままバイクに載せたわけではなくて、バイク向けに作り込んでいるんです。バイクの幅も、バイクの乗り方もちゃんと理解している。実際に乗ってもらえば、どれだけ自然に動いて、うまく統合されているかがわかると思いますよ」

全モデル19/17インチ、ストロークは前後200mm

足回りもツーリング寄りに見直された。RALLYを含む全モデルが、19/17インチのホイールと前後200mmのストロークに揃えられている。先代はGTが19/18インチ、RALLYが21/18インチで、RALLYのストロークは前後220mmだった。GTはキャストホイール、RALLYはスポークホイールを履く。タイヤはフロント120/70R19、リア170/60R17で、リアは先代の150から170へ太くなった。RALLYの標準装着タイヤはピレリのスコーピオントレイル3だ。

技術説明会でも、真っ先に出た質問はなぜRALLYのホイールサイズを変えたのかという点だった。答えたのはプロダクトリードのクリス氏だ。

「根本的には、お客さんの声です。いまのTIGERは幅広いラインナップになっていて、そのフィードバックをもとに決めました。21インチは使い方によっては合っていますが、このバイクと、このTIGER1200のラインナップには19インチがまさに目的に合っている。私たちは顧客調査をかなりやっていますが、21インチのフロントを求める声は特になかったんです。みんなが本当に欲しかったのは、舗装路での走りの性能でした。それでいてオフロードの走破性は維持しています。19/17の組み合わせでも、ミシュランのアナキーワイルドのようなデュアルパーパスタイヤが選べますから。あれは素晴らしいタイヤですよ」

GTとRALLYの違いは、ホイールに加えて、RALLYにはオフロードプロモード、エンジンプロテクション、可倒式で調整もできるブレーキペダルが付くこと。PROは20L、EXPLORERは30Lのタンクを持ち、EXPLORERにはTPMSと専用のロワーエンジンバー、PROより10mm高く10mm幅広いハンドルが付く。

減った20mmは、リアショックの油圧バンプストップで補う

RALLYのストロークは前後220mmから200mmに減ったが、サスペンションの中身には手が入っている。前後ともデュアルレートスプリングになり、リアショックには新たに油圧式のセカンダリーバンプストップが組み込まれた。説明会でもこの点を突っ込む質問が出ている。

「20mm減ってはいますが、オフロード性能はいまでも非常に高いですよ。ユニットそのものの能力を上げているんです。フロントフォークは少し硬めにして、デュアルレートスプリングを入れました。リアショックにはハイドロリックロックを組み込んでいて、専用のバルブブロックとシムスタックを持っています。だから最後の20mmのストロークが完全にコントロールされる。スプリングやストロークがあればいいわけじゃなくて、エネルギーを逃がせないといけないんです」

セミアクティブサスペンションはSHOWAのEERA HEIGHTFLEXで、フロントは49mm倒立フォーク。減衰はファーム、ミディアム、ソフトの3段階を専用ボタンで切り替えられる。リアはプリロードを自動で調整するセルフレベリング機能を持ち、1人乗りでも2人乗りでも、荷物を積んでも車高とジオメトリーを保つ。

EERA HEIGHTFLEXのオートライドハイト機能は、速度とブレーキを監視して、停車しようとするとリアのプリロードを抜き、シート高を30mm下げる。1人乗りでも2人乗りでも下がる量は同じだ。走り出すと、リアショックに一体化したギアポンプで3〜5秒のうちに設定した車高に戻る。トライアンフによれば、似た仕組みの他社システムには元の車高に戻るまで20〜30秒かかるものもあるという。

停車時に車高を下げる機能自体は2021年のハーレーダビッドソン・パンアメリカなどにも例があるが、トライアンフはEERA HEIGHTFLEXをフル実装。先代TIGER1200にも、65km/h以下でプリロードを抜いて最大20mm車高を下げる機能があった。

シート高は790〜840mmで、2段階の調整式。車高ダウンが働けば、説明会では「Speed 400と同じ」と紹介していた。オフロードモードでは自動の車高ダウンが切れ、ボタンで30mmのハイ/ローを手動で切り替える。センタースタンドを掛けるときに一時的にリアのプリロードを上げて車体を持ち上げ、スタンド掛けを楽にするセンタースタンドアシストも付いた。

