画像1: 詳報CRF450L「なんだコレは…今までに乗ったことのない、エンジンフィーリング。低速のヨンゴー感はクセになる」

先日、お届けしたばかりの釘村忠による、ライトインプレから、ようやく公道〜オフロードをしっかり2時間乗り込んでじっくりテイスティングできる機会を経た。和泉拓の一言目が印象的だ。「なんだコレは…今までにない感触…」和泉は、山ほど乗ってきたバイクの引き出しの中から、押さえ込まれたエンジンのフィーリングの例を思い出していた。

「まず、低速のトルクはまさしくヨンゴー。モトクロッサーのヨンゴーに乗ったことのある人なら、乗ってクラッチをつないだ瞬間にバイクに対して身構えると思う。そのくらいの押し出し感がある」

オフロードライダーが求めていたバイクは、たぶんモトクロッサーのヨンゴーではない。高回転のパワーどころか、開けることすらできないものだからだ。だから、この怒濤の低速を感じて少し不安に思った。でも、その心配は希有に終わった。

画像2: 詳報CRF450L「なんだコレは…今までに乗ったことのない、エンジンフィーリング。低速のヨンゴー感はクセになる」

和泉拓 仙台のモーターサイクルショップ「ストレンジ」代表。現在はエンデューロ、ハードエンデューロに取り組んでいるマルチライダー。「アスファルトダンサー」のtacとして知られる
釘村忠 全日本モトクロスのファクトリーチームを渡り歩いた、トップランカー。現在はエンデューロに参戦、2017年全日本チャンピオン。全日本を戦う愛車はCRF450RX。

気になるエンジンフィーリングは、決して「オールマイティ」ではない

なぜ、このマシンが世の中に出てきたのか。まずはそこから紐解きたい。

現在、北米のオフロードバイクシーンは、その遊び方が画一的ではなくなってきている。世界的にコンプライアンスが問われる中で、自動車に帯する規制の強くない北米においても、オフロードバイクの「ナンバー取得」が必須になってきた。そのことが、ナンバー付きのトレイルバイクカルチャーを形成しはじめていて、100km以上の極上のトレイルを走るような遊びを生んでいる。

中でも面白いのは、日本でもこの20年以上にわたって神格化されてきた「オープンエリア」だけではなくなってきていることだ。彼らは「オフロードパーク」というフィールドを遊びはじめている。オープンエリアのようなだだっ広い場所ではないが、東京ドーム10個分くらいの敷地でいろんなアクティビティを楽しめるようなところ。そこでは、家族がATVで冒険に興じ、大人はオフロードバイクでアウトドアライフに興じる。ただ「ダートをかっ飛ばしたい!」という層が、段々「アウトドアをミックスさせてオフロードバイクを楽しみたい」という層に変化してきているのだ。

もちろん、今までのオープンエリアで遊ぶ層も、バハに出るような層も、GNCCを楽しむ層も、とても厚い。そこで、ホンダはCRF450R、CRF450RX、CRF450X、CRF450L(あるいはXR650Lもラインナップされている)と450だけで4車種も選べる選択肢を作った。

画像1: 気になるエンジンフィーリングは、決して「オールマイティ」ではない

だから、このバイクに求められるのは、モトクロッサーのパワーではない。開発責任者の内山氏の言葉を借りるなら「CRF450Xと同等。でも、ナンバーもついている」もの。おおよそ450ccのありあまるパワーを、トレイルに落とし込むことが目的だ。

画像2: 気になるエンジンフィーリングは、決して「オールマイティ」ではない

だから、「扱えないほどの大パワー」では困る。

冒頭の和泉の発言には続きがある。

「低速に思い切り特性を振る、といっても限界がある。だから、パワーを押さえ込もうとするなら電気的に高回転をカットするのが普通だと思う。そうなると、まだまだ回りそうなところを強制的にリミッターでとめられるので、感触はよくないんだよね。シフトアップを迫られるし、頭打ち感も強い。
でも、CRF450Lは高回転まで回る。高回転の伸び感があるんだよ。ただ、そこにパワーは乗ってないから、すごく不思議な感覚だ。回るのは回る、レブリミットがない感じ。誰にでも全開にできるくらい、高回転域は穏やかだよ」と。編集部稲垣も、その言葉を信じられずに乗ってみたが、まさにおっしゃるとおり。サンデーレースで、真ん中より下で走るのが定位置の稲垣ですら、アクセルがかちっとなるところまで回せる。もしCRF450Rだったら? 半分も回せないはずだ。

釘村:「ストレートの長いフィールドで走るには、上級者では物足りなさを感じてしまう可能性がある。でも、狭いトレールを低中速で走るには、すごく乗りやすいですよ。CRF250Lと通じるところがあるけど、低中速はレーサーっぽい出方をします。レーサーだとパワースライドしてまわっていくようなところを、しっかりグリップさせて走るようなイメージですね」

