スキーとも、バイクとも、まったく違う次元の楽しみがスノーバイクにあった。生と死、自由について考えさせられる究極のフリーライドへようこそ

PHOTO/TOSHIMITSU SATO

オフロードバイクにキャタピラーをつけて雪を走る奇特な遊び

北海道の友人や先輩達の周辺がスノーバイクで騒がしくなったのは10年ほど前だろうか。オフロードバイクのスイングアームを外してキャタピラーを装着し、フロントにはソリをつける。アメリカのティンバースレッドというメーカーが有名で、カナダやアイスランドで人気に火が付いたという。

その走る写真を見るだけで、人気になるのも納得できる。元々オフロードバイクは自由に道を外れて走ることが出来る優れた乗り物だけれども、スノーバイクはその領域を雪山にまで広げ、まるでパウダースキーのように白いルーストを上げながら走ることができる。土と違って転んでも痛くはないだろうし、そもそもオフロードバイクをバンクさせる感覚はスキーに似てなくもない。例えば、サンド路面を走る時のイメージは、スキーのエッジを立てて曲がる気持ちよさに似ているような気もする。雪とオフロードバイクは相性が良さそうだ、というのは良くわかる。

では、スノーモービルではいかんのかというと、あれはなかなか難しい乗り物だ。バイクのようにバンクしないものだし、幅も広い。新雪で乗りこなすにはよほどの鍛錬が必要で、パワーをかけ続けられないとすぐに埋まってスタックしてしまう。スノーバイクのガイドをしているビッグタンクマガジン編集長の春木氏も「スノーバイクは、オフロードバイクさえ乗れれば簡単に走ることができる乗り物。スノーモービルとはだいぶ違う」とおっしゃる。ウィンタースポーツに精通し、かつてバックカントリーのスノーボードジャーナリストとしても筆を振るった氏の言うことだ。間違いはないだろう。

こちらがスノーバイク。ベースになるバイクはなんでも構わないが、意外と素の性格が出るとのこと。こちらCRF450Rベースはやはりツキがよく上級者向けだそうだ。僕はKTM500EXCベースのものをレンタルした。雪にパワーが食われるので、500ccあってももてあますことは無かった。2スト300ccなども軽くてとても相性がいいとのことだ。

アメリカのティンバースレッド製ユニットは、スイングアームを外して装着する。全重量で120kgほどになるといい、見た目よりだいぶ軽い。

オフロードバイクより遙かに自由

春木氏は札幌のモトクロスチーム「モトライフ」の源治篤氏と共にスノーバイクのガイドツアーを運営していて、今回はそのツアーに参加させていただいた。今回はエンデューロフィールドとしても有数のエリアとして知られるルスツビッグベア界隈を走るのだが、そもそもこのルスツという土地の雪はとても質が高いらしい。ハクバ、ニセコ、ルスツ……海外のウィンタースポーツ好きがこぞって来日するのは、これらのエリアが気温が低く、たっぷり積もったパウダースノーを滑ることができるからだ。そんな場所にオートバイでシュプールを描くことができるとあれば、人気なのも頷ける。今はオーストラリアからの客が多いとのことである。オーストラリアは日本のスキーのようにスポーツとしてのオフロードバイクに親しみがあり、また季節が真逆だからだろうとのこと。

ガイドツアーではまず、実際の雪山に入る前にベースとなる基地の目の前にある平地で練習をする。乗り方はオフロードバイクと大きく変わらず、ブレーキが一系統しかない(キャタピラーにブレーキをかけることができ、右手レバーで操作する)ことくらいしか違わない。クラッチとスロットルの関係もバイクと同様なので、オフロードバイクに慣れ親しんだ人であれば、すぐに発進できるはずだ。平地に積もった新雪はとても走りやすく、あっという間にバイクの特性を掴むことができる。キャタピラーはタイヤよりも空転率が高いから、ガンガンスロットルを開ける必要があってサンドライディングを彷彿とさせるが、サンドのようにフロントがとられることがない。サンドの浮遊感は上級者にしか味わえないが、スノーバイクならたいていのオフロードバイク乗りにも味わえるはずだ。この時点で、僕のパウダーライディングへの期待はマックスに達していた。早く山に入りたい!

ガイドツアーではウッズなども走らせてもらえるため、トレーニングカリキュラムの一環としてちょっとした土手を上ったり、森の中を走ったりもした。その中ではっきりと分かったのは、このスノーバイクというのは柔らかいパウダースノーの中を走ることに特化した乗り物だということだ。固く締まった轍にはそれなりにフロントがとられるし、圧雪路ではそもそもバンクできないため行き先が定まらない。まっすぐ走っているはずが、前のソリが左右にフラフラとふれるような挙動を示してしまう。ガイドの源治さんによれば「フロントがとられるのを気にしないことに慣れればいいんです」とのことなので、おそらくリアのスロットルワークで曲がるきっかけを掴むタイプの乗り物なのだと思うが、これを乗りこなすにはそれなりのライディングセンスが必要だと感じた。オフロードバイク万年ビギナーの筆者はそれを掴むのに時間がかかり、危うく土手から川に転がり落ちそうにもなったりした。おそらくOFF1.jpを見ているような読者の方であれば、すぐにコツが掴めるとは思うが念のため。

そんなこんなで圧雪林道を死に物狂いで抜けると一面新雪のフィールドへ出た。前を走る源治さんが、きれいにシュプールを描いて曲がっていく。僕もそれと同じように緩やかにコーナリングしてみると、まさに思い描いていたスノーバイクになった。うわ、これだこれをやりたかったんだ! 圧雪路での苦労はどこへやら、新雪の上では浮遊感とキャタピラーのエッジ感を思う存分に楽しむことができた。オフロードバイクではこうはいかない。轍や、石や、様々なものが邪魔をするからだ。新雪上でのスノーバイクはオフロードバイクより遙かに自由である。フリーライドってこれのことだ!!

