史上初のオートバイによる北極点・南極点到達、チョモランマ(エベレスト)世界最高高度6005m達成、パリ・ダカールラリー二輪部門へ日本人として初めて挑戦、などなど……。これまで数々の挑戦を成し遂げてきた風間深志氏が、実は本人にとってこれが初めてという日本一周ツーリングに出発。連載Vol.2をお届けします!

フェリー待ちで現代のツーリングシーンを学ぶ

10月上旬のある土曜日、僕は新潟港から小樽行きフェリーに乗ろうとしていた。すでに北海道ツーリングの旬は過ぎているはずなのに、30名ほどのライダーが僕と同じフェリーに乗るために並んでいる。
前回の記事でも書いたけれど、日本一周の目的は現在のツーリングシーンを身をもって感じ、新たなインスピレーションを得ることだ。だから道中で出会ったツーリングライダーには積極的に話を聞こうと思っていた。

フェリー乗り場ではKTMの大型アドベンチャーモデルに乗ったライダーに話を聞いた。彼はラリースーツをまとい、頑丈そうなパニアケースに荷物をきっちりとパッキングする、いかにも玄人感あふれる出で立ちで、函岳のスーパー林道を走るために渡道するらしい。これは濃密なキャリアをもつライダーに違いないと思っていたら、バイク歴はまだ7年ほどと聞いて驚いてしまった。

というのも、車重200㎏をはるかに超えるような重量車でオフロードを走るなどというのはそもそも不合理な遊びであり、王道とは言い難いからだ。重いうえにパワーもあるものだから転んだらまずタダじゃすまない。GSトロフィーなどの影響もあるのか、比較的バイク歴の浅いユーザーにそういうエキセントリックなバイクの楽しみ方が浸透していることに時代の変化を実感してしまう。ちなみに彼はもともとハーレーに乗っていたらしく、それと比べれば今のマシンは軽いと言っていた。この辺りは小さなバイクからステップアップして大型バイクに行き着いた我々の世代の認識とは大きく違うところだ。

あと、なるべく自由に旅を楽しみたいからと、あらかじめ目的地を決めることなく、行き当たりばったりの旅をしているというライダーとも話した。宿の予約もせず走り出し、いざとなったらテントで泊まる、もし向かっている先が雨になりそうなら、目的地を変更することも厭わないという。良いなぁと感心する反面、これまで目標のない旅などしたことのない自分には真似できないだろうなと思った。

さらにその人の足元を見たらモンベルの山登り用のトレッキングブーツを履いている。思わず「この靴でバイクに乗るんですよね?」と聞くと「そうです」と。ツーリング中に山登りもするのだとか。

じつは僕は前からこういうスタイルに憧れがあった。走ることだけを目的にバイクに乗るのではなく、他のアクティビティを楽しむためにバイクに乗るスタイルである。

バイク趣味は深みにハマるとウエアやギア、装備なんかのチョイスが走ることに特化しすぎてしまう傾向があると思うのだ。旅を楽しむという観点ではオーバークオリティな装備になりがちである。オートバイツーリングは競技ではないのだから、ウエアやギアはもう少しカジュアルというか、汎用的というか、とにかくもっと自由な視点で選んでも良い気がする。

とまあ偉そうに書いてしまったけど、いまの僕はツーリングに関してはまったくの浦島太郎状態。まだ自分のスタイルが定まっていないフラットな状態だ。だから他のライダーの旅のスタイルを知るのは凄く面白いし、自分の感性にあったものはどんどん真似しようと思っている。

ちなみに正午に無事出航したフェリーはとにかく揺れた。前日に欠航になったぐらいだから海が荒れていたのだ。さすがに船酔いしちゃって夜は早く寝たのだけれど、翌日の午前3時半には船内放送で起こされ、4時半には小樽港に下船なので、想像してたほどのんびりした船旅ではなかった。僕はひんやりとした空気の小樽港に降り立ち、まだ購入してから696㎞しか走っていない愛車と共に日本最北端の地、宗谷岬を目指して走り出したのだった。

太平洋を航行する大洗~苫小牧航路に比べると揺れが少ないはずの新日本海フェリー。ところがこの日は何かに掴まっていないと船内を移動できないほど揺れた。さすがの僕も船酔いで食欲が湧かず、客室(個室だけど狭い!)で横になっていたらあっという間に小樽港に着いてしまった。

北海道1日目は小樽から海岸線を辿って宗谷岬を目指す。10月上旬の北海道は思ったほど寒くなく、ツーリングには絶好の気候だった。

札幌在住の知人と合流し、一緒に未舗装林道にトライ。わずか4㎞ほどのフラットな砂利道だったけれど、まだマシンに馴れていないので恐る恐る走る。クマに遭遇しなくて良かった(笑)

サロベツ原野の中を延びる日本海オロロンラインの風景。風力発電の風車が無数に立ち並ぶオトンルイ風力発電所の風景はいつ見ても壮観。

こちらは道の駅「てしお」で食べた「しじみラーメン」。出汁が効いてとても美味だった。