2013年、満を持してダカールラリーの舞台に戻ってきたホンダ。宿敵KTMとの優勝争いに勝ち星をつけられず、6年が経過した。まもなく1月6日にスタートする19年のダカールは、ダカールラリー史上、特殊なステージで、走行距離や期間は短く、しかし南米では類を見ないサンドの多さで実にルートの70%にいたると言う。7年目にして、今度こそ勝利を狙いにいくTeam HRCに聞いた。

画像: モロッコラリー2018のTeam HRC

モロッコラリー2018のTeam HRC

短いが、これは難しくタフなラリーになる

画像: 短いが、これは難しくタフなラリーになる

今回インタビューにお答えいただいたのは、本田太一チーム代表。これまでもプロジェクトリーダーとしてHRCをみてきた、現ダカールプロジェクトの番人である。今年のダカールは、前述したとおり例年とは異なるコンパクトなラリーとなるのだが、その点についてどう考えているのだろうか。

「当初は、19年のダカールラリーは3ヶ国くらいの規模になると言われていました。僕らがペルー一国になると知ったのは、まさしくそのペルーを走るインカラリーに参戦している最中でしたね。その時、ちょうど参戦していたこともあって、ペルーで1ヶ国になったことでかなり難しいラリーになったぞ、と思いました。

何故かというと、インカラリーもそうだったのですが、ナビゲーションがすごく難しいのです。砂丘の規模が他の国と違うので、3次元的に考えないといけないのですが、これが難しい。大抵、砂丘のルートは前を走ったライダーのタイヤのあとを追えばいいのですが、スタート順が早いトップクラスのライダーのタイヤのあとすら信用できないほど、みんなが間違えていました」と本田氏。ルートも5000kmに短縮されているものの、それだけに濃密になりそうだ。

まだ未確定が多いものの、ルール変更の可能性もあると言う。

通常ダカールラリーは、中間日にレストデイを設けていて、ライダーはゆっくりできるし、マシンはフルメンテナンスができる。ところが「今回は、レストデイの次の日のスタートが明らかにレストデイのキャンプ地から遠く離れすぎていて、これをそのまま解釈するならばレストデイをスタート地点への移動日にあてる必要があるんですよね」と。ルート走行距離が減ったとて、メンテナンスできる機会が絞られれば、より高度なマシンマネージメントが求められるのは必然。

画像: 19のダカールマシンとして仕立てられたCRF450RALLY。12月の取材に間に合うだけあって、本番車ではない。

19のダカールマシンとして仕立てられたCRF450RALLY。12月の取材に間に合うだけあって、本番車ではない。

「キャンプ地は3カ所しかないので、レースマネジメント的には余裕がでてきますね」と本田氏。だが、例年より「楽」できる箇所は、本当に少なそうだ。

Team HRCは体制を変更した

この2019年のTeam HRCは、総勢34名のプロジェクト。以前は、各々の役割をこなしながらダカールキャラバンに帯同して大移動を繰り返していたが、2019年はロジスティクス専門の人員を設定することで各々がレースに集中できるようになったという。

画像: Team HRCは体制を変更した

2018年のEICMAで発表されたメンバーは、ホアン・バレダ、パウロ・ゴンサルヴェス、ケビン・ベナバイズ、リッキー・ブラベック、そして新規に若いチリ人ライダーのイグナシオ・コルネオが参入。昨年、2位でダカールをフィニッシュしたケビンは、2018年を負傷からの回復につとめたがダカールへの準備は万端だとのこと。

「年によって、ウォーターボーイなど役割を決めていたりもしますが、今年は決めていません。スタートして徐々に順位が固まってきてから、序盤でフォーメーションを決めていく」ということのようだが、現ダカールライダー中で随一との評価を得ているバレダ、そして昨年2位につけた南米ライダーのベナバイズ、そしてベテランのパウロに大きな期待がかかるのは間違いの無いところだろう。本田氏は「新人と言えど、地元でサンドに強いコルネオが飛び出す可能性も十分にあると思っています」とコメント。

