スズキが新たに送り出したDR-Z4S/DR-Z4SMは、約20年ぶりに刷新された400ccデュアルパーパスシリーズである。初代から受け継ぐ単気筒ドライサンプ構造を基礎に、エンジンから電子制御、車体構成に至るまで全面的な新設計を施し、令和の時代にふさわしい性能と信頼性を与えた

画像: これは日本のオフロードの新境地、新型DR-Z4S/SMファーストインプレッション

SUZUKI
DR-Z4S/SM
¥1,199,000

6台DR-Zを乗り継いできた佐野新世が語る

「トレールバイク……ではないですね。もちろんレーサーとは全然違う。その間にあるもの、と言えばいいのかな。無理矢理言うならスポーツバイク、みたいなカテゴリーかもしれません」

今回インプレッションをお願いしたのは、スタントやモタードで活躍してきた佐野新世である。ダカールラリー、本場フランスのモタードなど様々な舞台で走ってきた経歴を持ち、最近ではShinyoちゃんねるを主宰して人気。スズキの旧DR-Z400シリーズにはどっぷりハマり、レーサーバージョンのDR-Z400Eを含めて過去に6台ものDR-Zを乗り継いできた日本でも有数のDRフリークだ。今回の新型DR-Z4SMももちろん購入契約済みである。試乗コースは四輪のダートトラックとターマックを備える那須のつくるまサーキット。ひどいウェットコンディションでモタード仕様のDR-Z4SMに初乗りしたあとで、佐野はこう言った。

画像1: 6台DR-Zを乗り継いできた佐野新世が語る

「250ccのトレールバイクって、アンダーパワーなのでとても乗りやすい。でも、僕はオフロードバイクの持っているアンバランスさが好きなんですよ。バランスの整った250ccに比べ、400ccはアンバランスになる。アンバランスなパワーがフロントを上げてくれるし、リアタイヤを流してくれる。本来、オートバイってライダーがバランスをとることで成り立つものだし、その行為が楽しいわけでしょう?

今回のDR-Z4SMで最も注目したいのは電子制御SDMS(スズキドライブモードセレクター)です。とりあえず最初のスティントで感じたのは、フルパワーのモードAではオーバースペックなほどパワフルだということですね。Aは右手が覚えているスロットル操作より回っているから、ウイリーの姿勢制御が難しいなと思いました。そのくらいパワーがしっかりありますね。Bがちょうどいいですね。Cにすれば、誰にでも開けられるバイクになる。と、まぁ、ここまではよくある電子制御の褒め言葉なのですが、感心したのはBやCのフィーリングがとても自然であることです。この手の電子制御は、バイクに慣れ親しんできた僕らからするとスロットルのフィーリングが合わず、どんづまりな感触になってしまって、結局電子制御を切ってフルパワーで乗るケースが多いんです。でも、このDR-Zはそうなりそうにない。路面が悪い場所で楽しみたければ素直にCを選ぶでしょう。ベテランでもCを選べる懐の深さがあります。トラコンであるSTCS(スズキトラクションコントロールシステム)も秀逸ですね! モードと同じくとても自然に感じました。

画像2: 6台DR-Zを乗り継いできた佐野新世が語る

車体については、古い乗り方の僕には合わないと思うところもあります。何もせずに曲がっていくハンドリングで、内側のハンドルに当て舵をしたくなる。そうすると、リーンアウトで昔ながらのモタード乗りができないんですよ。最近の“スーパーモト”のライダーは、みんなリーンウィズでスライドするんじゃなく、身体をさらに内側にいれてスライドするでしょう? コーナーだってハングオフだし、足の出し方だってMotoGPのような出し方でオフの出し方とは違う。僕らはスライド時にお尻をリアに押しつけていましたが、今はオンロードの様にフロントブレーキしっかりかけて、リヤタイヤが浮く方向にある。仕方のないことですね、僕らの時代とは違うので。決して否定的には感じません。自然に、何もせずに曲がっていくいいハンドリングです。おそらく、これはフロントサスペンションのボトムケースをSと形状を変えてキャスター角を調整していることに理由があると思います。

サスペンションの性能の高さは20年前とは比べものになりません。当時のサスペンションは、緩めると減衰が効かず、セッティングを締め込んでいくとただ動かなくなっていくだけでしたが、このサスはしっかり動くのにちゃんと減衰が効いている。ドライで走り込んで、負荷をかけたときにどういう動きをするのか、今から楽しみです。はやく自分のDR-Z4SMに乗りたい!」

