史上初のオートバイによる北極点・南極点到達、チョモランマ(エベレスト)世界最高高度6005m達成など、数々の伝説を打ち立ててきた風間深志氏が、今回向かうのはモンゴルの大草原。最終回では、ツーリングを通して冒険することの意味を再確認する

協力:バイク王&カンパニー
主催:Green Field Dream Mongolia
Text: 風間深志

目次
第0回 プロローグ:大地への感謝に木を植え、安全を確保し、冒険へ
第1回 大草原へ:オーバー70、再び旅が始まる
植林から始まる旅。バイクに跨がり、モンゴルの大草原へ。130kmの初日
第2回 道のなき地球の大地を行く
360度の草原、丘、川、ゲル。250kmを走りながら見えてきた「道」と「自由」
第3回 朝の陽光を浴び、、牛を助けた?
ヘレルン川の朝。専属メカニック、チョイさん。旅の小さな出来事から「自然と関わって生きる」を考える
第4回 遊牧民は、未来への道標なんだ!
カラマツの森、お花畑、世界一と思える風景。「自然を守る」とは何なのか。ノマド文化と現代文明について
第5回 自然の中に再び会えた我が「青春」
最終日の75km。全630kmを走り終えて。事故なく帰ること、仲間、年齢、そして「冒険の真のゴールは日常」へ

第5回 自然の中に再び会えた我が青春

8月5日。

「モーン!」

牛の声で目を覚ました。牛の声で起こされたのは、生まれて初めてかもしれない? なんとも長閑な朝だった。野外のキャンプでは、朝、太陽が昇るともう眩しくて寝ていられない。半・強制的“起床”である。

午前8時、定刻通りの朝ご飯。

トースト、コーヒー、紅茶。手作りの生チーズ。野菜スープ。
そして9時半に出発。いよいよ、もうこれが最終日の出発なのだ。(と、ちょっと寂しくなった)

西へ向かい、以前に僕の関わっている東京の環境専門学校の生徒たちと合宿したことのあるキャンプ場(ソドーキャンプ村)の近くを通って、そこから一気に南下する。

「トゥール川」の川辺で、最後のランチをとった。メニューは日本人が大好きなカレーライス。

今日の最後の走行は75km。締めて、全行程630km。全て100%、完璧のオフロードの旅がここに完結した。

僕が、最後まで気を抜かなかったのは、速く走ることでも、予定通りの距離を走破することでもない。全員が事故なく怪我なく「無事」に日本に帰ることだった。ツーリング(レースも)は、得てして「最後」が危ないのだ。

何日も走ってバイクに慣れ、身体も調子もよくなり、“もう大丈夫”と思った頃に「災い」はやってくる。だから、最後まで気を抜かない。怪我をして帰ると、本人の悔しさもそうだが、周りの仲間も辛い。おまけに、次の冒険の扉まで閉じてしまう。旅は、無事に日常に帰って初めて終結する。僕はずっと「冒険の真のゴールは日常にあり」とずっと言ってきた。冒険は、特別な世界へ逃げ込むことではない。

冒険は、心豊かな「日常」に育(生)まれ、そして、そんな「日常」の存在に支えられ、そして最後のゴールは「日常」へと舞い戻るのだ。

お土産は、冒険で見たもの、感じたもの、嬉しかったことの「思い出」を持ち帰る。すると、昨日までと同じ日常が、ほんの少しだけ違って見えてくる。それこそが人生(大金)を賭けた冒険の産物の全てなのだと思う。

そのような僕は、今75歳。

若いころに比べれば、体力も随分と落ち、顔にも皺も増えてしまった。そしてもう、無茶も出来なくなった。

しかしである、バイクに乗って地平線の向こうの轍を追い始めると、不思議なことが起こる。17歳の頃の僕と、今の75歳の僕が一瞬にして同じ人になる。

「あの丘の向こうには、何があるんだろう?」

そう思う気持ちや好奇心に、今も昔も寸分の変わりはない。青春とは、若者だけに与えられた特権では決してない。未知のものに心を動かし、「行ってみたい」と思える心において、人は「青春」の真っ只中にいる。

モンゴルの大草原で、僕はまたそんな昔のような青春気分の自分に出会った。

風の匂い。
土埃。
エンジンの鼓動。
仲間の笑い声。
焚き火。
満天の星空。
どこまでも続く緑の大草原。

自然の中に、再び会えた我が青春。僕は、きっとまたバイクに跨がる。まだ見えぬ「風景」と「未知」と出会うために。そして何より、生きていることを、この身体でもう一度確かめるために。

そんな貴重な体験のできたモンゴルの旅を、今回、共にしてくれた家族の様な仲間たちと、今回の特別な旅をサポートして下さった「バイク王&カンパニー」とメカニックのチョイさんに心から感謝を申し上げたい。

そして、ありがとう! モンゴルの大地。

See You Again!

風間深志

バイク王メカニック・チョイさんのモンゴルツアー整備日記

普段の整備環境とは大幅に違ったモンゴルだったから感じたことは?

バイク王メカニック担当:バトスフ・チョイジャムツ(30歳)

「普段、日本で働いているバイク王の整備ルームは冷暖房の設備も整い、暑さもなく、雨にも濡れず、必要な工具類は全て揃っている完璧な整備環境で仕事をしています。ところが、今回の現地での整備環境は、何もかもが整ってはいないアウトドアー環境。限られた工具だけを使って、毎日ハードな走行を終えて戻ってくるオフロードバイクの整備は、妥協のない実践の現場だったのでかなり過酷なものでした。暑さや寒さに対しては我慢は出来ますが、整備士にとって“肝”となる工具と応じた環境が無いのは大問題です。

今回のモンゴルの経験は、そんな状況下でも手元にある工具を工夫し、使い方を変え、工夫をしながら整備をすることを(自然から)学びました。有名な「ダカールラリー」などの整備も同様だと思います。今や、世界の何処へ行ってもバイクは走っています。すべての車両を設備の整った所で整備が出来るとは限りません。どんな場所や状況下にあっても、その場に有する設備や工具を最大限に生かし、完全かつ安全な整備ができる技術・判断力を身につけられるよう、今後は最大限の努力をして参りたいと思っております。今回の貴重な経験に感謝申し上げます。誠にありがとうございました」