KTMの2スト125ccモトクロッサー125SXがフルモデルチェンジ。それも史上最大の完全オールリニューアルであり、KTM初のスロットルボディインジェクションを2ストロークに搭載している

画像1: 乗りやすいから、楽しくて速い。新型KTM125SX徹底レビュー

KTM
125SX

125ccはいま戦国時代に突入した

2ストロークの125ccモトクロッサーは、現在ヤマハとKTMグループ、FANTICそしてTM Racingの4社しか作っていない。

2022年にヤマハはYZ125をフルモデルチェンジ。フレームこそ旧モデルの設計を継続したもののエアインテークを含めた車体レイアウトと、エンジンもクランクケースから見直して新造。これまでにない強烈なヒット感ある2スト125ccはビギナーからエキスパートまで絶賛された。これに1年遅れてKTMが今回フルモデルチェンジ。フレームを含めたオールニューであるにとどまらず、同社初の2ストモトクロッサーへのフューエルインジェクションを採用した。これに伴なってキックスターターはついに廃止され、パワーバルブも電子制御へ。いよいよアナログだった2ストモトクロッサーが、デジタル世代へ突入したのである。

さらにこのフューエルインジェクションはスロットルボディインジェクション(TBI)だ。2017年にKTMが世に送り出したトランスファーポートインジェクション(TPI)は様々な2ストならではの難しさを解決した構造だとKTMは解説していたが、今回のTBI採用でいわゆる以前からある4ストロークと同様のスロットルボディから燃料噴射するタイプに戻ったわけである。KTMではこの変化を2022年の初旬にプレスリリースし、いよいよTBIのマシンが出るぞと宣言されていた。4ストシリーズもフルモデルチェンジした年なのだが、KTMが推したかったのは明確に125SXを含めた新TBI2ストシリーズなのである。

画像: KTMに初搭載されたTBIインジェクション

KTMに初搭載されたTBIインジェクション

コンベンショナルなキャブ方式をとりながら唯一無二のパワーを手に入れたYZ125、そしてこのドラスティックなデジタル化を実現した125SX。容赦ない2スト125戦国時代がいよいよ幕を開けたわけである。その舞台は2つ。1つは欧州・北米におけるユースクラスのタイトルだ。日本では存在しないが、欧州・北米では2スト125ccオンリーのユース(ジュニア)クラスがモトクロス、エンデューロ共に存在していて、4スト250ccへクラスチェンジする前の大事なクラスとなっている。2つめはホビーライダーをターゲットとした市場である。カチ回せる2スト125ccはホビーライダーにとって最高のおもちゃ。ビギナーからベテランまで2ストサウンドに酔いしれることができる125ccは昔も今も大人気だ。YZ125はパワーでこの2つの戦場を切り抜けるが、125SXはどう戦うのだろうか? Off1.jpのモトクロッサーレビュワーとして今季活躍している元HRCライダーの辻健二郎が埼玉県モトクロスビレッジでジャッジする。

すごく乗りやすい。淀みをまったく感じません

辻健二郎が一通りモトクロスビレッジのコースを回ってきて上げた第一声は「すごくスムーズですね。淀みをまったく感じません。キャブの2ストロークはエンジンが回転することで吸気されて燃料が吸われるじゃないですか、だからタメ感みたいなものがあるんですよ。でもこの125SXにはそれを感じないですね。スロットルを開けることで燃料が噴射されているからなんでしょう、とてもリニアに感じました」というものだった。

画像: Off1.jpにてモトクロッサーレビュワーを務める辻健二郎。今回も映像を準備中です!

Off1.jpにてモトクロッサーレビュワーを務める辻健二郎。今回も映像を準備中です!

「全域において一様な燃焼がモーターのような浮き沈みのないパワーデリバリーを実現しているな、と思います。たとえば滑りやすいフラットなところでスライドさせながらコーナーリングした際に、安定したスライドができますね。パワーフィーリングだけをみると、これまでのキャブで染みついた感覚、つまりエンジンが回りだしてからパワーが盛り上がっていくようなパンチ力に慣れているせいか、メリハリが無いようにも感じてしまう側面があります。モーターのようなインジェクションのパワーフィーリングに対して、キャブ車の感覚と比較してしまい、このリニア感にキャブ車のようなメリハリがあればどんな感じで走れるんだろうと感じる部分もありました。

画像1: すごく乗りやすい。淀みをまったく感じません

このフィーリングをパワーが無いと言ってしまうのは簡単なのですが、実はそういう単純な話ではないと思います。プログレッシブ性がある従来のキャブ車のようなパワーの立ち上がりは時に雑味に感じますし、実際そのパワー特性のせいもあってコーナリングにいくつも角をつくるような乗り方になりがちなのですが、このリニアな特性だとまるで4ストロークのようなラインでスムースな弧を描いて曲がっていけるのです。かなりモトクロスビレッジを走り込みましたが、2ストロークでは本来できないようなラインどりができ、それが全周にわたって繋がりました。現役の頃にもそうだったのですが、ラインが繋がるような時の自分はかなり乗れていて、タイムもしっかり出ることが多いですし、実際この125SXは相当タイムを狙えるマシンだと感じましたね。