画像3: 6台DR-Zを乗り継いできた佐野新世が語る

オフロード仕様のDR-Z4Sでも、やはりその好感触は変わりが無い。「こちらも電子制御がすごくいいです! 特にG(グラベル)モードが素晴らしい。リアを振り回せるのに、前にしっかり進んでいくので自分がうまくなったと勘違いしてしまいます。試乗会場は深いグラベルで、純正タイヤもブロックタイヤとは言え舗装路寄りなため、かなり滑るシチュエーションでした。にも関わらず、そうは思えないくらい乗りやすかった。モードはやはりここでもBがベストでした。コースがドライだったら、AがベストでB、Cはただ弱いモードに感じていたかもしれません。ある意味このウェットで過酷な状況は、DR-Zの素性の良さを知る上ではインプレに適していたのかも知れませんね。とにかく楽しいバイクだと思いました。僕が購入したのはDR-Z4SMですが、もうこのDR-Z4Sが欲しくてたまらない。このSをベースにラリー車を作って日本のラリーを走り回りたいです。

日本のスズキがこれを出してきたことに感嘆を覚えましたし、頑張っているからこそ応援したいという気持ちもありますね」

全面改良、ほとんど新設計

さて、それでは新型DR-Zの何がどう変わったのか。1つ1つメディア試乗会で得られた情報をもとに解き明かしていこう。まずエンジンの再構築である。設計を担当した城所琢也氏は、説明会の最初に前提を共有してくれた。

「DR-Z4Sは24年ぶり、SMは19年ぶりのフルモデルチェンジであり、対応すべき規制は大きく変化しています。最新の排ガスや騒音規制に対応するにあたって、燃焼室側で出力を出しにくい状況になっていたのです。そのため、メカニカルロスの低減は一層求められる部分となってきました」

画像1: 全面改良、ほとんど新設計

スズキの開発チームはそこでエンジン内部の抵抗を徹底的に低減した。ピストンスカートのプロフィールはシミュレーションを駆使したCAE解析で当たりを最適化し油膜保持を安定化。クランクケースには連通穴を新設し、下側の壁面を後方へ延長してケース内の空気流を整流した。「これによってピストン下側で発生するポンピングロスを低減しています」。結果として「最大出力回転数では17%、全域で最大20%のメカニカルロス低減」を達成している。

吸排気と燃焼も同時に見直されている。エアクリーナーボックスの吸気経路は直線化し、インレット径拡大と短縮で吸入抵抗を低減。スロットルボディは36mmから42mmに拡大し、吸気側にチタンバルブを採用して高回転域の充填効率を確保した。大径ボアに対してはイリジウムのツインプラグで火炎伝播を安定化し、ポートと燃焼室のスムージングで燃焼速度も上げている。

こうして作り出されたエンジン特性と電子制御のすり合わせは、トップカテゴリーでのレース経験を持つ山本浩史氏が担った。氏は自らの立脚点をこう語る。「全日本モトクロスや全日本クロスカントリー選手権、海外のGNCCにも参戦してきました。DR-Zの開発では、自身の経験も活かし、基本適合から走行フィーリングまで担当しました。

まず、デュアルパーパスとスーパーモトで最もよく使用される低回転域と高回転域に着目しました。低回転域は発進時の力強さと極低速での粘り、高回転域はスムーズに吹き上がる伸びの良さを実現しています」。

画像2: 全面改良、ほとんど新設計

電子制御は出力特性を変更できるSDMS(A/B/C)とトラクションコントロール特性を変更できるSTCS(1/2/G/OFF)を搭載する。SDMSの作り込みについて山本氏は「スロットル開度とスロットルボディのバタフライ開度をオフセットさせ、モードごとのフィーリング差を出しています。Bを基準に、Aは中開度を大きくして加速の立ち上がりを強め、低開度は滑らかにしています。Cは中開度を絞って優しい特性とし、1速のみ発進のもたつきを避けるため開度を大きめにしています。高開度域はフラットにして追い越しなどでしっかり加速できるようにしています」と説明。また、ギヤ別最適化については「高いギヤほど駆動力が弱まるため、各ギヤごとにマップを作り分け、開度を調整しています」とコメントした。SとSMでは挙動感度に応じた差も与えていると言う。「SMはスロットル操作に対する挙動が敏感なため、Sより各モードの開度差を小さくしています」。

