ダカール・ラリーステージ2。順調にペースを刻んでいた藤原慎也を突如襲ったのは、砂煙の向こうに潜んでいた「10メートルの崖」だった。本人が「人生最大のノールック大ジャンプ」と語る戦慄のクラッシュ。空中で「終わった」と確信した絶体絶命の状況から、いかにしてゴールまで辿り着いたのか。顔面強打による視覚障害と闘いながら走り抜いた、壮絶な一日

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藤原慎也ダカール速報 ステージ2 “人生最大のノールックジャンプ” 藤原慎也が語る10m落下の悪夢と奇跡の生還

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画像: 藤原慎也のダカール・レポート Vol.2 「人生最大のノールック大ジャンプ」からの生還

好調な滑り出しと、枯れ沢の罠

「レントゲン撮ってもらいましたけど、異常なしでした。よかった……」
ゴール後のヤンブーからアル・ウラへ移動したビバーク。電話口の藤原の声は、安堵と疲労、そして興奮が入り混じっていた。
ステージ2は、ヤンブーから北上し、古代遺跡の街アル・ウラを目指す総距離500km超の行程。前半は非常に好調だった。204km地点の給油ポイントまでは、後続を引き離し、本人曰く「ハイスピードなツーリング気分」で走れていたという。しかし、ダカールの魔物はその先に潜んでいた。

画像1: 好調な滑り出しと、枯れ沢の罠

250km地点付近、複雑なナビゲーションが要求される枯れ沢セクション。
「分岐が何箇所もあって、どれが正解かわからない。一度は間違えたルートに入りかけましたが、すぐに気づいて戻れました。そこで迷っていた他のライダーをパスして、岩場のハードエンデューロセクションみたいな場所を抜けてオンコースに戻ったんです」
ここはトライアルライダーの真骨頂。難所を冷静なナビゲーションとテクニックでクリアし、再びハイスピードエリアへ。270〜280km地点、時速120〜130kmで広大な大地を疾走していた時、ロードブックに「ダブルコーション(危険度2)」のマークが現れた。

画像2: 好調な滑り出しと、枯れ沢の罠

空中で確信した「終わり」と、トライアルの本能

「今日のダブルコーションは、なんか『え、これで?』っていうレベルのものが多かったんです。ちょっとした盛り土みたいな」
藤原は念のため速度を時速20km程度まで落とし、目の前の高さ1mほどの土手を越えた。その先には、また同じような大地が続いている——そう見えた。
「土手を越えたら、まさかの、その先が10メートル以上の砂の崖だったんです」
本来なら土手の斜面を舐めるように下るべき場所。しかし、視界の錯覚により、藤原はその先も平地だと信じ込んでアクセルを開けてしまった。結果、時速20kmとはいえ、バイクは人生最大のノールック大ジャンプを決めて宙を舞った。

「空中で『あ、これ終わった』と確信しました。10メートル下の地面に向けて落下していく間、『これはヤバイ』って冷静に思ってましたから」

画像: 空中で確信した「終わり」と、トライアルの本能

生死を分けたのは、長年培ったトライアルの技術と本能だったのかもしれない。
「トライアルみたいに後輪から着地できたのがよかったんでしょうね。もしかしたら勝手に何か姿勢を作っていたのかも、とも思います。もし前転していたら、間違いなく大怪我じゃ済まなかった」
ドスンという衝撃と共に奇跡的に着地。反動で顔面をハンドルバーか計器類に強打し、そのまま横倒しに転倒した。

消えた視界、片目で挑んだ残り100km

後ろから来たライダーに声をかけられ、我に返った藤原。
「大丈夫だ、先に行ってくれ」と告げ、再びバイクに跨ったが、異変はすぐに現れた。
「両目を開けると、視界がクロスして前が見えないんです。寄り目になったみたいな状態で、距離感が全くつかめない」
強烈な打撲による一時的な視覚障害。片目をつぶればなんとか見える。藤原は片目で距離感のつかめない砂漠を見つめ、残りの100km以上を走り切ることを決意した。
その後も不運は続いた。視界不良のまま入った砂丘エリアで、小さな穴に気づけずフロントから突っ込むアクシデントも発生。それでも、藤原は総合41位(ステージ順位43位)、ラリー2クラス総合28位でフィニッシュラインに辿り着いた。

画像1: 消えた視界、片目で挑んだ残り100km
画像2: 消えた視界、片目で挑んだ残り100km

二輪カテゴリー全体では、プロローグ〜ステージ1で首位を維持したエドガー・カネットが同じKTMの王者ダニエル・サンダースにパスされることに。サンダースは不利な先頭にもかかわらずリードを拡げて、昨年同様にナビゲーション・スピードの両方を併せ持つ強さを見せつける結果に。

明日のステージ3は、アル・ウラからアル・ウラへ戻るループルート。そして明後日からは、サポートを受けられない「マラソンステージ」が控えている。
「明日はもうちょっとスピード落とします。まだ2日目なんで」
そう語る藤原だが、視力も回復傾向にあり、マシンへのダメージも軽微。日本のプライベーターの冒険は、薄氷を踏むような緊張感の中で続いていく。

■ダカール・ラリー2026 リザルト(ステージ2終了時点)

Overall Ranking(総合順位)

1.D. SANDERS (KTM)
2.E. CANET (KTM) +0:30
3.R. BRABEC (HONDA) +2:18
41. S. FUJIWARA (HONDA)

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