ルーベン・ファリア、ヘルダー・ロドリゲスがHRCに参画

体制に関して最も大きな注目点はこの二人だ。ルーベン・ファリア、ヘルダー・ロドリゲス。ヘルダーに関してはHRCでライダーを努めていた時期もあったのだが、この二人が今回ライダーマネジメントとして起用された。

画像: ルーベン・ファリア、ヘルダー・ロドリゲスがHRCに参画

本田氏は「すでにいろんな情報やノウハウを二人から得ています。たとえば、彼らはベテランならではロードブックの見方をします。たとえば500m先で曲がるってコマ図があれば、彼らは5kmは前からロードブックを把握していて、500mではなく5000mとしてもとらえて曲がり角を逃さないようにしている。極端に言うと、そういうことですね。さらに、エルダーは、チームを渡り歩いているので、多様性に呼応できます。ファリアは長年マルク・コマのウォーターボーイをしていて、いわば必勝の人間を間近でみてきた人間です」と二人を評価する。特に、勝てるはずのレースを逃し続けたTeam HRCにとって“勝ちパターン”を知っているファリアの加入は、もしかすると決定打になる可能性も秘めている。

かつて、本田氏は優先順位を「マシン>ライダー>運営」と考えていたそうだ。だが、今になって「運営>ライダー>マシン」と考えている。運営も、ライダーも、現場で修正することはできないからだ。マシンだけは、現場でも調整・修正が効くからだと、言う。

6戦で突き詰めた19ダカール仕様

ラリーチームは、FIMのラリーを転戦してダカール以外のシーズンを過ごすわけだが、今季HRCが参戦したのは全部で6戦。3月のアブダビ、4月のメルズーガ、8月のアタカマラリー、ルタ40、9月のインカラリーに10月モロッコラリー。前述したとおり、このスケジュールで9月になってようやく19ダカールの方向性が見えてきたわけで、情報戦はとても重要だ。

画像: 6戦で突き詰めた19ダカール仕様

「エンジンは、パワーというよりもサンドにおける保護観点から、ECUを中心にセッティングしました。足回りに関しては砂丘を多く走ることから、足回りにかかる負担は必然的に大きくなってきますから、熱量問題なども加味しながら内部構造の見直しまでおこなっています。たとえば、リアクッションに関して言えば単に強くしてしまうと乗り心地を損ねてしまうので、サンドとは言っても乗り心地を両立させるようにしています」と本田氏は言う。「ダカールで求められるサスペンションは難しくて、フリクションはできる限り低くなければ、ガレなどで疲れてしまいますし、かといってGが大きくかかるようなシーンも多く、さらにロングディスタンスでの耐久性も求められます。とてもレンジが広いんですね」と。

勝つことに集中する。

ライバルKTMについてはどうだろうか。彼らは18ダカールからマシンをフルモデルチェンジしてきている。それまでマシンパワーでは優位性を誇っていたCRF450RALLYと、ほぼ同等であると言われているが「ライダー達もトップスピードは同じくらいでるようになっていると評価しています。ハンドリングなんかもいいようです。ただ、これまでKTMはメンテナンスが異様に早かったんですよね、僕らよりだいぶ先にいつも終えてしまっていたのが、今年他のラリーで見ていると遅くなっている。マシンがリニューアルして、パワーや特性を得たかわりに構成が複雑になったのではないかと推察しています」と。

「今までも、もちろん勝つためにやってきたのですが、どこか細かいこところに不安がのこっているようなイメージでした。今年は、どこをとっても不安がない」と本田氏は言う。「今年は勝つための準備をしっかりやってきました、なんとなくの自信ではなく、しっかりした自信をもって南米へ向かえます。ぜひ日本でも、応援お願いいたします」と。

Off1.jpでは2019年のダカール情報もお届けしていく予定。ぜひお楽しみに。

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