トラクション制御の要であるGモードは、従来のアドベンチャーバイク(スズキVストローム)に作られたものだったため、前提から再設計した。

「従来のGモードはフラットダート想定で、スロットル高開度領域でスピンを抑えすぎてしまい、登坂や起伏のあるダートで加速が鈍る課題があったためDR-Z4S/SMに合わせて新しいGモードを開発しました」。開発の狙いを氏は具体的にこう説明する。

「歩行すら困難な滑るダートでも、適切なスピン率に制御して前に進めるようにしました。起伏に富んだ路面でも自然なフィーリングと推進力を両立し、まるでタイヤのグリップが上がったように感じられるはず」。

画像3: 全面改良、ほとんど新設計

テストライダーを担当した點東稔氏も「軽快なレスポンスとスムーズな出力特性で、低速から高速までつながりが良く、高回転域にパンチがあるエンジンに仕上がりました。極低速域でも粘りがあり、エンストしにくい特性です。新しいGモードは、車速が低くトラクションをかけにくい登坂路面でも、ラフなスロットル操作で登っていけるように作り込みました。オンロード機種のトラコンで起きがちな、タイヤが浮いた際の不自然な出力カットを避け、自然なフィーリングを維持しています」と太鼓判をおした。

電子化と操作感の両立は、電装の構成にも表れている。電装設計の石部訓章氏は、EURO5対応での電子化範囲を淡々と列挙する。「キャブレターからフューエルインジェクションへ変更し、燃料ポンプ、インジェクター、FIセンサー、電子制御スロットルユニット、ABS、さらにSDMSやSTCSなどの機能を追加しました」。同時に、車体側の制約を超えるためのレイアウトワークが要だったと言う。「オフロードとモタードで、部品が増えたからといって車体を大きくするわけにはいきません。軽快さを損ねず、重い部品を重心に近づけるため、妥協なくパズルのように配置しました」。

画像: 電子スロットルなのに、スロットルケーブルで引くタイプ。ハヤブヤなどのハイエンド車種も、この方式を採用している。これならたしかにオフロードで転倒してもトラブルは起こしづらいだろう。社内検討では、最初からスロットル自体にセンサーがある一般的なスロットルバイワイヤは除外、テストもしていないそう

電子スロットルなのに、スロットルケーブルで引くタイプ。ハヤブヤなどのハイエンド車種も、この方式を採用している。これならたしかにオフロードで転倒してもトラブルは起こしづらいだろう。社内検討では、最初からスロットル自体にセンサーがある一般的なスロットルバイワイヤは除外、テストもしていないそう

その上で、操作系の設計意図を明確にする。「スロットルはケーブルを備えた電子制御方式を採用しています。遊びの調整ができ、たわみから張りに移行する際の手応えを感じ取れる構造です」。

車体は新設計のスチール製セミダブルクレードルを中心に、アルミ製シートレールとスイングアームを組み合わせ、剛性と強度の配分を見直した。車体設計の田中洋氏は、狙いを一言でまとめる。

「軽快なハンドリングとオフロード性能の両立を目指し、主要部品を一新しました」。

画像4: 全面改良、ほとんど新設計

SとSMでサスペンションのアウターの剛性を作り替え、フォークボトムの取り付けも変更してキャスターをそれぞれ変えることでキャラクターを分けている。このあたりの通好みの作り分けは、スズキならではのきめ細やかさが光る。サスペンション自体はカヤバ製の倒立フォークとリンク式リヤショックのフルアジャスタブル。旧Sは正立だったため、大幅にアップデートしたことになる。Sはフロントストローク280mm/リヤ296mm、SMはフロント260mm/リヤ277mmとし、路面と用途に応じて減衰と姿勢が作り分けられた。また、タイヤはSがIRC GP-410(専用チューニング)、SMがダンロップSPORTMAX Q5A。ライディングポジションは可動域を広げ、荷重移動をしやすくされている。国内仕様シート高はJASO基準に合わせて890mmとし、フットレストは幅を16mm広げて安定性を高め、ラバーはオフロード走行時に取り外してブーツのグリップを確保できる。ブレーキはSが前後ディスク径を各20mm拡大し、リヤはレバー比とタンク一体型マスターでダイレクト感を上げた。SMは従来型の高い前制動力を継承しつつ、フロントのディスクピン数を6から8に増加して耐久性とフィーリングを改善している。

