今年のJNCC、トップライダーのアウターチューブが一様に黒いことにお気づきの方もいるだろう。これこそがテクニクスが新たに始めた新サービス“Night Hawk Plating”。同社にお願いをして、最もその違いが感じられる条件下で体験させていただいた

「よく動くサスペンション」から「接地感の高いサスペンション」へ視点を変える

オートバイの開発には昔から何度も繰り返される定番のお題目がある。たとえばマスの集中化、低重心化、扱いやすくパワフル、そしてよく動くサスペンション。サスペンションはよく動くほど、ショックを吸収してくれるのではないか……。そんな「よく動く」という魔法のワードに、何十年も踊らされてきた。だが、本当に「よく動く」ことはいいことなのか。

テクニクスの小倉氏によれば「タイヤが適度に押しつぶされている状況を感じてライダーは接地感があると言うようです。タイヤと車体の間にあるサスペンションは路面の凸凹をライダーに伝えないようにすると同時に、適度にタイヤに荷重する(押しつぶす)ことをしなければタイヤの性能を引き出せず車体を自由にコントロールすることができません。極端な例で言うと、アクティブサスペンションの制御理論の一つにスカイフックという概念があります。これはまるで空からフックで吊り下げたかのように、路面の凸凹をサスペンションが100%吸収して何もなかったように走るというもの。空を走っているような状態です。でも、この状態ってタイヤが機能する状態まで押しつぶせていない状態なので、タイヤの性能を発揮できず、上手に曲がれないし、加減速もままならないでしょう。

今まで操縦安定性と乗り心地を両立させるために減衰力チューニングに注力してきました。しかし実際には減衰力はストローク速度に比例して発生するもの。サスペンションは常に圧縮/伸長を切り替えていて、その切り替えの瞬間である『ストローク速度ゼロとなる瞬間』は非常に高い頻度で発生していることになります。にも関わらず、その瞬間において減衰力は発生しておらず、タイヤを押しつぶす力をコントロールできていなかったのです」とのこと。

画像: 「よく動くサスペンション」から「接地感の高いサスペンション」へ視点を変える

つまり、そのストローク速度ゼロの領域で接地感がすっと抜けている状態になっている。なんとなく実感している人も多いだろう、サスが伸びきった瞬間はトラクションが抜けてしまうため、思い切り加速したり旋回したりすることが難しく、タイヤが横にすっぽぬけてしまう。オフロードに慣れると、このストローク速度ゼロの瞬間を身体が覚えていて無理な動きをせずに、「待とう」とする。たとえば一瞬スロットルを遅らせたりしているわけだ。この接地感が抜ける瞬間が無くなれば、よりオフロードライディングがスムーズになるはず。

“Night Hawk Plating(NHP)”は最初期の動き出しの瞬間(起動フリクション)だけフリクションを高く、その後の摺動フリクションは従来よりも低くすることを狙って、アウターチューブの内径クリアランス、内径摺動面の表面硬度、内径摺動面の表面プロフィール(凸凹)をミクロン単位でチューニングしたコーティング。ストロークゼロ時の接地感を高める効果を持つ。

画像: カシマコート、NHPともにアウターチューブのコーティングが作用する場所は、インナーチューブのスライドメタル部分のみ。わずか2cm弱のリングの摺動が、大きな違いを生む

カシマコート、NHPともにアウターチューブのコーティングが作用する場所は、インナーチューブのスライドメタル部分のみ。わずか2cm弱のリングの摺動が、大きな違いを生む

「一般的なスタンダードのモトクロッサーに施されているカシマコートは『良く動くこと』狙っています。対して、NHPは『接地感の向上』を狙っているのです。さらにフリクションを最適にチューニングすることで、凸凹を通過した時、初期の動きだしが穏やかで手のひらで感じる衝撃が少なく、無駄な動きが少ないと感じることでしょう。参考までNHP処理をフロント&リアに実施したプロライダーからは、『狙ったラインに入りやすい』『衝撃が少なく疲れにくい』『荒れた路面でもタイヤが弾かれない』というコメントをいただいています。

よく動くだけのサスペンションでは、路面に対してタイヤを押しつけることが難しい。2020年台の優れたサスペンションは、フリクションを「いい感じ」に制御したものである。小倉氏によれば「フリクションの制御こそ、永遠の課題なんです」とのことだ。

YZ250FXのサスペンションが、完璧なものになった

今回のテストでは、編集部で所有している21MY ヤマハYZ250FXのサスペンションを、埼玉県モトクロスビレッジ現地でそのままNHPを施したアウターにそのまま換装して比較した。完全なイコール条件でテストしない限り、この手の微妙な違いは見えてこないだろうと考えたからだ。

画像1: YZ250FXのサスペンションが、完璧なものになった

正直なところ、そこまで追い込んでテストしたとしても、永遠のビギナーことジャンキー稲垣には感じ取れるかどうかは難しいだろうなとも思っていたのだが、実はコースインした瞬間に「ちょっと固めになったな!」と思えた。嘘じゃない。もともとYZ250FXのサスペンションは、モトクロスをするのにあたって少し柔らかさを感じ始めていて、アジャスターをすべて締めて固めて乗っていた。それでも、ギャップで引っかかるようなもったりする感覚があって、ほんの少しでいいからもう少し固めたいなと感じていたところだったから、余計にわかりやすかった。特に小倉氏の言どおり、サスペンションの動き出しが固めだからコースインした瞬間に感じ取れたんだと思う。

画像2: YZ250FXのサスペンションが、完璧なものになった

嫌な感触はまったくない。毎週のように通っているモトクロスビレッジだから手に取るようにその違いを感じ取ることができた。まず、3コーナー後のローラーセクションで嫌な引っかかり方をしていたのがすっと前に進むようになったのが一点。特に僕の場合は、ローラーを最初2つ飛びきりたいけどスキル不足で必ずひっかかっていたので、余計に感じやすかった。2個目の斜面に当たっても、サスペンションがいい感じに突っ張ってくれてギャップの向こうまでスムーズに運んでくれる。スピードが急激に落ちていたのが、緩和されたのだった。

また、ローラーを越えて4・5コーナーにあたるS字の出口で、バンクに当てるには僕の場合スピード不足でフラットなラインで旋回するのが常なのだけれど、どうにも開けづらかったのがNHPサスペンションでは若干ながら開けられるタイミングを早くとれるようになった。これはフロントタイヤにいつもよりも若干ながらトラクションを感じたからに他ならない。タイムアタックを何度も繰り返しているコースだけに、ここで感じた開けやすさはコンマ5秒ほどに値すると感じる。ま、タイムを計ってみたら暑さに体力奪われて、最速更新できなかったけどな!

画像3: YZ250FXのサスペンションが、完璧なものになった

僕の場合、求めていた「もう少し固めたい」というイメージにばっちりあったことが、好印象に繋がっているんだと思う。もしかするとYZ125であれば車重も軽いため、もう少し強めに効果を感じ取れたかもしれない。シムの積み替えなどでは狙いづらい特性だし、価格もFサスペンション1本の施工で¥26,400とリーズナブル。アウターがブラックになることで見た目もいい。気分でもたぶん0.5秒速くなれるはずだ。テクニック向上の頭打ちを感じているホビーライダーにもぜひ試してもらいたい。

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