モトクロスビレッジは全体的に低いスピードレンジですが、3速を使っている時間が多く高回転域の使用頻度が短くパワーを感じにくかったので、スピードレンジの高いコースではどんな走りをするのだろうか、回転上昇時にメリハリのあるパワーフィーリングが出るセッティングやアップグレードがあればどうなんだろうと期待が膨れました」

画像2: すごく乗りやすい。淀みをまったく感じません

優れた車体とエンジンの組み合わせ

さらに辻は4ストと同系統の新型フレームについても絶賛する。「コーナー進入時、マシンを寝かしはじめる瞬間に特にフロントタイヤの接地感が自然と高まりやすく、前後ともに滑りづらいので、マシンを寝かして起こすまでの時間が短く感じます。

サスペンションの動きはしっかりとしたタフネスがあり、動き始めの渋さを感じることがなく、路面によく追従している感触です。フープスやギャップにある引っかかるような深いコブとコブの間でも、フロントを引っ張られて前方にダイブするようなバイクの姿勢変化もなく安定した乗車姿勢を保つことができました。

画像1: 優れた車体とエンジンの組み合わせ

新しい車体ではステップの両端が高くなっていることがスタンディングではかなり活かされていて、ステップ上でバランスを取るポイント(支点)がマシンの軸(中心)から離しやすくマシンの細かい振れからバランスを崩されにくいように感じました。モトクロスビレッジには小方誠選手が普段から練習しているという轍だけのショートコースがあり、かなり難易度が高いセクションなのですが、何度か乗り慣れてきた時にスタンディングのままコーナーリングしてみました。荷重コントロール、バランス調整のしやすさが活かされていて、思ったよりもマシンを倒しやすく感じましたね。スタンディング時に海外のトップライダーなどはよく足を内股にして踵をステップより外に広げるのですが、この乗り方が非常によくマッチします。インプレなのにもっとたくさんレールコースで練習してみたくなるほどでした。

画像2: 優れた車体とエンジンの組み合わせ

以前KTM250SX-Fをインプレした際には、スタンディングを多用するとコーナーリングをしやすいという記憶がありましたが、125では乗り初めから手こずるような旋回特性は感じませんでした。車体剛性の調整で進入でも加速でも滑るフィーリングが少なくなっているのでしょう」

2スト大好きOff1編集部ジャンキー稲垣インプレ

2スト125ccのモトクロッサーって現代のオフロード業界にとって非常に大事なカテゴリーなのに、続けているブランドは非常に少ないですね。4スト250が進化しすぎて2スト125/4スト250混走のレースで4ストがチートと呼ばれるようになって早10年以上。いま2スト125は、4ストと比べるものではなく、ジュニア育成向け&サンデーファンライド向けの2つのポジションを持っていて、さらに言うとこの125をベースにビギナー向けエンデュランサーが開発されているわけです。安い、軽い、速い、楽しい。個人的に2スト125はおじいちゃんになっても乗り続けたいです。あるかな、80歳になる40年後に2スト125モトクロッサーが。あったらいいな。

画像1: 2スト大好きOff1編集部ジャンキー稲垣インプレ

さらに個人的なことを言うと、やっぱり2スト125は難しい。最近YZ125とYZ250FXの2台体勢でサンデーライドを楽しむ僕は、どう走ったってYZ250FXのタイムに近づけない。最近もっぱらホームコースにしているモトクロスビレッジでは1周1分くらいのラップタイムなのですが、だいたい3秒くらい違ってその差を詰めるのがとにかく難しい。ところがどうだろう(わざとらしい)、新型125SXは4ストに迫るタイムを出せたのだ! ぴっかーん

正直なところ125SXのファーストインプレッションは微妙だった。キャブレター車の2スト125に比べてどこかパワー感のない穏やかなスロットルレスポンス、走り出してもパワーバンドに入ったときの強烈な加速感がない。もしかしてこれ、レインモードとかに入ってしまっているのかな、と確認したほどだった。モトクロスビレッジでは2〜3速を多用するんだけど、2速で吹けきるのも早い。上まで回ってる感覚はあるのに、なんかおかしいなと思っていたのだけど、実はコレ、GPSで見てみると2速でしっかり回りきって速度も乗っている。むしろ最高速が乗るフィニッシュから1コーナーまでのつながりは、いつものスピードより6km/hも速いのだ。そりゃ吹けきるわけだ! さらには車体の素直さは、同系統の新型フレームを持つ250SX-Fよりもさらに素晴らしく、気づけば丸く円を描いくようにコーナリングをができるようになっている。よくあるアレです。がっとブレーキでリア滑らせて半クラで直線的に立ち上がるのは乗ってる本人は速そうに感じるけど、スムーズなほうが速いってやつ。アレが自然に125SXだとできているのである。

