ダンロップは、世界を目指すライダーたちの一番近くで、その足元を支え続けている。舞台となるのは、毎年アメリカ・テネシー州で開かれる「Monster Energy AMA Amateur National Motocross Championship(モンスターエナジー AMAアマチュアナショナルモトクロス選手権)」、通称ロレッタリン。世界最高峰のアマチュアライダーが集うこの大会で、ダンロップのタイヤは装着シェア90%以上を誇っている。その舞台に、今年は2人の日本人ライダー、永澤匠真選手と阿部哲昇選手が挑んだ。
世界からトップを目指して集まる、モトクロスの甲子園「ロレッタリン」

ロレッタリンは、1982年の初開催から数えて今年で45回目を迎える。全米各地の予選を勝ち抜いた1,500人を超えるアマチュアライダーが集い、全36クラス、それぞれ3ヒート制でクラスの頂点を競い合う。
同大会はアマチュアモトクロス界最高峰の舞台として名高いレースであり、過去には、リッキー・カーマイケルやジェレミー・マグラスといった歴代のスーパースターから、現役AMAトップライダーのジェット・ローレンスやヘイデン・ディーガンに至るまで、数々のライダーがこの大会を経てプロの世界へと駆け上がっていった。ロレッタリンの存在はいわゆる「モトクロス界の甲子園」であり、スター選手への登竜門でもある。


ダンロップパドックではタイヤ交換の対応行っている
レースは8月3〜8日の6日間、真夏の炎天下、気温30度を超える環境で行われた。ロレッタリンのコースは常設されている他のコースとは違い、この大会のためだけに年に一度開放される特別な舞台だ。路面はサンド質だが、ベースとなる地盤は硬く、レースを重ねるうちに、表面に乗った砂や土が削れ、午後には硬い地盤が顔を出してくる。刻一刻とコンディションを変えていくため、タイヤの性能が最も厳しく試される環境だ。
ダンロップタイヤ装着率90%以上

ロレッタリンの現地でのタイヤシェア率を見ると、ダンロップが90%以上を占めている。現地スタッフに近年の動向を聞くと、ほとんどのライダーが選んでいるのが、GEOMAXシリーズのマッド・サンド用タイヤMX14。ただし一日を通して同じタイヤを履き続けるわけではなく、午前のヒートはMX14、午後のヒートはMX34に履き替えるライダーが多いという。

理由は路面の変化にある。MX14は、“スクープタイヤ”と呼ばれるように路面をしっかりと掻く形状が特徴だ。サンドやマディコンディションでのグリップ、さらにはストレートでの伸びが良いため、現地でもスタートで前に出るためにはMX14一択と言われるほどだ。一方、50ccからフルサイズまでのマシンが同じコースでレースを行うため、時間が経つにつれて路面は掘られ、真っ平だった路面にリズムセクションかと思うほどの大きさのギャップや深いわだちが生まれる。さらに午後になると路面の表面が削れ、硬い地盤が顔を出してくる。そんな荒れた硬い路面でしっかりグリップするのがMX34だ。異なる特徴を持つタイヤだが、多くのライダーがMX14を選ぶのは「スタートが一番重要」という考えが浸透しているからだ。
世界を目指す、2人のライダー

今年は2人の日本人ライダー、永澤匠真選手と阿部哲昇選手がダンロップのタイヤサポートを受けて挑戦した。永澤選手はGASGAS MC85(112ccボアアップ仕様)に乗り、Supermini1クラスとSupermini2クラスに出場。一方、阿部選手が出場したのはHusqvarna TC65での65cc(10-11)クラスと65cc(10-11)Limitedクラスだ。
両者ともに国内のキッズ・ジュニアクラスで他を圧倒する走りで優勝を重ねてきた実力のあるライダーで、2026年は2月から拠点を米国カリフォルニアへと移し、トレーニングを重ね、この舞台の決勝進出を掴み取った。

永澤匠真。永澤選手のロレッタリン挑戦は今回で3度目、3年前の初挑戦は総合10位だった

阿部哲昇。2026年に永澤選手とともに渡米し、トレーニングを積み、地方予選を勝ち抜いて決勝進出を果たした。今回が初めての挑戦、初出場となる
パンクにクラッチ故障…、アクシデントを乗り越え掴んだ9位入賞
8月3日はフリープラクティスと受付日だったため、決勝は8月4日から8日にかけての5日間行われた。朝の7時から19時まで、36クラスのレースが30分刻みで順に行われていく。その中で2人はどんな戦いを積み重ねていったのだろうか。

8月4日、決勝1日目は永澤のSupermini1ヒート1と、阿部の65cc(10-11)Limitedヒート1が行われた。レース前、永澤に話を聞くと、「MX34の方が走りやすいけど、MX14にするか迷っている」とタイヤチョイスに悩んでいた。レース前にコース外から路面を入念に確認し、チームと相談してMX14を装着。スターティンググリッドを見てもほとんどのライダーがMX14を履いていた。

永澤はスタートで良い反応を示したが、スタートゲートが跳ね返るアクシデントに見舞われ、出遅れ20番手あたりからの追い上げを強いられる。しかしその後10位までポジションを上げてフィニッシュ。レース後に黄旗区間でのルール違反の裁定を受け12位へと降格したが、10台以上を抜いて上位10位に入る実力の高さを初戦から示した。

一方、阿部もMX14を選択してレースに挑んだ。好スタートを決め8番手あたりで1周目を通過。さらに上位のライダーに肉薄する勢いも見せたが、2周目にクラッチが壊れてしまう。それでも阿部はマシンを降りず、最後まで走り切り17位でフィニッシュを果たした。