和泉:「適当に開けても、滑らないのでミスも少なく楽しめるはず。ダートを乗り始めた人でも、しっかり楽しめるだけの懐の深さがあるよね」

釘村:「レースじゃない使い方をするのが合ってる思う。安心して乗れる車体ですし」

和泉:「CRF150Rのフレームに、XRのエンジン載せるような改造が流行ったことがあったと思うけど、ああいうコンセプトに通じると思う。このバイクを夢のマシンだと捉える層は多いはず」

そう。これはレースマシンではないのだ。

画像3: 気になるエンジンフィーリングは、決して「オールマイティ」ではない

和泉:「どのくらい低速が粘って扱いやすいかというとね。5速で25km/hでエンストしないくらい。昔、WR400Fをモタード化したことがあって、圧縮比もあげていたんだけど、だいたい5速で90km/hくらいまでしか粘らないんだよ。CRF450Lは圧縮比を下げているとはいえ、12:1だから相当なハイコンプエンジンだと言える。なのにこんなに粘るのは、どういう魔法を使っているのか想像できない。でも、XRのような粘りとは違う。あくまでCRFのフィーリング」

釘村:「クラッチをつなげた瞬間が、一番美味しいところ。このバイクを走らせるには、回してはダメ。だいたい、3000〜5000rpmくらいの幅で、アクセル開度は20〜30%くらい」

和泉:「そのあたりが、ツキもいいよね。で、この低速がもりもりで扱いづらいかというと、ソレも違う。今日は雨が降っていたし、CRF450Rだったらものすごく慎重にスロットルを操作しなくちゃいけないけど、気にする必要すらないことにビックリした。シビアなコントロールは必要ないんだよね」

釘村:「モトクロッサーの450は僕らですら、すごく気をつかってアクセルを開けます。その必要が無いのはいいですね」

あらためて考えてみると、環境適応させる目的でパワーを押さえ込むこの手法を使うとなると、450ならではの低速を活かす方向がマッチしている。そういう意味では、CRF250RをLにするようなプロダクトは、成り立たないはずだ。「450なのは、450である理由があるのだ」と感じる。

釘村は、日高2デイズエンデューロにCRF250Lで参戦しているが、こんな感想も得た。

釘村:「CRF250Lは、極低速で一瞬だけおいしいトルクがあって、そこでいかにグリップさせて車速を乗せていくかが勝負どころ。CRF450Lも、これに似ているところがあるんですが、そのおいしい回転域が格段に広い」

レーサーに乗っていると、CRF450Lはヨンゴーだという先入観をもって観てしまうところがある。でも、二人の話を聞いていると、これまでの既存の排気量枠で考える必要はないのではないだろうかと思えてきた。たとえば、他社だがKTMのフリーライド350。あれも、350SX-Fのモトクロッサーのエンジンを使っているけど、まったく高回転を無視したもので、排気量の枠で考えては面白さを見いだしづらい。250と450のどちらかで選ぶ、のではなくCRF450Lそのものの「新ジャンル」を選ぶという考え方のほうがすっきりするのではないか。

「Lのパーツを、全日本エンデューロに流用できないだろうか」釘村

オフロードバイクは、ある程度フレームのねじれ剛性を下げてあげたほうが、曲がりやすい傾向にある。これは釘村のようなトップレーサーでも同じだ。

釘村は、全日本仕様のCRF450RXはエンジンハンガーのボルトを1本抜いて、剛性を落として乗っているが、CRF450Rのフレームをベースとしながら剛性をトレールに最適化したCRF450Lの車体をどう感じただろうか。

釘村:「しっかりしているけど、倒しやすいなと思いました。全体のバランスはすごくいい。もう少しコースを走ってみれば、曲がりやすさをみてみたいけど、ファーストインプレッションはすごく好印象でしたね。たとえばLの車体にRXのエンジンを載せたとしても、いいかしれない。Rより、しなやかな印象を受けました。あれなら、ボルトを抜かなくてもいいかな、と思います。

僕としては、トルクのあるエンジンに仕上げたいので、CRF450RXにLのパーツを流用できないかなと技術スタッフに聞いてみたくらいです。クランクとか、ピストンとか。

乗ってみてリア下がりだったのですが、これは公道での安定感を出すためのもののようですね」

和泉:「ハンドリングで言うと、まるで保安部品がついていないかのような感触だったね。ハーネスのとりまわしや、設計がいいんだと思う」

釘村:「CRF250Lは、ステーだけで1kgくらいあるので、かなり重さを感じるんです」

和泉:「Rのハンドリングをトレールで実現したかったんだと思う。こだわりをものすごく感じた部分だね。全体的にやっつけ感はまったくもって見えない。当たり前だけど、市販車クオリティで仕立てられてることがよくわかる。外車のエンデューロレーサーについてる操作系とは、まったく違う」

画像: 「Lのパーツを、全日本エンデューロに流用できないだろうか」釘村

キルスイッチは、モトクロスのファクトリーなどでみられる「誤操作」をふせぐカバーがついたタイプ。妥協を許さぬ専用設計が、随所に見られるのだ。

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