KTMの「SX」シリーズと「SX-F」シリーズが2023年モデルでフルモデルチェンジ。KTM/ハスクバーナ/GASGASの3メーカーによる2023年モデルの試乗会に参加し、「SX-F」シリーズを試乗。世界最新の250モトクロッサーの現在に迫ります
画像: 2023MY KTM250SX-F/Husqvarna FC250 辻健二郎インプレッション youtu.be

2023MY KTM250SX-F/Husqvarna FC250 辻健二郎インプレッション

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※このインプレッションはOff1.jpオリジナルのインプレッションムービーと連動しています。ぜひお楽しみください!!

試乗インプレッションをお願いしたのは、元全日本モトクロス選手権ファクトリーライダーであり、現在はモトクロスウエアブランド「seven」の正規取扱店「2G MOTO SHOP」を運営する辻健二郎さん。試乗会は「ワイルドクロスパークGAIA」で行われました。

画像1: 「高回転型エンジンに、新世代の乗り味」2023 KTM 250SX-F試乗インプレッション ※ムービー連動
画像2: 「高回転型エンジンに、新世代の乗り味」2023 KTM 250SX-F試乗インプレッション ※ムービー連動
画像3: 「高回転型エンジンに、新世代の乗り味」2023 KTM 250SX-F試乗インプレッション ※ムービー連動

高回転域を重視したエンジン

画像: 高回転域を重視したエンジン

「エンジンのピークパワーは47hp/14,000rpm。ボアは78mmから81mm、ストロークは52.3mmから48.5mmと元々他メーカーと比べてショートストロークでしたが、さらに前モデルよりもショートにすることでさらに高回転寄りのエンジンになっています。また旧モデルより高圧縮になっていてレスポンスを高めた仕様に。実際に乗ってみても、低回転/低速ゾーンではエンジンのツキや力(レスポンス、トルク)がもの足らず、ギアを落としたりクラッチを当てたくなりましたが、高回転域を引き出すように走行してみると、回転上昇がスムーズで、ストレスなくエンジンをコントロールできるようになりました。

また、以前からKTMのマシンを見て感じていた事なのですが、回転上昇がやや緩く(回転上昇のカーブが寝ている)みえるのに加速していることがありました。今回のコースでも、クイックに曲がった先に加速しながらジャンプを飛ぶセクションがあり、同じような状況に遭遇。感覚としては『あれ? この回転でこんなに進む?』という加速感で、コレコレ! と思いましたね。サスにも余力を残したかたちで素早く反応してくれるし、このマジックのような加速感はKTM 250SX-Fが持つ大きな特徴だと思います。

昨今の4ストロークはレブリミットで頭打ちするようなところがなくどこまでも伸びていくようなフィーリングがありますが、今作のKTMが最も伸びていくかもしれないと感じました。ギア上げたいなってタイミングで引っ張ったままでも車速が伸びていくような、バイクを押し出してくれる感覚がKTMにはありました。これは特にスピードが乗ってきた時に感じました」

新設計のフレームは「現代のライディングに合わせて進化している」

画像1: 新設計のフレームは「現代のライディングに合わせて進化している」
画像2: 新設計のフレームは「現代のライディングに合わせて進化している」

「車体は鉄フレームということで、もっとしなりがあって接地感に粘りがあるのかなと思っていました。しかし、予想よりもパリッとしていて、ヨレが少ないなと感じました。一番よくわかったのは、コーナーの立ち上がり後。短い距離でしっかりと加速して次のジャンプを飛んでいこうと体重をかけた時に、ヨレることなくバイクが前に押される感じがありました。また、新設計のフレームは縦方向とねじれ方向の屈曲を計算して作られています。車体の剛性が高くなったことにより、マシンのしなりによるエネルギーの分散が軽減され、乗車した時にマシンのセンターを捉えやすく感じました。