高い走破性、山の頂上までワープする乗り物

ルスツのビッグベアは、全日本エンデューロに使われるフィールド。標高1000mほどの丘なのだが、エンデューロバイクで走れるラインを探しながら頂上までたどり着くのは、なかなかに難しい。笹藪の路面はスリッパリーだし、ガケは急峻で一筋縄ではいかない。

ところが新雪が積もったビッグベアには、最高のグリップ感が味わえる新雪しかないからどこでも同じように恐れることなく走ることができる。さらにはこのスノーバイク、登坂力が半端じゃなくて、エンデューロバイクでは苦労するヒルクライムも難なくこなせるのだ。キャラピラーが後ろに長いので、まるで海外のヒルクライムレースを走るヒルクライマーのように強烈なトラクションを発揮し、なおかつ捲れる心配もない。4st500ccのビッグトルクで、ぐいぐい登っていくことが出来るのである。

おまけにキャンバーもまったく怖さがない。深い新雪ではリアが滑り落ちるようなことがなくて、エンデューロバイクより遙かに3次元的な走りが出来るため、よりクリエイティブなライン取りが可能になる。前述した通り、とてつもなく自由な乗り物だ。ビッグベアの山頂まではわずか10分ほどだっただろうか。そんなイージーにこの丘を登頂できる乗り物は、恐らくこのスノーバイク以外には存在しないのではないだろうか。

ただ。怖いのはあまりにイージーに山の中に入っていけるからこそ、いつもと感覚が狂ってしまうことだ。土の上ではありえない動きができるため、ゲームや仮想空間でライディングしているかのような錯覚に陥ってしまう。この日、最高速度はGPSの記録で63km/hほど出ていたが、上手な人は100km/hを軽く超えるはず。当然、良く知らない地形を走れば崖から落ちることも、リカバリーできないようなシチュエーションでスタックすることだってあるだろう。もしひとりで行動していて新雪の深い雪の中で抜けだせなくなったら、簡単に遭難、というよりも命が危険に晒される。ツアーをスタートしてもののわずか10分程度で、その危険領域まで入ることが出来るから、バイクよりも遙かに危険な遊びだとも言える。ガイドがいなかったとしたら、どんなことをやったら死ぬのか、それすら理解できないかもしれない。それほどまでに自由なのだ。

北海道の新雪、それもノートラックの斜面をスキーで滑るには、ヘリコプターや雪上車で山頂まで連れていってもらえるツアーがあるそうだ。あるツアーではだいたい1日に2往復して70万円だとのこと。それほどまでにノートラックの雪面を滑ることには価値がある。だが、ルスツのスノーバイクではノートラックのパウダースノーを自由自在に、一日中走りまわることができる。降りるだけでなく登ることだってできる。こんな最高の遊びが他にあるだろうか。このスノーバイクツアーの参加費用は一日11万円/名(+ガイド料2万円/グループ)。これを高いとみるか安いと見るか。さすがにバイクに乗ったことがなければ、いきなりこの体験をするのは難しい。しかし、せっかくオフロードバイクという乗り物の扱いを知っているのであれば、一生に一度はその知識を生かしてこの素晴らしい体験をすべきだと感じる。

HOKKAIDO SNOW BIKE EXPERIENCE

レンタルバイク+ツアー
標準価格
1日 110,000円 /名 + ガイド料20,000円 /グループ
半日 75,000円 /名 + ガイド料20,000円 /グループ

ウエアはゴールドウインで一式お借りしたスキーウエア。3レイヤーのゴアテックスシェルで、中には厚めのフリースと、冬用インナーを仕込んである。ウィンタースポーツから生まれたゴールドウインの上下セットは超絶優秀で、ルスツは−15度くらいだったが相当に動きやすいレイヤリングで事足りた。やっぱり餅は餅屋である。ブーツはソレルなどの防寒用ブーツでOK、モトクロスブーツでは足先がだいぶ冷えてしまうかも。手袋はテムレスがいいそうだが、僕はホームセンターオリジナルのテムレスもどきを着用、指先が動かなくなるほど寒くなって大失敗をした……。

※パンツはシェルだとエキゾーストですぐ溶けてしまうということで、途中からDFGのウエアに着替えています。こちらも秀逸だった!

Goldwin
ゴアテックス3レイヤージャケット

ゴアテックス3レイヤービブ

ヘルメット、ゴーグルはいつも愛用しているBELL MOTO-10とSCOTT。レンズにはダブルレンズを装着、クリアレンズでも申し分ない。地形をいちはやくみつける必要があるガイド達は、様々なウィンタースポーツ用レンズを試しているとのことだ。