誰もがしらないサウジアラビアのラリーで
全チームを襲った「想定外」

あけて2020年。サウジアラビアで初のダカールラリーがおこなわれたわけだが、入国管理の厳しいサウジアラビアにおいてテストや下見を事前におこなっておくことは、事実上不可能だ。南米のダカールでは、可能性として下見をすることが可能だった。当然ルールで立ち入りを禁止されているが、8000kmにもおよぶ長大なルートに見張りをたてておくことなどできはしない。また、何年も使っていれば、知っているルートも多いし、路面状況なども掴みやすい。とにかく、サウジアラビアのダカールラリーは、そういった意味でインパクトがデカイ。

二輪のチームに、大きなインパクトを与えたのは、スタート数日前にはじめてわかった航続距離の長さだ。FIMではマシンの航続距離が250kmと決められているが、ダカールの場合はそのルールが適用にならないケースがあるらしく、サウジアラビアでは290kmの航続距離が求められたのだった。ラリーマシンは、入念に燃費とパワー、重量のバランスポイントを探り、ベストなタンクを準備していきているもの。どのチームにとっても、想定外の事態だったのだ。

2020年ダカールの鍵を握った燃費は、スロットルバイワイヤを介した電子制御がキーになった

「ECUの設定で薄くしていくこともできますし、HRCは今まで培ってきたテクノロジーとしてスロットル・バイ・ワイヤ(TBW)というアドバンテージがありますから、これをつかって特性を調整することで、燃費を稼ぎました。もし燃費が問題になったら、というのは我々も実は想定していたのです。だから、TBWやECUのメニューは前もって様々なモードを作ってきたので、あまり焦りはありませんでした。

砂の粒子まで、情報がない。そんな状況が閉鎖されたサウジアラビアを象徴している

ただ、サウジアラビアは事前情報がなく、我々の得られる情報もウェブで公開されているものと変わらないんですね。路面がどういうものか、毎日ライダーからフィードバックを受けながら、メニューを検証し、序盤を乗り越えました」と本田太一。砂が細かければ、燃費も変わってくる。ライダーによっても違う。そのあたりの細かいセッティングを、事前に準備していたことが功を奏した。