エンジンは158PS、1速の最低速度は6km/h下がった

1160ccのTプレーン3気筒は、最高出力158PS/9,250rpm、最大トルク130Nm/6,750rpm。先代から8PSアップし、トルクのピークはより低い回転に移った。圧縮比は13.2:1。シリンダーヘッド、ピストン、軽量化した吸排気バルブ、燃料噴射、排気系を見直したほか、クランクシャフトとバランサーシャフトで回転部の慣性を最適化し、カムプロファイルもバルブがより穏やかに開くものに変えている。

ギア比は1〜3速を変更。一次減速比と二次減速比も見直して、1速で走れる最低速度を6km/h下げた。渋滞やUターンなど、極低速での扱いやすさを狙ったものだ。6速ミッションとシャフトドライブも、静粛性とシフトの精度が上げられている。クイックシフターのトライアンフ・シフトアシストは機構こそそのままだが、制御を新しくした。クラッチは軽い操作力の油圧式のままだ。

説明会では、開発陣がこのエンジンの音についても語っていた。

「このバイクに乗ると、とにかく音が信じられないくらいいいんです。吸気音も聞こえてくる。あの吸気の唸りは、アドベンチャーバイクで聞いたことがないものですよ。Tプレーンのトリプルには何かがあるんです。みんなでオフロードに乗りに行って、追いかけっこしながら坂を全開で駆け上がっていくと、唸りを上げて本当にいい音がする」

オフロードモードは走行中に切り替え可能に

ライディングモードは、ロード、レイン、エコ、スポーツ、オフロード、カスタムのライダーA/Bに、RALLYのみのオフロードプロを加えた最大8つ。既存のTIGERオーナーからの要望を受けて、オフロードとオフロードプロは走行中に切り替えられるようになった。前輪に最小限のスリップ制御を残すことで、止まらずに切り替えられるようにしたという。ABSを前後とも完全に切りたい場合は、ライダーA/Bで設定する。

リアブレーキの扱いも細かい。オフロードモードではフロントブレーキをかけるとリアにも少し制動力が配分され、そこにはABSが効く。一方、リアのブレーキペダルを自分で踏んだときはリアのABSが効かないので、リアをロックさせて向きを変えることもできる。TPMSは、オフロードモードでは低圧警告を出さずに実際の空気圧を表示するようになった。空気圧を落としてダートを走ることを想定したものだ。

メーターはボッシュ製の7インチHDタッチスクリーンで、ワイヤレスのApple CarPlayとAndroid Autoに対応。タッチ操作は2km/h以下、走行中はスイッチボックスやSiri、Google Geminiの音声で操作する。冷却機能付きのスマートフォン収納とUSB-C充電も備えた。ヘッドライトは、バンク角15度と30度でLEDを順に点灯させてコーナーの内側を照らすアダプティブLEDだ。

車重は250〜268kg、価格は2,795,000円(税込)〜

車重(装備)はGT PROが250kg、RALLY PROが255kg、GT EXPLORERが260kg。これだけ装備を増やしながら、開発陣は先代とほぼ同じ重さに収めたと話している。ホイールベースは1,567mm、キャスター角24.3度、トレール115mm。メンテナンスの間隔は16,000km(または12か月)だ。

価格はGT PROが2,795,000円(税込)〜、RALLY PROが2,895,000円(税込)〜、GT EXPLORERが2,895,000円(税込)〜。電子制御などのオプションになりがちな装備はすべて標準だという。

編集部は先代のTIGER1200 GT PROを所有していた。2022年の試乗会で乗った先代RALLYは、21インチと220mmのストロークですさまじいオフロード性能を持っていたが、リッタークラスでそれを使い切れる人も場所も限られる。編集部もRALLYは手に余ると考えてGTを選び、結局ほとんど舗装路を走ってきた。TFシリーズを立ち上げるほどオフに真面目なトライアンフが、RALLYまでツーリング寄りに仕立て直したのは、そういうマーケットの声を反映したものだと技術説明会でも話があった。アドベンチャーバイクが単なるブームの時期を乗り越え、オートバイのメインカテゴリーの一つとしての地位を確立してからというもの久しい。中でも珍しいトリプルエンジンは、1000kmクラスの長大なグランドツーリングでこそ威力を発揮すると編集部は考える。朝日が上る頃から、日が落ちる頃まで走り続けたい本物のツーリングライダーにこそ、この新型TIGERは受け入れられるのではないだろうか。