国内のマシンに乗りなれている自分の感覚としては、低回転での力がもう少しあれば路面を捉えやすいという印象を受けていました。しかし、フレームの素材から生まれる粘るようなしなりと、ピボットの見直しによるトラクションの良さが想像で、固くて滑りやすいラインや、砂でグリップしにくい路面でもしっかりと加速できました」

今回試乗を行ったKTM、ハスクバーナ、GASGASの中で一番シート高が高かったのがKTMでした。ハスクバーナと比べると19mm高く、スピードを乗せた走行やジャンプの着地時に余裕が生まれる設計に。車高の高さや車格の大きさの影響か、当初辻さんはコーナーで曲がりにくさを感じていました。しかし、乗り込むことで次第にその特徴を把握することができたとのこと。これには、現代のライディングに合わせた進化が現れているといいます。

画像3: 新設計のフレームは「現代のライディングに合わせて進化している」

「何回か乗ったんですけど、車高のせいかなかなかしっくりくる乗り味を掴めなくて、こんなはずないよなと思いながら走ってました。サスペンションのセッティングもあるとは思いますが、ややリアが高くフロントと平行な感じがあるせいか、キャスターが立っているような印象を受けました。ドカッと座りフロント周りを沈めてマシンを傾けて曲がるというよりは、ステップに立ったままマシンをホールドしながら旋回していくほうが素直にマシンが曲がってくれました。この乗り方を掴むまではフロントタイヤが自分の体より遠いような感覚を受けていたのですが、乗り方を掴んだ後は、こんなにコーナーをスムーズに曲がれたっけと、嫌な感じがなくなりました。

この乗り方は、昨今のプロモトクロスライダーを参考にしました。この前の全日本モトクロス選手権にスポット参戦していた下田丈選手の走りを見ても、立っている時間が長いですよね。あと、AMAで解説の人がよく言っているのは『今のライダーはコーナーで足を出すタイミングが遅い』とか『足を出さないライダーが多い』ということ。ジェット・ローレンス選手やイーライ・トマック選手もそうで、ステップの内側をクリッピングの奥の方まで踏み込んでバランスをとっています。このライディングを元にしたのか、フットペグマウント位置も細かく変更されていて、これまでと比べて8mm内側に。その分幅を8mm広げてコントロール性を求めた設計になっていました。もちろん、メーカーに対してライダーから要求もあると思いますが、KTMは世界のレースシーンでトレンドとなっているであろう、ステップから足を離す時間が少ないライディングスタイルに沿ったマシンづくりに寄せているのでは? と感じました」

市販車初搭載となるクイックシフター

画像1: 市販車初搭載となるクイックシフター
画像2: 市販車初搭載となるクイックシフター

「KTM 250SX-Fには、2023年モデルからクイックシフターが搭載されています。クラッチ操作無しでシフトチェンジができる機能で、アクセル全開の状態でシフトアップが可能になるんですよね。シフトアップの精度とロスが重視されるスタート時において効果が感じられるということで、実際に試してみました。シフトアップ時にガツンとくる感じはなく、シフトアップ操作を気にしないでスタートができました。ただ、併用するローンチコントロールはすごくバチバチにスタートが決まるかというと、もの足らない部分もありました。特にライダーが積極的にコントロールしたい部分、例えばタイヤを深く差し込みたいと思うところまではタイヤが掻いてくれなかったりと、良いところもあればもの足らないなと感じることもありました。ただこれはローンチコントロールの設定次第で、僕が感じたもの足りなさは改善できると思います。ただ、パッと乗って使うだけでも、使用時と不使用時の違いは確実にわかると思います」

WP XACTフロントフォーク&リアショック

「前後サスペンションにはWP製のフロントフォークとリアショックが純正として装備されています。リアショックは300mmのサスペンショントラベルはそのままで、ショックユニット全長を15mm短縮することで軽量化しています。デュアルコンプレッションコントロールノブによって、工具なしで調整できるのが便利ですよ。乗り心地としては、スタンダード設定ではフロントサスのストロークが初期から硬く、細かいギャップで弾かれそうな感覚でした。サスの上の方を使っているような使用感です」と、辻さん。

