全日本モトクロス選手権レディースクラス2019年チャンピオンであり、現在はマシンを250ccに乗り換えIB OPENに挑戦している本田七海が、7月28日〜8月2日にアメリカ・テネシー州で開催された全米アマチュアモトクロス選手権(通称:ロレッタリン)のWomenクラスに初参戦。Off1.jpではそのレース結果を各ヒート速報でお伝えしてきました。そして大会終了後にインタビューを行い、ロレッタリンで得た経験について聞きました。
「無理かなと思った」絶望を成長へ繋げた6日間
Off1.jp編集部(以下:編):大会お疲れ様でした! まずは現地の状況について聞いていきたいのですが、コースコンディションはどうでしたか?
本田七海(以下:本田):大会期間中、コースはドライコンディションでしたが、レースが始まると整備が入らないので、ギャップがたくさんできましたね。日本のギャップとは全然違って、一つ一つのサイズが大きいので、もはやジャンプのようなギャップを乗りこなすのに苦戦しました。さらにギャップや轍が一部だけではなく、コース全体の端から端まである状態でした。ギャップを受けないラインというのは無く、その中で良いラインを見つけることが重要でした。
編:初めて参戦してみていかがでしたか?
本田:本当に初めてのことばかりで、パドックもどこに止めたらいいのか、受付をどうやってするのかなど、情報も抑えきれていない中での挑戦で、最初は慣れませんでした。英語も話せないので、周りを見て調べながらという感じでしたね。不安もありましたが、良い経験になったと思います。
編:事前の練習時間はどのくらいありましたか?
本田:金曜日(決勝前日)に練習走行が1クラス15分あって、次の日からレースが始まるという流れでした。決勝当日に練習走行はなく、サイティングラップを1周だけしてレースが始まります。なので、ちゃんと乗り込んで挑んだという感じではなかったです。レースは1ヒート20分間で、大会が6日間ある内の3日間、1日に1ヒートを行うというスケジュールでした。
編:結果を見ると、ヒート1で21位、ヒート2で9位、ヒート3で6位と、レースを重ねるごとに徐々に順位を上げていっていましたが、コースに慣れていったということですか?
本田:コースに慣れたのもありますが、最初のヒート1は大会の流れに慣れていなくてバタバタだったんです。レーススタート前にスタートエリアに行って自分の足台を使ったら「主催者が用意している足台しか使えない」と言われてしまって。数も限られているので、その時は余っているものしか使えませんでした。スターティンググリッドを選ぶ順番も、練習走行時のタイム順かと思ったらくじ引きで……、流れを把握するだけで一苦労でした。ヒート1のスタートは余裕がない状態でした。ただ、ヒート2からは流れを理解して早めにスタートエリアに行ったり、グリッド決めも前のヒートの結果順ということだったので、焦らずレースに集中できたというのは大きかったと思います。
2025 Monster Energy AMA Amateur National Live - Day 2
www.youtube.com編:ヒート1では転倒があったんですよね?
本田:はい、1周目にわだちから外れて転倒してしまいました。混戦の中だったので倒れたところに後続の選手が突っ込んできてしまい、ハンドルやラジエーターが曲がっていました。
編:私も現地の中継映像を見てはいましたが、そこまでは気づきませんでした……。転倒するまではスタート後10〜7番手あたりを走っていましたよね。
本田:そうですね。惜しいことをしました。
2025 Monster Energy AMA Amateur National Live - Day 3
www.youtube.com編:ヒート2は他のライダーとのタイム差もそこまでなかったようですが、かなり接戦のバトルでしたか?
本田:ヒート2はスタートで10番手以内くらいの位置につけて、追い上げる形でした。トップは速くて離されてしまったのですが、レースを通して転倒せず、セカンドグループの中で走ることができました。完全に接戦というわけではなく、等間隔に3、4台くらいがついていて、その差が縮まったり離れたりしながら走っていました。そこで自分と周りのスピード差や、どのラインを走っているかなど、他の選手の走りを見ながら戦えたので、そこで得た経験がヒート3にもつながったと思います。
2025 Monster Energy AMA Amateur National Live - Day 5
www.youtube.com編:ヒート2とヒート3では上位に食い込む好スタートが印象的でした。特にヒート3は4番手あたりで出て、トップ集団にも絡む勢いでしたね。
本田:ヒート3はスタートが上手く決まって、3・4番手あたりで出ました。今回トップ3の選手はほぼ固まっていて、そこに食い込んで一緒に走ることができれば、自分の見える世界や課題も変わってくると思っていたので、最終ヒートでまずスタートで同じポジションにつけることができて良かったです。ただ、スタート後の1周目のペースをうまく上げることができず、序盤でトップとの差が開いてしまいました。もったいなかったです。

編:スターティンググリッドの場所は良い位置を選べましたか?
