史上初のオートバイによる北極点・南極点到達、チョモランマ(エベレスト)世界最高高度6005m達成など、数々の伝説を打ち立ててきた風間深志氏が、今回向かうのはモンゴルの大草原。第2回は130kmのオフロード走行を終えた午後、さらに120kmを進んでヘレルン川へ
協力:バイク王&カンパニー
主催:Green Field Dream Mongolia
Text: 風間深志
目次
第0回 プロローグ:大地への感謝に木を植え、安全を確保し、冒険へ
第1回 大草原へ:オーバー70、再び旅が始まる
植林から始まる旅。バイクに跨がり、モンゴルの大草原へ。130kmの初日
第2回 道のなき地球の大地を行く
360度の草原、丘、川、ゲル。250kmを走りながら見えてきた「道」と「自由」
第3回 朝の陽光を浴び、、牛を助けた?
ヘレルン川の朝。専属メカニック、チョイさん。旅の小さな出来事から「自然と関わって生きる」を考える
第4回 遊牧民は、未来への道標なんだ!
カラマツの森、お花畑、世界一と思える風景。「自然を守る」とは何なのか。ノマド文化と現代文明について
第5回 自然の中に再び会えた我が「青春」
最終日の75km。全630kmを走り終えて。事故なく帰ること、仲間、年齢、そして「冒険の真のゴールは日常」へ
第2回 道なき大地を走る
8月3日、快晴。気温28℃。
モンゴルの高原にしては、かなりの暑さである。雲一つない青空から太陽が容赦なく照りつけ、大草原が眩しく光っている。目の前には、ドーン! と緑の大地が広がる。そんな大地を周りから包み込むように、優しくなだらかな山容の山々と丘が続いていく。その巨大な空間の中に、白くポツン、ポツンと遊牧民のゲルが点在する。
馬がいる。
羊がいる。
山羊がいる。
人間の暮らしが、風景の邪魔をしていない。むしろ、人の暮らしを含め一つの風景となっている。これが僕には、とっても大切なことに思えるのだった。
日本では、人間の暮らす場所と自然とを分けて考えることが多い。
ここからは自然の保護区。ここからは人間の生活圏、と。
しかし本当の「共生」とは、そんな「線」を引くことなのだろうか?
この日の午前中、130kmを走った。途中、バヤン・ジャルガラン村で小さな雑貨屋さんを見つけた。長年モンゴルを走っている僕でも、草原のど真ん中に雑貨屋さんを見るのは珍しい。お店から西や東の方向に向かって放射状に道が延びている。道とはいえ、立派な舗装路が延びているわけではない。草原に2本のタイヤの跡が続いているだけ。
広大なモンゴルの大地では、草原のゲルや村に向かって進む幾つもの轍(道)が伸びている。あっちに、こっちに平原や川筋に伝う白い2本の線が道なのである。だから、ナビゲーションの感覚も日本とはまるで違う。この道を右、その先を左、ではないのである。
モンゴルでのナビゲーションとは……?
あの山を目指して進む。あの谷を越える。太陽を見ながら方向を察知する。目指す方向と方角へ、大胆に、ときに繊細に進んで行く、そんな感じなのだ。そう、あの Rally Raidaと同じ感覚なのだ。モンゴル人がラリー競技に強い理由が、分かるような気がする。
午後、さらに東へ120kmを進む。この日の走行距離は250km。正直、ちょっとクタクタ……。
今日のゴール地点とする「ヘレルン川」のほとりにテントを張った。設営すると、誰かがさっそくバッグから竿を取り出し、河に向かった。大河に向かってルアーをキャストする。(誰かが釣ったら、僕も竿を出すつもり、だった)
一投。
二投……。
三投目……。
反応なし。
大河の主は、そう簡単には相手をしてくれないのである。が、それでいい。自然はこちらの都合にそうそう合わせてくれるものではない。
魚が釣れる日もある。
釣れない日もある。
雨の日もある。
晴れの日もある。
人間の思い通りにならないから、自然は面白いのだ。
そして夜。また、焚き火を囲み、満天の星空を見上げた。
僕は思う。
オフロードバイクの面白さとは、悪路を征服することではない。自分よりはるかに大きな自然の中へ入って、その大きさを身体で知ることではないのだろうか? 自分など、本当にちっぽけな存在だ、と。
そのちっぽけさを知ったとき、不思議なことに人間は少し“自由”になるような気分になる。だから僕は、また無性に走りたくなる。生きているっていう感覚や気分は、そんなことかもしれない。
バイク王メカニック・チョイさんのモンゴルツアー整備日記
かなりのものだったバイクを、今回の様なところを重点に整備し状態を整えたのか?
バトスフ・チョイジャムツさん
最初は、バイクの基本となる「走る・止まる・曲がる」に関わる重要な部分から整備を実施しました。安全に走行ができる状態にするため、先ずは吸気系から整備を始め、キャブのO/H、関連する部分を一つずつ点検し、必要に応じた部品を交換しました。次に、バイクを安全確実に停止できるよう、ブレーキ系の点検を行い、清掃/調整の整備を実施。そして、曲がるという基本動作に関わるステム・ベアリングについても、一台ずつ状態を確認し不具合などがあった場合には部品を交換し、安全に走行できる状態にしました。