世の中に腐るほど存在する中古SRを蘇らせて、林道をとことこ走ろうという悪魔の連載第3回。今回はフレームを精査する。精査? めっちゃつまらなそうじゃん、と思いきやむしろここが連載のピーク(頂)です

スイングアームをゴミだと思える決断力

SR400/500ってマニアのみなさんがたくさんついていらっしゃる。この連載をはじめると、早速マニアの方から「初期型フレームは実はここが違うんですよ?」と言われた。

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せっかく初期型にこだわって塩漬け高額案件を買ってしまったので、できるだけ初期型のディテールを残すことにこだわりたい。なんせ初期型のガソリンタンクは美品なら10万円を超えるという時代である。初期型フレームも書類付きとなると僕の買った車体の価格15万円を超えることもある(ということで、15万円で落札したことを正当化しているのである)。

まずは車体バラシにあたって放置したままのスイングアームを外さなければならない。なお、SRはスイングアームのピボットシャフトがすぐ固着してしまうことで有名で、最悪スイングアームを切断しないと外せないという事例も少なくない。僕が過去に乗ってきた2台もかなり渋くて、ピボットシャフトが使い物にならなくなることを見て見ぬふりをしながら、親の敵のごとくハンマーを振り下ろしたものだ。でも、実際にピボットシャフトが抜けなくなるほどの車両は無かった。


まぁ、この車体はよほどのものですよね。叩いても熱を加えてもびくともしないです。切断までの決断はわずか10分。即決である。レストアは、何をゴミにするかを決断する行為の連続である。今回の車両において、スイングアームはゴミ。SRってタマ数がめちゃくちゃ多いので、いつ探してもスイングアームくらいはさっと安値のものを発見可能なので、どんどん決断を下していきたい所存。すでにキレイ目のスイングアームを2000円で落札済み。遠慮無くKILL! 

※のちにその決断力が、大きな間違いであることに気づくことに僕はまだ気付いていない

こりゃバイク屋さんが嫌がるわけだよ……スイングアーム切断めっちゃ大変じゃん

スイングアームを切断するとはいっても、まずはどうやって切断すればいいのかを思案する。このぶ厚い部品をまさか金属用ノコギリでギコギコやるつもりはないので、なんとかグラインダーでぶったぎれないものか。いろんな角度から眺めて、どうやればグラインダーの刃が届いて切断できるか考える。グラインダーってご存じの通り全然刃の距離がないんで、パイプくらいしか切断できないんですよねぇ。

よくみると、この根元の部分はたぶん鉄の塊じゃなくて中空になっているんじゃないだろうかと考えた。鳥居型にパイプを3本組んだものにガゼットを挟み込んでるだけなんじゃないか説。まぁ、なんでもいいからとりあえず切ってみよう。(ここまで30分)

ざくざく。

ここまで切るのに10分くらい。しっかり刃が通った。やっぱりここは中空なんだ。

というわけでこうして……

カパッ。思った通り。スイングアームは3本のパイプに外側でガゼットをかませている。これならグラインダーの刃でもなんとか切断までこぎつけそうだ(ここまで30分。ぜーはーぜーはー)。

車体前側から刃を入れて……

裏側からも刃を入れる。

き、切れたよおっかさん!

これがスイングアームだったものである。今日も鉄材売却が捗る。

スイングアームだったものPart2。

ピボットシャフトは、片方抜けないので時間に解決して貰うことにした(ここまで90分。てか時間が解決したりはしない)。

ピボットシャフトの中間部分はするっと抜ける。固着してるのは、あくまでピボットシャフトとフレームの接続部分なんだなぁ。勉強になりました。このスイングアーム切断だけでおおよそ3時間くらいかかった。これはバイク屋さんも嫌がるわ……。

フレームがどの程度傷んでいるか、それがレストアの最重要課題である

すべてのパーツを生かして元通りにしなければいけない超ビンテージ級のオートバイなら話は早いんだけど、タマの豊富なオートバイの場合はさっくりいろんなパーツを諦めることができる。SRの場合はエンジンだって山ほどネットオークションに出品されているから、たとえばエンジンが駄目でも大丈夫だ。

もちろん、フレームも書類付きでネットオークションでみつけることができる。15万円の車体を分解してひとつずつ鉄くず屋にもっていき、新たなパーツと置き換えるとそこには1台のSR500ができあがる。しかし、それは本当に僕が買ったSR500と言えるのだろうか。「レストアベース」とはなんなのか、という哲学的な問題にブチ当たる。駄目だ駄目だ。何を言ってるんだ。

とにかく。

フレームが生き残らなかったら、レストアとは呼べない(と思う)。

これがフレームだ。SRの場合はメインパイプはオイルタンクを兼ねていて図太い。クレードルと呼ばれる五角形のかご部分の他は、法律上フレームではない扱いらしい。だからスイングアームやサブフレームはいいとして、このかご部分が大事なわけである。

こういう錆で埋もれた部分はもしかしたら腐食がひどくて穴が空いているかもしれない。そもそも錆には溶接が効かないのでざっとあたりをつけるためにグラインダーで地肌を探す旅に出る。

かご部分が……

大事なわけで……

穴が空きまくってるよママン……。

フレームをしっかり精査してみたら、フレームは残らないかもしれないというとてつもなく哀しいハナシになってきた。

つづくよ! 意地でもつづくよ!