モトクロスの国別対抗戦「モトクロス・オブ・ネイションズ(MXoN)」が、10月3日から5日にかけて行われました。Off1.jpでは会場となるアメリカ・インディアナ州にあるアイアンマン・レースウェイで現地取材を決行。決勝に進んだ日本代表の走りをレポートします
決勝当日、最後まで悩んだグリッド順

大会最終日、予選とB決勝を勝ち抜いた合計20チームが競い合う決勝レースが行われた。コースに整備が入ることはなく、前日の走行で深く掘られたわだちがそのまま残った状態でレースがスタート。硬い路面が剥き出しになり滑りやすく、攻略が難しいコンディションとなった。
MXoNの決勝は全3レースあり、2クラスの混走で行われる。決勝のグリッド順は予選の結果によって決定され、予選で優勝したチームは1番目と21番目、予選2位のチームは2番目と22番目というように、全チームこのパターンでグリッドを選ぶ権利を得る。10位で予選通過した日本は10番目と30番目。決勝は2クラスの混走、つまり異なる排気量が同時にスタートするところがポイントで、450ccと250ccのライダー、どちらに先にグリッドを選ばせるかは毎年悩むところである。
レース前、熱田監督に作戦を聞くと、「MX OPENクラスがあるレースは、丈に良いグリッドを選んでもらえるよう先に行かせます。一番難しいのがMXGPクラスとMX2クラスが混走するレース1で、450ccの大倉か250ccの中島か、どちらを先に行かせれば良いか直前まで悩んでいました。パワーがある450ccの方が前に出られる確率は高いのですが、中島のスタートが調子良いことと、本人からも中盤くらいの位置に出られるという話を聞いて、彼に先に選ばせることにしました」と、ライダーとギリギリまで相談し合いながら決定したという。
日本代表、奮闘の末、総合11位を獲得
大倉と中島が出場するレース1、中島はスターティンググリッド真ん中にあるボックスの一つアウト側を選択。レース後に話を聞くと、イン側は1コーナーにかけて絞られるため前に出ることが難しく、アウト側も外に押し出される可能性が高いため、中央より少しアウト側が一番良いグリッドだったという。10番目でのゲートピックとなったが、狙っていた場所を選ぶことができた。


中島は中央、大倉は中島よりもアウト側からスタート。スタートはやはり450ccに分があり、スタートで飛び出したのはドイツのルーカス・クーネン、続いてオーストラリアのジェット・ローレンス、ドイツのケン・ロクスン、スロベニアのティム・ガイザーと全員450ccに乗るライダーだ。大倉も良い反応を見せて12番手、中島は19番手と両者ともに好位置につけて追い上げを図る。しかし、レース序盤で大倉と中島がともに転倒を喫し後退。中島は30番手、大倉は35番手あたりまでポジションを落とすこととなった。30分+2周というレース時間の中で追い上げるも、前を走るライダーとの差は簡単に縮まらず、結果大倉31位、中島36位という順位でチェッカーを受けた。
上位争いは、ジェットが1周目でクーネンをパスしトップに浮上。そのまま後方を引き離しレースをリードする。クーネンとガイザーが追いかける中、レースの残り時間が3分を切ったところでガイザーにイーライ・トマックが迫り3番手争いを展開。接戦となるがガイザーが守り切り、1位ジェット、2位クーネン、3位ガイザーという順位でフィニッシュ。



レース2は下田と中島が出場。下田はレース1の中島と同じくアウト寄りの中央を選択。中島はそれよりもアウト側の位置につけた。スタートでは下田が抜群の反応を見せ、トップで1コーナーに進入する。しかし、アウト側に膨らむミスがあり、その隙に4台ほど前を譲る形となった。ハンター・ローレンスがレースをリードする中、下田は2周目で前を走るリアム・エバーツをパスし4番手に浮上。後方から迫るRJ・ハンプシャーにパスされるも、前2台をかわして3番手、さらにレース中盤にハンプシャーが転倒したことで2位にポジションを上げる。この時点でトップのハンターとは8秒ほど差があったが、下田はその差を5秒ほどに縮める。しかしタイムアップとなりそのままの順位でフィニッシュ。一方、中島は25番手あたりからスタートするも、混戦の中で順位を上げきれず31位でゴール。トップを譲ることなくチェッカーを受けたハンターが優勝を獲得し、下田は450ccマシンで初となる決勝レースで2位に入賞する快挙を達成した。

最後は大倉と下田が出場するレース3。レース2と同じく真ん中を選んだ下田がホールショットを獲得し、レースをリードしていく。大倉はスタート直後のクラッシュに巻き込まれ転倒。すぐに復帰するも、31番手あたりからの追い上げを強いられる。1周目をトップで通過した下田だが、後方につけるハンターとクーネンが下田を猛追し2周目にパス。3番手でレースが進行する。レース時間15分を過ぎたころ、クーネンが転倒したことで下田が2位に浮上。しかし下田のペースは上がらず、、終盤にかけて徐々に後退。この時のことをレース後に聞くと、体力的にかなりきつかったとのことで、限界を迎えながらの6位フィニッシュとなった。大倉は序盤の転倒から追い上げるも、単独走行となり29位でチェッカー。
MXoNの結果は6つのうちの最下位を除外した順位の合計で決定する。日本代表はレース1で大倉31位/中島36位、レース2で下田2位/中島31位、レース3で下田6位/大倉29位となり、レース1の36位を除いて合計99ポイント。総合11位でレースを終えた。
日本代表が決勝進出するのは2016年以来9年ぶり。2016年は予選11位で通過し、38カ国中18位という結果で終えていることから、今回の結果は2016年を上回る好成績であり、日本代表チーム一人一人の実力が高くなっていることを証明するものとなった。