乗り込んでいくと、広いパワーバンドをしっかり捉えながらコーナー進入に入っていって、スムーズに抜けられるようになっていく自分に酔いしれた。弊社新人女子社員(元全日本レディス)のイザーさんが「いつもよりはえぇ」と言ってくれていたので、間違いないはず。女の子の声は信じたい。この周回は先述したとおり、4ストに準ずるタイムをマーク。サスペンションのおかげなのか、フープスの速度や自由度も違うから、その後のコーナーでアウト側からしっかり加速してスピードをのせていけているんだ、だからタイムも最高速も出てるんだな、と気づいた。

画像2: 2スト大好きOff1編集部ジャンキー稲垣インプレ

こういう「扱いやすいから速い!」的なインプレって昔からよくあるけれど、速い人が乗ったらもっとパワー欲しいんじゃないの? って思うじゃないですか。辻さんのインプレもう一回読んでみてください。元ファクトリーライダーが「これは速い」って言ってるわけで……十分でしょ? 世界クラスのライダーは好きにチューニングでパワー出せばいいわけだし。もひとつ言うならKTMにはパワーパーツもあるわけだし。

ワンモアシング。今だからこそ告白するけど、実は250EXC TPIの初期モデルはあまり好きになれなかった。乗り慣れたキャブとは違ったフィーリングでスロットルに敏感な部分があったからだ。電子制御されている感覚がかなり強かった。でもこの新たなTBIを搭載した125SXにはそういった好きになれない部分は皆無だ。それどころか、キャブでは成し得なかっただろう正確無比に動く2ストロークになっている。スーパーリニアでスロットルの操作にパーフェクトに応えてくれる。同じTBIが搭載された250/300SXもぜひ乗ってみたい。これらはサンデーライディングにだけ焦点をあてているはずだから(選手権がない)、さらにスムーズでファンなバイクになっているハズ。そしてこれは一つの妄想だけれど、このTBIがエンデュランサーに搭載されると、今までよりもさらにとんでもなくスムーズでライダビリティの高いマシンができあがるに違いない。

画像3: 2スト大好きOff1編集部ジャンキー稲垣インプレ

画像2: 乗りやすいから、楽しくて速い。新型KTM125SX徹底レビュー
画像3: 乗りやすいから、楽しくて速い。新型KTM125SX徹底レビュー

ついに125ccのモトクロッサーにもセルスターターが装着され、すべてのKTM SXレンジからキックスターターが姿を消した

画像: セルモーターはエンジン下部に

セルモーターはエンジン下部に

画像: インジェクターはスロットルボディに対して下から吹く形。オフロードバイクのFI化にあたってKTMが各社に先駆けて採用し、優れたフィーリングをものにしたのがこの下から吹くインジェクター形式

インジェクターはスロットルボディに対して下から吹く形。オフロードバイクのFI化にあたってKTMが各社に先駆けて採用し、優れたフィーリングをものにしたのがこの下から吹くインジェクター形式

画像: マッピングスイッチが4スト同様に搭載されるように。上側はスタンダード、下側はアドバンスドだが辻曰く「上のほうが力強い感じがしますね」とのこと。レインモード、というようなものがついているのではなく、あくまでスタンダードがハード路面、アドバンスドはサンド路面を想定したものでありアドバンスドのほうがヒット感を重視したものだとマニュアルには記載されている

マッピングスイッチが4スト同様に搭載されるように。上側はスタンダード、下側はアドバンスドだが辻曰く「上のほうが力強い感じがしますね」とのこと。レインモード、というようなものがついているのではなく、あくまでスタンダードがハード路面、アドバンスドはサンド路面を想定したものでありアドバンスドのほうがヒット感を重視したものだとマニュアルには記載されている

画像: シート下には増えた電装系をしまいこむためにお皿のような形の樹脂がある。そのためか、大きくサイドに吸気口を開けているのがこの23モデルの特徴だ

シート下には増えた電装系をしまいこむためにお皿のような形の樹脂がある。そのためか、大きくサイドに吸気口を開けているのがこの23モデルの特徴だ

画像: ステップは8mm内側に装着され、さらに8mm外側に伸びたとのこと。ディメンションの変化としてはこのステップ位置が非常に大きいと感じた

ステップは8mm内側に装着され、さらに8mm外側に伸びたとのこと。ディメンションの変化としてはこのステップ位置が非常に大きいと感じた

画像: 国産とは異なりエアサスペンション(WP製)を継続するKTM。非常に感触がよく、フープスやギャップで前に出て行くフィーリングがある

国産とは異なりエアサスペンション(WP製)を継続するKTM。非常に感触がよく、フープスやギャップで前に出て行くフィーリングがある

画像4: 2スト大好きOff1編集部ジャンキー稲垣インプレ
画像: すべてのサスセッティングは手で回せるつまみで調整が可能になった

すべてのサスセッティングは手で回せるつまみで調整が可能になった

画像: ハンドルストッパーまで曲げるとシュラウドとフェンダーがこのようなクリアランスに

ハンドルストッパーまで曲げるとシュラウドとフェンダーがこのようなクリアランスに

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