エアボックスとエアフィルターも刷新

エアボックスとサブフレームは旧型から形状を変更し、コンポジット材とアルミのハイブリッドに。サイドカバーの吸気口は大きく空いていることで吸気効率を向上し、エアフィルターの形状も新設計となっています。兄弟車のハスクバーナFC250と同様の構造ですが、ハスクバーナはサイドカバーの吸気口があいておらず、エンジンキャラクターを大きく変える要素になっているとのこと。

画像: エアボックスとエアフィルターも刷新

ジャンキー稲垣の初心者目線インプレ

Off1.jp編集長にして万年ビギナーの稲垣です。こんにちわ。元々僕はモトクロッサーがすごく苦手で今までメディア試乗会で乗りたいなんて気はさらさらなかったのだけど、4年前に古いCRF250Rを借りて乗っていたことがきっかけで少しずつモトクロスにハマり、一昨年125SX、去年YZ125に乗り換え。40歳からまるでサーフィンのようにレースは出ずひたすら土と戯れる日々を送っております。

画像: ジャンキー稲垣の初心者目線インプレ

前置きが長くなったけど、パツパツのレスポンスがすごく苦手だったのに今ではパツパツのレスポンスがすごく好き。今回乗った250SX-Fは、4スト250モトクロッサーのなかでも特段パツパツだった。下から上までレスポンスが鋭く、さらに高回転域までパワフルに伸びていく特性は、2ストに少し近いところを感じるほど。だけど、この極端に「走る」エッジーなフィーリングがめちゃくちゃ楽しかった。

電子制御の進化もひとつの目玉ということで、クイックシフターをローンチコントロールと共にスタート練習をして試してみた。2速で伸びきる前のパワーバンドに入っている負荷の強い回転域では、クイックシフターを使ってもシフトアップがうまくいかなかったが、そこを外せばスコンとギヤをあげられる。元々クラッチを使わずにシフトアップするパワーシフトを多用することが多いモトクロスでは、ライダーによってギヤが「ここなら入る」という阿吽の呼吸を知っているものだと僕は思っている。だからシフトアップする瞬間にスロットルを少し緩めたり、クラッチをほんの少し握ったりすするものだけど、そのスポットが、クイックシフターによって少し広がる、あるいはちょっとしたミスを受け止めてくれるようなシステムだと解釈したい。その感触さえつかめれば、スタートでたしかにクラッチをつかわずパワーロスほぼゼロで3速へアップできるし、コース上でもパワーシフトをミスする確率が低くなる。スタートの成功確率は間違いなくあがるハズ。

エンジンがすさまじければ、それを受け止める車体も旧モデルとはまるで違っていて、最初はとまどった。乗り出してすぐにステップが足から何度も外れてしまう。今までの感覚で足をおろしたところにステップがない。だけど内側に少し探ると今までより明らかに幅が広いステップがあるのを感じる。3分も乗っていればこれに慣れてきて、いかに今回のステップが優れているのかを実感できた。内側に広くなっているだけでなく、ステップ外側が少し上がっていて内股になるようなセットアップが施されているから、ステップと足との一体感がとても強いのだ。コーナリングで足を前に出そうとすると、これまた違和感があるのだが、次第にステップから足を離さない乗り方をするとスムーズに乗れることを頭で理解しはじめる。

車体とサスペンションは併せて話すべきだろう。足つきはごく一般的なモトクロッサーで、普段乗っているスタンダードのYZ125と同等。身長180cm/体重70kgの僕が中足骨(土踏まずの前あたり)までつくくらい。ライディング中は僕の腕前だとだいぶサスの上部分で動いているような感触があって、腰高なマシンに感じる。マシンを倒しこもうと思ってもうまいこと倒れてくれないため、僕レベルであれば若干リセッティングが必要だと思う。辻さんは「スタンディング多めに走るとすっとコーナーに入っていける」とアドバイスしてくれたが、その効果を感じるまでには至らなかった。

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