なお、レース3ではハンターが1位を獲得。これによりオーストラリアが2年連続で優勝を果たし、2位アメリカ、3位フランスという結果になった。
ライダーコメント

「日本チームとして11位を獲得できたことはとてもよかったです。ただ、個人的な結果を見ると、悔しさが残りますし、もう少し数字で貢献できたと思います。なぜあそこで、と思うような場面もありました。もっと良い結果を残したかったというのが正直な気持ちです。 自分的には、MXGPクラスで予選15位くらいを走っていたので、決勝では25位に入ることを目標にしていました。実際、前半はずっと20位以内を走っていたのですが、転倒したことで一気に15位ほど順位を落としてしまいました。もし転倒せずに走りきれていたら、もう少し良い順位になっていたのではないかと思ってしまいます。 これまで出場してきた3年間を振り返ると、初年度は予選でスタート出て転倒せずに24位。2年目は17位で、今年は15位ぐらいを走っている時に吹っ飛んで……。久しぶりにあんな吹っ飛ばされたというぐらいの転倒だったのですが、このチャンスで予選落ちはしたくない! という気持ちが強くて、気持ちより先に身体がバイクに向かっていました。あれだけひどい転倒の中で、19位で終えられたのはだいぶ前向きに捉えられるし、自分自身の成長を感じています。だからこそ決勝で転倒したのは本当に悔しいです。ただ、この年齢でも毎年成長を感じていますし、まだまだ伸びしろがあると実感しています。まだ知らないことがたくさんあると、海外に行って見えてきているので、もっと経験を積んで強くなりたいです」(大倉)

「決勝は予選と違って450ccマシンに乗る選手との混走ということで、レースの迫力が全く変わってきましたし、普段は無いレース環境は特別な経験でした。450ccと250ccのライダーともに、自分が前にいても隙があればすぐに入ってきて抜かれてしまう。それを抑えようとすると自分的にはオーバーペースになり、転倒しそうになったので、そこのコントロールが難しかったです。転倒したら元も子もないので、30分間しっかり走り切ることを意識していました。 バイクはスターレーシングに用意してもらって、ヘイデン・ディーガン選手のバイクをそのまま使ったかたちです。MXoNの1週間ほど前から渡米してスターレーシングの拠点でテストをして、自分に合わせてマシン調整を行いました。エンジンに関してはほぼそのままの状態で、かなりパワーがあります。これがスタートでは有利に働いて前に出ることができました。一方で、上が回るエンジンなので低速が少し弱く、細かいセクションでのギアの使い方に苦労しました。1つ下のギアだとすぐエンジンが回りすぎるし、上のギアだとパワーがついてこない。そこを練習走行の最後10分くらいでようやく慣れて、扱えるようになってきたという感じです。 レース1はスタートからオーバーペースでしたが、周りのペースに合わせて、攻めて走れていました。レース2はこの環境を楽しもうという、レース1よりも気楽な気持ちで挑めたのですが、レース1の方が攻めれていたなと振り返って思います。正直どちらの走りも良いとは思えません。ただ、かといって今の自分に他にできることがあったかと言われてもない気がします。全力は尽くせたと思いますが、もやもやした感じで、結果がもう少し伴っていれば"やりきった"という感覚があったと思います。今は悔しさが大きいです」(中島)

「両ヒートともにスタートが上手く決まって、クリーンに前に出られたのでよかったです。450ccマシンに乗って5日目くらいだったので、自分がクラスの中でどの位置にいるかわからない状態で挑みました。両スタートとも上手く決まったのですが、MX2と混走したレース2の時は、1コーナーでアウト側に膨らんでしまって、そこで後退してしまいました。MXGPと混走したレース3では、レース2のミスを修正して、もう少しちゃんとブレーキをかけて曲がっていきました。実際スタート練習はコースで20回もやっていない状態でしたが、フリープラクティスやウォームアップの時にコースの状況や土質に合わせてトラクションコントロールのフィードバックをして、ちょっとずつ自分のスタートマップを作っていき、それが最後ちゃんと決まったのでよかったです。普段250ccマシンではアウトからスピードを乗せてパッシングするのが当たり前なんですけど、450ccマシンだとパワーがあるのでそれが通用しなくて。450cc相手にレース経験がなかったので、アプローチの仕方を変えてみたりとちょっとずつ工夫しながらレースをしていました。なので、レース2ではちょっと苦戦して、2番手に上がるまでに結局10分ぐらいかかりました。また、前日のフリープラクティス40分と予選20分でかなり体力が削られて、決勝もそれが影響して腕に力が入りづらかったりといつも通りの身体ではなかったです。レース3は序盤からかなりしんどくて、正直体力勝負でした。その中でも2位と6位で終えて、自分が予想していたよりも通用して驚きましたし、スピードは問題ないと感じました。チームとしても総合11位で終えることができてよかったです」(下田)