本田:ヒート2は、ヒート1の結果(21位)によって21番目だったので選べる場所も少なくなっていました。アウト側からスタートしたのもあって、スタートで出たというよりは1コーナーから前に出ていったという感じでした。ヒート3は、9番目に選ぶことができたので、イン側を選んでそのまま抜け出せました。
編:日本より台数も多い分、やはりスタートで前に出られるかでレース展開が決まる感じですか?
本田:日本だとフルグリッド30台ですが、ロレッタリンでは42台がフルグリッドです。最初のコーナーまではまだいいのですが、4コーナー以降になると渋滞が出てきます。前の方に出られれば良いラインを選べますが、出遅れるとトップの集団と離れてしまうので、レース展開にかなり響きました。
編:今回が250ccマシンで初めての海外公式レースだと思います。
本田:そうですね。5月にも海外レースに参加しましたが、これほどの大きな大会は初めてでした。
編: 前にインタビューをした時に「250ccでロレッタリンに出たい」と意気揚々と話している姿が印象的でした。実際に参加してみてどんなことを思いましたか?
本田:250ccマシンで海外に行きたいというのは自分の夢でもあったのですが、最初コースを走った時は正直「こんなコース私は走れない」と思いました。サンドセクションやギャップ、わだちなど、日本では絶対に経験できないような路面で、それが本当に難しかったです。これまでに走ったことのない路面の荒れ方で、コースに怖さを感じてしまいました。ただ、ロレッタリンの50ccクラスに出ている海外のキッズたちは、小さい頃からそういうコースでレースをしているのが当たり前で、5歳の子ですら私と同じコースを走って乗りこなしていました。今回ロレッタリンに出たことで、レースの流れや環境の違いを見ることができましたが、その中でも特に、この荒れ方が当たり前だというその環境にまず差を感じました。日本で練習を重ねているだけでは限られた世界の中でやっているだけになってしまうし、もっと早くに海外に来て視野を広げるべきだったと思いました。
最初は落ち込みましたが、走っていくうちに少しずつ感覚が分かってきて、それが自分の成長につながっているということも実感しました。レベルの差を実感してから、どうやったら近づけるのか、他のクラスのレースも見て、「このサンドはこう走るのか」とかいろんなことを吸収しました。レースの中でも少しずつチャレンジして、その経験が、最後の6位につながったと思います。
編:レースは20分間。IB OPENクラスで走ってきたとはいえ、体力的にも精神的にもきつかったと思います。その中でも、夢であった舞台を実際に走ってみて、楽しさはありましたか?
本田:最後は少し楽しく走れました(笑)。最初はこんなコースどう走ったらいいか分からないと、かなり落ち込みましたし、十分に練習できない中で次またレースに挑む不安が大きくて、無理かなと思っていました。 ただ、段々と慣れてきて、ヒート3でスタートして他のライダーとバトルをした時に「こんな感じで競い合って、レースをするのか」と分かってきた瞬間は楽しかったです。
WMX(Women’s Motocross Championship)に向けて
ロレッタリン終了後、現地時間8月8日から3週間にわたってAMAプロモトクロス選手権に併催されるWMX(Women’s Motocross Championship)に、本田選手も参戦予定です。ロレッタリンを終えた今、WMXで何を目指すのでしょうか。
編:ロレッタリンにはWMXに出場しているライダーたちも参加していました。今回の経験から課題や目標はありますか?
本田:ヒート3でトップと絡み、自分との差を肌で感じることができました。その差に落ち込むこともありましたが、その中で戦い抜いたという経験は自分にとって自信にもつながっています。スタートで前に出る感覚はWMXでも継続していきたいです。スタートで前に出られるよう意識しながら、1周目・2周目の混戦の中でもついていけるよう、積極的に攻めて行きたいです。事前練習は当日の練習走行のみということで、どんなコースかわかり切っておらず怖い部分もありますが、そこはみんな同じ状況なので、一歩引かずに走れば先も見えてくると思います。
編:WMXは今回AMAプロモトクロス選手権に併催ということで、8月8日はアメリカのインディアナポリス州にあるアイアンマン・レースウェイで行われますね。当日までは移動と休憩という感じですか?
本田:金曜日にwomenクラスのレースがあって、当日の練習走行をして、そのまま決勝ヒートを迎える感じです。 事前に乗れたら乗りたいですが、インディアナポリス州は行ったことがないエリアなので、余裕があればという感じになりそうです。
決勝は15分の2ヒート制で、ロレッタリンより5分短いですが、1日に2ヒート走ります。ゼッケンは33です。中継等はないと思いますが、応援よろしくお願いします!