街から郊外、高速道路
峠道で見た950の才能

 試乗の朝、ホテルに面した通りにずらっと並んだムルティストラーダ950。赤と白があり、白い車両にはパニアケースなどのツーリング向けオプションが装着されている。
 そのバイクが前輪の位置、角度も含めキッチリと揃えられて完璧な佇まいを見せる。免許証を見せるのと引き替えにキーをもらう。さあ、1日、しっかりと走りこもう。キーをイグニッションに差し込む。これは2010年以降のムルティストラーダでは無かったプリミティブな儀式になる。
 エンジンを掛ける前におさらいした。ムルティストラーダのキーコンセプト、それは4 Bikes in 1だ。アーバン(市街地)、ツーリング、スポーツ、そしてエンデューロ(ダート路)へとライディングモードを切り替えることで、あたかもバイクが変身するかのように走る場面にフィットする。
 ライディングモードがエンジン特性と電子制御アシストを変更する事は書いたが、それに加え電子制御サスペンション装備のモデルでは、減衰圧やイニシャルプリロードも、ライディングモードを切り替えた時に同時に変わる。つまり、シャーシとエンジンが一括で変わる。これぞ4 Bikes in 1の王道だ、と思っていた。
 だから、コンベンショナルなサスの1200やパイクスピーク、そしてこの950はその辺がどうなんだろうか、と期待と不安が入り交じる。
 前後170㎜あるサスペンションストロークは1200と同じだが、前輪が19インチ。この組み合わせはどうなんだろう。ドゥカティの開発者は「ハンドリングは甘ったるくない」と言っていた。その真意も気になるところ。結果的に価格は1200より低くなるが、価格ありきで造ったモデルではない、と感じたのはムルティストラーダワールドの深みだ。
 つまり、ムルティストラーダの魅力は一枚で4つの味が楽しめるピザではなく、それぞれの実力をしっかり楽しめることにある。それはこれまでも試乗で体験してきた。だからその基準に達しているの? というのが一番の関心事なわけです。

画像: 街から郊外、高速道路 峠道で見た950の才能

 今回、テストコースにオフロードはない、ということなので、その部分は想像するほかない。
 試乗コースが記された折りたたみの地図(これがカッコ良い)をポケットに入れ、市街地へと走り出す。まず選択したのはアーバンモード。左のスイッチボックスの上下キースイッチで選択し、ウインカーのキャンセルスイッチを押して決定。走行中でもアクセルを戻せばモードの変更ができる。 
 アクセルに対する反応はマイルド。そのエンジンの印象は軽快。1200が持つ色々な面で「圧」がない。そして振動も少ない。すごくスムーズに回るところも軽快な印象を加速させる。
 クラッチを低い回転で繋ぐ。2000回転から充分にスムーズな加速をしてくれる。これは市街地を静かに走りたい時、優れた性能だと思った。
 前輪17インチの1200と比べて、前輪19インチの950は、市街地速度から前輪の反応と追従性がよく、環状交差点(ランナバウト)を越える時もヒラヒラ感と安心感が同量あって身のこなしが軽い。この速度、日本でもよく使う領域なのでこれは嬉しい。
 そして乗り心地も良い。速度があがるとどうだろう、という思いはあるが、とにかくここまでのところ、電子制御こそ、ムルティストラーダのコアバリューと思っていた部分が崩れ始める。
 市街地から一般道へ。ライディングモードをツーリングにシフト。制限速度が100キロなので速度は高速道路のようなもの。アクセルを大きく開けて加速すると、タンクの下から迫力のある吸気音がする。それまでの圧の無さをひっくり返すような元気な音だ。加速感が2割増しになったような気分。この演出(変化)が実は気にいった。
 この速度を6速で流す時も含めパワー不足を痛感するような場面はない。150馬力(国内仕様で)を生み出す1200よりも、トルク、パワーが細いのは確かだ。しかし、逆にアクセルをしっかり開ける嬉しさのような感覚に心が満たされる。
 こんな道でも乗り心地はスムーズで無駄なピッチングもない。フラットな乗り心地だ。
 道は大きなS字を描きながら里山から山岳路へと高度を上げて行く。時折センターラインが無くなり、道幅がタイトになる。

クヤシイほどよく出来た950

 ムルティストラーダ950のブレーキシステムはとても扱いやすい。特にリアブレーキがしっかりとしたタッチと制動力を合わせ持ち、速度調整や上り、下りのタイトコーナーでもブレーキを軽く踏んだままでも使える。タンデムをする時に、このリアブレーキはライダーの味方だろう。無駄なピッチングを誘発しにくい。
 ムルティストラーダの1200が履いている前後17インチホイールには、フロントに120、リアに190というロードバイクでも太い部類のサイズを履いている。950は前輪こそ120サイズで同じだが、リアは170だ。タイヤは1200と同じピレリ製の同じブランドのタイヤを履いている。ペースを上げると、確かに前後17インチに比べれば、アンダーステア傾向だが、とてもバランスされたハンドリングなので、景色を見たり、カーブを曲がることを考えたり、ああ、バイクって楽しいって思ったり、視覚や音、嗅覚に風の触感のような情報を心が高回転で処理し始めているのが解る。これって、良いバイクじゃないと起こらない心と体の現象でもある。
 どれくらい山道を走っただろう。麓の集落の小径を走り、石畳の奥にあった教会とその前の広場。その広場に面した所にあるレストランでランチをとった。仕事で走っている業務感が融け出すバイクはこれまでもいろいろ体験してきたが、ムルティストラーダ950もそのひとつだ。 
 ランチ後、パニアのついたモデルでサスペンションをスポーツよりにセットした足で走り出した。想像したゴツゴツ感はなく、峠の下りのブレーキングでの姿勢変化が自然でとても乗りやすく感じた、というのが大きな違いだった。難しいことはしてない。前後ともスプリングのイニシャルプリロードをかけただけで、だ。
 パニアの中にカメラが入ったバッグを入れた程度だから、重さはたいしたことが無いけれど、午前中に走らせたオプション無しモデルと加速感、ハンドリングなど大きな差を感じなかったのはさすが。
 結論を言えば、ムルティストラーダ950はクヤシイほど良く出来ている。これは太鼓判を押すほかない。申し遅れましたが、私、ムルティストラーダ1200S(旧型ですがなにか)オーナーなので……。
 遠出をしよう。街から郊外へ。そして舗装路画切れても。と誘うのである。 

画像1: クヤシイほどよく出来た950

縦に細身なサイレンサーエンド。1200エンデューロ譲りの形状で、渡河性能も高いと言う機能的裏付けも。細身なため純正パニアケースの荷室にも浸食しないのが隠れた自慢。

画像2: クヤシイほどよく出来た950

電子制御スロットルを装備したエンジン。ツーリング、スポーツモード時は113馬力、アーバン、エンデューロモードを選択したときは75馬力に出力を調整する機能を持つ。

画像3: クヤシイほどよく出来た950

液晶モニターは1200と同仕様。イグニッションスイッチがタンクキャップ前にある。ミラーのアーム形状は1200エンデューロと同じ。

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