北海道の林道には、なぜか独特なロマンと匂いが漂っている。本州の林道は、その名の通り「林業」で伐採した木材を運ぶための「運搬用」道路か、それに付随した「治山」のための道路である。これに対して北海道の林道は、その昔の地域と地域、あるいは平野と平野を結んだ言わば開拓の道。幅広いアスファルトの新道が開通するまでの古き良き時代の、歴史を物語る”オールドトレイル”と言う訳なのだ。

第二の故郷へ帰る

さてさて、そんな北海道を、どこまでも快適に走りゆくCRF450Lだったが、旅をして心の底から痛感したのは、「バイクという乗り物の素晴らしさ」。一つの峠を越える度に、一直線の道を突っ走る毎に、輝くオホーツクの青い海を眺める度に、「あぁバイクっていいな。とにかく最高。俺はまだずっとこの先も走り続けるぞ〜!」と、視界のいっぱいに広がる景色に向かって、叫んでばかりだった。

朱鞠内湖のフィッシングガイドさんもCRF450Lを大変気に入ってくれた。

26歳、僕は初めて北海道を走った。以後、30代では1年のうちのほぼ1ヶ月間は北海道にハマりっ放しで、あちこちを走り回った。よく言われる「第二の故郷」、もちろんそれは、躊躇もなく「北海道!」と意気込んでいたものだった。それから以後20年近く、北海道をバイクで走ることは何故か無くなり、暫らくの空白だった。

しかし、再び60才を迎えたところで、久々に北海道を走るチャンスを得た。で、なんともいやはや、どこの風景を眺めても走っても、僕の心は強烈に感動しまくりだった。

懐かしい清里峠、美幌峠、開陽台から見える地平線…。今は失われてしまった遠い過去の青春と当時の風景が、眼前に再び蘇って見えたのだった。今も昔も変わらぬ風景が北海道には沢山ある。そんな中で、バイクと共に再び出会った当時と変わらぬ風景に、思わず感謝をしながら、同時に自分の心に今なお息づく「青春」との出会いに、深く深く感動したのだった。肉体は老いるが、心の中の青春は老いない。こんな出会いや感動こそが「バイクの真髄」なのかも知れないと、北海道の原野を走り深く頷く自分だった。