トライアンフモーターサイクルズは、自社初となるユース向け電動オフロードバイク「TXP」シリーズを欧州で発表しました。これまで大型ロードやアドベンチャーモデルを中心に展開してきた同社が、子どもから大人までを対象にした電動ラインナップを導入するのは初めてのことです。OSET買収を経て生まれたこのシリーズは、次世代ライダーを育成するブランド戦略の一環と位置づけられています

年齢別に4モデルを用意した体系的なラインナップ
トライアンフモーターサイクルズは、ユース向け電動オフロードバイク「TXP」シリーズを欧州で発表しました。TXP-12、TXP-16、TXP-20、TXP-24の4モデルが同時に登場し、対象年齢は3歳から10歳以上までをカバーします。価格は英国市場において、TXP-12が1,595ポンド(約315,810円)、TXP-16が2,295ポンド(約454,410円)、TXP-20が3,195ポンド(約632,610円)、TXP-24が3,695ポンド(約731,610円)と発表されています。
※参考レートは同日時点のGBP/JPY=約198前後としています

TXP-12は600Wモーターを搭載し、バランスバイクを卒業したばかりの3〜5歳の子どもが扱える仕様です。TXP-16では900Wモーターを採用し、5〜7歳を対象としています。TXP-20は1,200Wモーターを搭載し、7〜10歳のライダーを想定。最上位のTXP-24は1,600Wモーターを備え、10歳以上から大人(最大体重90kgまで)も利用できる設計です。各モデルはフレーム、サスペンション、ブレーキを専用設計とし、単なる子ども用玩具ではなく「本格的なオフロードバイク」として開発されています。
2in1設計と安全装備に込められた意図
TXPシリーズは「XPloreモード」と「Trialsモード」の切り替えが可能な2in1設計を採用しています。シートを装着すればトレイル走行向けの着座ポジションとなり、外せばトライアル的なスタンディング操作に移行できます。ひとつの車体で異なる練習スタイルに対応できる構造は、子どもの成長やライディング技術の上達に合わせた段階的ステップを意識したものです。

安全面では、全モデルにIP67準拠の防水電装を搭載し、PINコードで出力を制御できるペアレンタルコントロールを備えています。さらに転倒時に車両を停止させるセーフティランヤードを標準装備し、家族が安心して導入できるユースモデルとしています。こうした仕様は「遊び道具」と「競技機材」の中間に位置づけられ、家庭から本格的なレースシーンへとステップアップする過程をサポートするものです。
OSET買収から見えるトライアンフの狙い
トライアンフは2022年にユース・トライアル分野で実績を持つOSETを傘下に迎えており、今回のTXPシリーズはその技術を取り込んだ初の量産ラインといえます。OSETの軽量電動トライアルマシンは欧州や北米で一定の評価を得てきましたが、トライアンフはそれを「自社ブランドのファミリー製品」として発展させる道を選びました。
これまでトライアンフは、ロードスポーツやアドベンチャー、クラシックなど成人向けラインナップが中心で、ユース層を直接対象とした製品は存在していませんでした。TXPシリーズの投入は、親世代がトライアンフを選び、子どもたちも同じブランドでライディングを始めるという「ファミリー内ブランド循環」を生み出す戦略的な取り組みと位置づけられます。
CEOのニック・ブロアーは「オフロード競技での経験とOSETの強みを融合し、次世代のライダーを育成するための製品に仕上げた」とコメントしています。単なる子ども向け商品ではなく、次世代ライダー育成と電動オフロード市場拡大を同時に狙うトライアンフの姿勢が、TXPシリーズに集約されているといえます。
TXPシリーズはトライアンフ正規ディーラーを通じて世界各地で予約を受け付けており、2025年のクリスマス前の納車が予定されています。