2015年、渡辺学がJNCCのタイトルを手にし、2016年に小池田猛がGNCCから帰国。小池田凱旋後、小池田の圧倒さは印象深かった。特に今年のスタートダッシュは4連勝。もはや小池田3連覇に疑いの余地など挟めなかった。ところが折り返しの第5戦ジョニエルGで、小池田が負傷。ポイントを落としてからというものの、苦戦が続く。ハスクバーナからKTMへシーズン中にスイッチしたことも苦しい要因だったかもしれない。

画像1: JNCC最終戦、薄い勝ち目を奪いにいった渡辺学

JNCC 最終戦AAGP
日時:2018年11月4日
会場:長野県爺ヶ岳スキー場

それでも、小池田は盤石だった

むかえたAAGP、ランキング2番手の渡辺学が1位、小池田が3位というのが渡辺逆転の条件だ。そもそも、盤石な小池田が渡辺に譲ろうとも、3位まで落とすことは考えづらい。さらに、GNCCからくるゲストは、1位が堅くそうなると渡辺2位、小池田5位が条件だ。普段どおりこなせば、小池田のチャンピオンは堅い。事前情報では、エントリーリストに成田亮の名前もあり、熱田孝高、能塚智寛らモトクロスのスーパースターが殴り込み(成田は参戦を見送っている)、さらにレースは荒れることが予想された。

画像: それでも、小池田は盤石だった

だから、渡辺は糸魚川で勝利した後も「チャンピオン? いや、意識してないよ。遠いでしょ」とさらっとインタビューを躱している。渡辺は、昔からこういう時に「意気込んでいる姿勢」をみせないクールな態度を取る。今回も、意識せずとも事前に爺ヶ岳を乗り込む機会を作ったりと入念な準備を怠らなかったようだ。

レースの2週間前、すでにガレクライムを思いきり攻略している。

この、隠れた渡辺の勝利への意欲に、スポンサーやメーカー、周囲の人間が呼応した。鈴木健二も、渡辺のタイトルに貢献した一人だった。「学が1位だったら、俺が割って入ればタイトルをとれるから」チーム名は違えどヤマハ同志、小池田3連覇阻止は団体戦の様相を呈していた。

小池田包囲網

画像1: 小池田包囲網

胸が熱くなるほどの豪華メンバーが横並びしたCOMP GPのスタート。渡辺・鈴木はイン側につけ、小池田は中間くらいに陣取った。JNCCのスタートは大量のライダーがなだれ込むこともあって、変則的な1コーナーだ。モトクロスライダーが最初に戸惑うのが、エンジン停止からのスタート方式。すでに様々な手法が確立されていて、セルより慣れればキックのほうが速いと言われる。もっとも有利なのは、かかりのいい2スト250勢だ。GNCCやJNCCでしか使用されないこのスタートに車両メーカーがあわせるはずもなく、時代は4ストセルのみのマシンへ流れているところが面白い。

画像2: 小池田包囲網

海外メーカーの2ストは、特にスタートに利があり、いまはBetaの齋藤祐太朗や石戸谷蓮がホールショットを奪うことが多いものの、この日の渡辺はスタートから勢いが違う齋藤を尻目にインを締め、トップで1コーナーを立ち上がった。小池田がぴったりつけ、その背後に石戸谷が追いすがる。鈴木は第二グループからごぼう抜きを試みる。モトクロスライダー達や、GNCCからのゲスト、クレイグ・デロングは、出遅れてしまった。

オープニング間もなくトップ集団は、渡辺・小池田・鈴木に絞られ、これを斉木達也が僅差で追う形に。まさに小池田包囲網のできあがりだ。

後先を考えない鈴木の猛追

画像1: 後先を考えない鈴木の猛追

2周目には、小池田が先頭に出るが、3周目には渡辺がトップを奪い返す。しかし、このままでは渡辺の手にタイトルは転がり込んでこない。ここで重要になるのは、鈴木だ。間に割って入り、2位でフィニッシュすることが重要だった。渡辺は「あのままいくと、マズイとは思ってました。でも、健二さんがついてきてるのもわかっていたし、デロングも上がってくるはずだと」と振り返る。

画像2: 後先を考えない鈴木の猛追

当の鈴木は「スタートも出れたし、3人で絡んで走れたので面白かったでしょう? 猛は、今日はガレが遅いのがわかっていたから、ガレで仕留めました」と言う。「俺はダンロップのAT81EX、猛はAT81だったと思うので(※EXはガミータイヤでガレに強い)、タイヤの差もあったでしょうね」と。鈴木が今回チョイスしたのはYZ125Xだが、開幕戦でもやはりAT81EXを使って全開で走り、ブロックをほとんど飛ばしてしまっている。鈴木も、それを当然知っていてあえてAT81EXを選んできている。いわば、捨て身の2番手アタックを成功させたのだ。

画像: レース後の鈴木のタイヤ

レース後の鈴木のタイヤ

爺ヶ岳は、この2年ほどだいぶイージーな設定になっていたことも影響しているかもしれない。翻って、最終戦AAGPではガレクライムのエスケープは原則なし、ウッズもレベルが高く、一つのミスが大きくタイムを食ってしまうコースだった。これには、クレイグ・デロングもはまってしまっていたほど。「これぞ爺ヶ岳ですよね」鈴木は言う。ガレに合わせたセットアップが効をそうした。

画像3: 後先を考えない鈴木の猛追

かくして2番手へ上がった鈴木、しかし小池田は負傷が響いたかこのあとペースを大きく落とし、リタイアを喫してしまう。王者が、陥落した。

デロングの真の力

トップを引く渡辺は、常にチーム員から小池田との差を、ピットボードで知らされていた。「この爺ヶ岳は1回の転倒でバイクが壊れる可能性もあるから、ある程度のおさえも必要。小池田くんとの差が縮まらないように、注意深く走っていました」と渡辺は言う。「ほんとは1時間で給油するつもりだったんだけど、だいぶガソリンも残っていて、満タンにして重くするのも不利だと判断して、2時間にしようと。途中にいるクルーにそれを伝えて。今回は、家族だけではなくてチーム員たちがきていたので、いつもより体制は楽だったんです。うまくいきましたね、すべてが」

画像1: デロングの真の力

しかし、小池田が陥落して終わりではなかった。デロングだ。

デロングは、サスペンションやムースなどを持ち込み、新車のハスクバーナFC350(モトクロッサー)に組み付けて万全の体制を期していたのに、序盤コースに翻弄されてしまっていた。特にガレはきつく、「19インチのタイヤではダメだと思って、ピットに18インチを用意してもらった。結局使わなかったけど」と。だが、持ち前の能力はさすがと言うべきか、中盤になって渡辺より1分弱速いタイムでトップ陣をごぼう抜きしはじめた。

2番手鈴木もウッズで抜かれ「どんなものかと付いていこうとしたんですが、とてもついていけるスピードではなかった」とコメントする。そもそも鈴木は、この時点でタイヤのブロックをほとんど失っていたのだが。

画像2: デロングの真の力

デロングの猛追は、渡辺を焦らせるに十分だった。渡辺は「せっかくなので、負けたくない気持ちが芽生えた」と、タイトル争いに関係なく逃げ切り体勢へと移行。気を振り絞って周回する渡辺をデロングは逃がしてしまい、みごとに渡辺はチャンピオン&優勝を手にした。

画像3: デロングの真の力
画像: 1年間、おつかれさまでした!

1年間、おつかれさまでした!

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