総じて、新型DR-Zは環境規制という制約条件を真正面から受け止めた上で、内部抵抗の徹底低減、燃焼と吸気の見直し、そして電子制御の適合によって、オフロードで使える出力と操作感を現在形に更新したモデルであると言えるだろう。Sは不整地での自由度を、SMは舗装路での応答性を、それぞれオフロードに傾倒してきたテストライダーのフィードバックで徹底的に詰めている。S、SM共に、同じパワーユニットと制御群を、用途に応じて使い切るためのいかに作り込むか、という点で通底しているという印象を受けた。

電スロはオフロードに必要か否か。これからのスズキの合い言葉は「G」

さて、ここからは編集部稲垣のターンである。おなじみ万年ノービスが、言いたい放題言わせてもらおう。

新型DR-Z4S/SMの価格が発表されたとき、旧DRと比べてあまりに高いのではないかという意見がOff1のSNSにたくさんコメントされた。正直なところ、非常に判断が難しいところだと感じたのも事実だ。既存のトレールバイクと比較したら、たしかに高い。他社のバイクで恐縮だが、ホンダCRF250Lで649,000円だから倍に迫る金額である。2000年のホンダXR250は499,000円で、スズキの旧DR-Z400Sは628,000円だった。排気量差から考えてもDR-Z4S 1,199,000円は高い。一方、物価上昇率で考えると、日本は一説によると11%しかあがっていないからこれは論外。欧州では71%という説があり、欧州基準で考えると107万円だから辻褄は合う。2020年代のオートバイの値付けは非常に複雑だ。

画像1: 電スロはオフロードに必要か否か。これからのスズキの合い言葉は「G」

ただ、今回乗って感じたのは、そもそもこの新型は旧型のDR-Z400Sとはまるでコンセプトが違うものだということだ。旧モデルはあくまで“400ccのトレール”で、DR250Sの延長線上にあったと思う。今回は佐野さんが言われるとおり、既存のトレールバイクからは大きく立ち位置を異にする存在だと感じた。

そもそもこの手の400cc以下のオフロードバイクとしては、電子スロットルを採用した初めての国産オートバイとなる。筆者自身、オフロードバイクを25年も追いかけてきたが、市販トレールモデルがハイテクノロジーを取り込むタイミングは、とても遅いと思っていた。モトクロッサーがFI化したのは2008年で、奇しくもスズキのRM-Z450が世界初。オートバイ全体でみれば1980年代に端を発し、2003年にはホンダが50cc用のPGM-FIを発表している。電子スロットルは、もはやオートバイ全体で見れば当たり前の装備だが、やはり市販トレールバイクやモトクロッサー(※ただしモトクロッサーはFIMの規則で禁止されている)には搭載されてこなかった。オフロードは繊細なスロットルワークが求められるし、昔の制御技術ではサーボモーターのレスポンスがその繊細さに間に合わなかったからだ。そんなわけなので、DR-Z4S/SMはまさに満を持して登場した、国産初の電子スロットル本格オフロードバイクなのである(ちなみに、KTMは1ヶ月違いで390エンデューロRに電子スロットルを搭載。すでに大型オフロードバイクでは690エンデューロRが電子スロットルを搭載している)。

またしても他社の話を出して恐縮だが、オフロード界のYZF-R1として登場したヤマハWR250R/Xはレーサーなみのハイスペックで「プレミアム」を名乗り、当時としては非常に高いプライス設定だった。今回、DR-Z4S/SMに対して感じるのは、電子制御テクノロジー方向での「プレミアム」感だ。いまや、MotoGPでも有り余るパワーを電子制御で正しく路面に伝えるのは当たり前の方向性、その電子制御を初めて一般のオフロードバイクに持ち込んだところに「プレミアム」な価値があるのだと解釈したい。