2日目の8月5日は、阿部の65cc(10-11)ヒート1と、永澤のSupermini2ヒート1が行われた。阿部はスタート直後にフロントが浮き、隣のマシンと接触して転倒。最後尾から追い上げの展開となる。そこから怒涛の追い上げを見せ、11位でチェッカーを受ける。

一方永澤はゲートピック順を決めるくじ引きで42台中39番を引き、外側から2番目のという厳しいグリッドを選択することとなる。そんな中、好スタートを決めて9番手あたりにつけたが、コースアウトやエンスト、転倒が重なり15位でゴール。
もっと上位にいける、もっと前に出れる……。そう思うようにいかないもどかしさを、永澤は大会序盤の2日間ずっと感じていたという。
「久しぶりにロレッタリン特有の路面を走って、大きなギャップに周りを気にしすぎてしまって、上手く走れていないです。ただ、3日目になってようやくコースにも慣れ、調子を取り戻してきたと思います」

そんな中、転機となったのは8月6日だ。この日、永澤はタイヤをMX34に変更する決断をした。自分が乗り慣れているタイヤで挑戦する。この選択が、あとのレースを大きく変えていくことになる。
大会3日目に行われたのは永澤のSupermini1ヒート2と、阿部の65cc(10-11)ヒート2。永澤はこのヒートで出だしから遅れを取り、序盤で転倒。レース後に話を聞くと、1周目の時点でタイヤがパンクしていたことが判明する。それでも永澤はマシンを止めず、じりじりと9番手あたりまで順位を戻す場面もあった。しかし、最後まで走り切ることはできず、悔しさの残るDNFとなった。

一方、阿部は好スタートから8〜10番手あたりにつけ、そのままペースを崩すことなく11位でフィニッシュ。上位10位目前に迫るまでに調子を上げてきた。

8月7日、大会4日目がロレッタリンの折り返しとなる。行われたのは永澤のSupermini2ヒート2、阿部の65cc(10-11)Limitedヒート3、そして永澤のSupermini1ヒート3だ。

朝7時スタートとなったSupermini2のヒート2、スタートで出遅れながらも追い上げる。1周目のフィニッシュ後にコースアウトする場面もあったが、すぐに立て直し10位まで追い上げた。
「朝一番のレースは路面が柔らかいので、ゲタ(MX14の愛称)の方がいいと思って選びました。ただ、17時ぐらいになると路面が硬くなってくるので、ゲタだと滑ってしまいます。そこで午後のヒートでタイヤを変えたら、だいぶ良くなりました。スタートに関しても、自分が慣れているMX34の方が出ることができたと思います」

一方、阿部はアドバイスを取り入れて反応良く前に飛び出す。上位につけるが、1周目に転倒して大きく順位を落とし、3周目にはメカニックエリアの前で再び転倒。37位、総合23位という悔しさの残る結果となった。

永澤はさらにSupermini1のヒート3にも出走。ヒート2の結果を受けたゲートピックは37番。外側から5番目のグリッドとなったが、抜群の反応で好スタートを切り、前を走るライダーとの差をレース終盤までじりじりと詰め続け、9位を獲得。Supermini1クラスは総合20位でレースを終えた。
「これまでの反省を糧に、今日はタイヤをMX34に変えて、フロントサスペンションを少し硬くして、リアの伸び側を締めました。セッティングを変えたおかげで、今までのレースの中で一番自分の走りができたと思います」

最終日となる8月8日は、阿部の65cc(10-11)ヒート3と、永澤のSupermini2ヒート3。2人はそれぞれの最終ヒートで、この一週間の集大成となる走りを見せる。阿部は好スタートを決めるが、1周目で転倒。
「1周目で転倒してしまいました。たぶん15位前後まで落ちたと思います。そこから12位まで追い上げたんですけど、大きなトリプルジャンプのあと、S字を終えたコーナーで轍に入って、また転んでしまって……。最後の1周は、10位が目の前に見えていたんですけど、追いつかずに11位でした」
2度の転倒を喫した阿部だったが、最後まで諦めずに11位でフィニッシュ、総合順位は9位と、目標としていた入賞ラインを見事クリアした。

一方の永澤は好スタートを決め、1周目には早くも5番手につけた。その後は追い上げきれず9位でフィニッシュとなるが、見事総合9位に入賞を果たした。
レースを終えた2人の胸の内には、それぞれの思いがあった。
「9位という結果は、正直嬉しくはないです。悔しいですし、もっと上に行けたと思っています。実力不足も感じましたが、大会の最後の方になってやっと自分の走りができるようになってきたので、それを1日目からできていればと悔しさが残ります。もっと最初から自分の走りができるように、練習あるのみですね」(阿部)
阿部が語る一方、永澤もレースを振り返る。
「最初の3周だけは、たとえその後ペースが落ちてもいいので、絶対に前に出るように全力で走る、ということをコーチやチームと話していて、実践をしていました。過去を振り返ると、今回のレースは楽しめましたし完走できてよかったですが、やっぱりトップの選手たちに絡んで走りたかったし、もっとタイムを上げていきたいです」(永澤)
来年もロレッタリンに挑戦したい。チャンピオンを獲得して、プロへ進みたい。永澤と阿部が掲げる夢への歩みは、まだ始まったばかりだ。
この2人を支えたダンロップのタイヤは、アメリカのみならず、国内最高峰の全日本モトクロス選手権でも多くのライダーが選んでいて、そこで得られるライダーたちの走りや手応えは、私たちの製品開発にも活かされている。ダンロップが自信を持って送るタイヤは、国内の取扱販売店やオンラインストアを通じて、どなたでも同じように手に取ることができる。永澤選手や阿部選手が世界の舞台で選んだのと同じ一本を、ぜひ手にとってみてほしい。











