全日本規模のエンデューロレースで、コロナの影響を一番色濃く受けたのはG-NETではないだろうか。もともと全5戦の予定だったものの、第2戦HINO HARD ENDURO春の陣、第3戦HIDAKA ROCKS EXTREME ENDUROが立て続けに中止に追いやられ、10月18日にブラックバレー広島で開催された大会が、約半年ぶりの開催となる第2戦になった。さらに特殊な広島ルールにより、今年のランキングを大きく左右するレースとなった。

広島ルールに翻弄されるトップ陣
3位に入った意外なライダーとは……!?

2位に入った鈴木健二は一周目は5番手付近を走行していたが、2周目の「ヤミ金キャンバー」で最短ルートの渋滞に引っかかっていた上福浦明男、佐々木文豊を迂回ラインから一気にパッシング。3位に躍り出た。

「今回は完全にタイヤの選択をミスしました。最近ハードエンデューロではDUNLOPのMX12がすごく良くて、下見したらキャンバーが多めだったので今回も選んだのですが、ここのコースはAT81EXでしたね……。周回が進むにつれてどんどん土の下に隠れていた根っこや石が顔を出してきて、ヒルクライムでは開けても開けても全然進まないんです。おまけに2周目の「バツ2ステア」で失敗して肋を折ってしまって、厳しいレースでした」と鈴木。

実は鈴木はレース中は山本、水上からだいぶ遅れて3位を走行していた。しかしサバイバル広島と同じ独特な「広島ルール」に救われ2位に入った結果。ご存知ない方のために説明すると、レース時間3時間経過後に30分間チェッカーフラッグが振られるが、その30分の間に集計所を通過しないと完走にならない、というもの。

2位を走行していた水上は5周した時点で残りレース時間20分+計測時間30分だったが「アヤトには10分程度離されていて追いつくのは難しかったんです。例え後ろのケンジさんが6周目に入っても計測時間内に戻ってこられない可能性が高いですし、もし戻ってきてここでケンジさんに負けてもランキングは同ポイントで並ぶので、最終戦の日野できっちり勝てば大丈夫なので」という、昨年の日野ハードエンデューロで完勝し、日野に絶対の自信を持っている水上だからこその判断だったのだが、実はそこには思わぬ落とし穴があったのだった。

このように「もう一周」に突入して万が一計測時間内に戻ってこられなかったらDNFになることを恐れたライダーが集計待ちを行うのは、もはや広島名物となっている。

水上が陥った落とし穴とは、永原達也の存在だった。昨年はG-NET参戦を見送っていたため、黒ゼッケンではないものの、過去にはランキング3位にもいたことがある実力者。今回は2017年のKTM250EXCでスポット参戦していた。「ゼッケン順だったので6列目スタートだったのですが、2周目には木村つかささんや佐々木文豊さん、泉谷之則さんに追いつけて、一緒に走ってました。3〜4周目くらいでケンジさんに抜かれて、てっきりラップされたのかと思っていたのですが、実は同一周回で、競っていたみたいです。あまり深く考えずに残り40分で6周目に入り、4分残しでゴールしたらなんとタイスケさんを抜いて3位でした」と永原。

しかし、この永原は開幕戦に出場しておらず、チャンピオン争いには不参戦。第2戦が終了した時点でランキングトップは鈴木健二で42pt、続いて山本礼人が41pt、水上泰佑40ptと、まさに1pt差で3人が並ぶ結果に。最終戦1位は25pt、2位は22ptなので、この3人の中から最終戦で優勝した人が2020チャンピオンということになる。誰が勝っても大きな話題になるだろう。