全日本ハードエンデューロ選手権G-NET。今年は全5戦が予定されているこの大会の開幕戦が、奈良トライアルマウンテンで開催された。壁のように立ちはだかる平城京ヒル、一度ハマったらヘルプなしでは決して抜け出せない奈良漬、巨大な岩がゴロゴロするロックセクション…2年連続でG-NETの開幕戦に選ばれたCGC奈良トラは、やはり期待を裏切らない話題の多さで僕らを歓待してくれたのだった。

鈴木健二を襲った悲劇…

1周目に比べ、2周目に入ると周回遅れのゲロゲロクラスのライダーが多数おり、それを抜いて行かなければいけないため、通常であればタイムを落とす。ロッシもタイスケも1周目に比べて3〜4分タイムを落としていた中、鈴木健二だけは20秒ほどタイムを縮めて来ていた。レース前日もヤマハの試乗会の対応などで入念な下見ができない鈴木に、よく見られる傾向だ。

3周目の吉野川で鈴木は前を走るタイスケに追いつきそうなペースで順調に走っていた。ところが、ここで予期せぬトラブルが鈴木を襲った。セルボタンのヒューズがトンだのだ。さすがベテランの鈴木はこの原因を咄嗟に察知。トラブルが起きたのがパドック目の前の吉野川だったことも幸いし、最小限のタイムロスでこのトラブルを解決するも、ここで20分近く消費してしまう。

こちらが鈴木健二の秘密兵器「タンデムステップ」。YZ250FXは本来1人乗りのレース用マシンのため、タンデムステップはついていないのだが、それにセロー250のものを強引に装着。本来のステップにつま先を、タンデムステップにかかとを乗せることによってヒルクライムなどに有効な超リア荷重を実現できるという。

レース前、タイスケとアヤトはこのバックステップを見て「かっこ悪い!」と大喜び。対して「いやいや、でもすごい良いんだって!」と力説する鈴木。実際にレースでも使用が目撃されており、ヒューズトラブルさえなければ優勝もあり得たのではないか。次戦、日野ハードエンデューロでタイスケおよびアヤトの車両にタンデムステップがついていないか、要注目だ。