問題はその解釈に納得がいくかどうか。電子制御で自由自在に400ccのパワーを扱えるかどうか、ということだと思う。

画像2: 電スロはオフロードに必要か否か。これからのスズキの合い言葉は「G」

電子制御を抜きにしてもエンジンの素性は非常にいいフィーリングだ。大排気量ならではの神経質さは微塵も感じない。スロットルを開けた瞬間に伝わってくる扱いやすさのフィーリングは、250ccのそれに近い。でかいピストンがエンジン内でごろごろ動く感覚がなく、ウルトラスムーズだ。長年スズキのオフロードを見てきたRM/DRの生き字引きともいえる開発者石部さんによれば、バランサー付近は変えていないが、内部を見直したことが大きいと言う。なにせメカニカルロスが最大20%も削減されているから、旧型の今となってはややがさつにも思える感触は一切姿を消している。それに加えてエンストの気配がまったく感じられないのも素晴らしい。エンスト耐性で大事なのは、実際にエンストしないことよりも“エンストの気配を感じさせない”ことだと個人的に思う。実際は粘るエンジンであっても、エンスト付近の極低速で負荷がかかった状態の気配が危うければ、エンストが怖くて身体がこわばってしまう。DR-Zにはそれがない。ここも、あきらかに250ccライクなのだ。それでいて、400ccならではの厚いトルクはしっかりあるから、3速で歩くような速度でガレ場を走ることができる。このようなエンジン特性は、かつて無かったように感じる。

かなりスリッパリーでハンドルがとられがちな深い砂利のオフロードに進入していくと、何度も書いて恐縮だが、まさに250ccのようだった。ふとメーターに目をやるとトラクションコントロールはモード1(弱)、パワーはモードC(弱)。滑りやすい路面をなにごともなかったかのように、いなしていく。400cc単気筒とは思えないほどに高回転も伸び感があり、これもまたいい意味で250cc的だった。納得してモードを変更、トラクションコントロールをモードG、パワーモードをA(強)に入れると、今度は400ccらしいパワーが顔を出した。Gというのは、長年スズキがVストロームなどに搭載してきた「グラベルモード」で、滑らせて走りたい時などに使うオフロード向けトラコンともいうべき装備だ。開発陣はこのGを、DRを開発するにあたって最も大事なところだと考え、幾度もテスト&エラーを重ね、モトクロスIAのテストライダーが納得するレベルに収めたという。実際乗ってみると、本当にトラコンが効いているのか? と思うほど、リアを振り回せる楽しいモードだったため、試しにトラコンをオフにしてみたところ、急にリアがまったく落ち着かなくなっていつものノービス稲垣が戻ってきた。こんなに電子制御にコントロールされていたのか! と改めて思った瞬間である。トラクションというのは、路面にタイヤを押しつけることで摩擦力を発生させることであって、単にスリップしないという意味ではない。スライドしているタイヤにだって、トラクションは多いに発生しているのだ。アドベンチャーバイクのトラコンは、多くの場合滑ることを許容しない「スリップコントロール」だが、Gモードは正しく「トラクションコントロール」に仕上がっていると思った。

画像3: 電スロはオフロードに必要か否か。これからのスズキの合い言葉は「G」

ちなみに車体サイズの扱いやすさもとても250ccライクだ。890mmのシート高は別として、乗っている分には150kgオーバーの車重を感じさせず、ライダーインターフェースもレーサーのエンデューロマシンかと錯覚するほどにスリムだ。よく動き減衰が効くサスペンションは、旧型の比にならない。聞けば、このDR-Z4Sのサスペンションは欧州基準の体重75kgを初期設定しているとのことで、本来的には日本人にとってかなり硬め。ただし、トレール的な味付けもあってあたりが柔らかいため、そこまで硬いサスには感じない。

石部さんに立ち話で聞いてみた。もし規則で規制されていなかったら電子スロットルはモトクロッサーにも有効だろうか?(編注:FIMの規則により、電子スロットルはモトクロスでは禁止されている) と。石部さんは、間違いなく有効だと思うと言った。電子スロットルはモトクロスで求められる繊細なスロットルワークをカバーできるほど進歩しているか、そしてその恩恵は大きいか? 答えはYESである。いよいよ能動的な電子制御が本格オフロードに投入される日がやってきたのだ。電子スロットルというのは、単にアナログをデジタル化するものではない。人の感覚を、デジタルに置き換え、ECUの制御を加えてマシンに伝える手段である。単にハードの組み合わせであった市販オフロードバイクに、ソフトが投入された記念的瞬間なのである。このとびきり頭がよくなったDR-Zが120万円で買えるのなら、その価値は十分にあると感じた。

SUPPORTED BY

ヤマハのサイトはこちら ホンダ カワサキのサイトはこちら スズキのサイトはこちら KTMのサイトはこちら Husqvarna Motorcyclesのサイトはこちら GASGASのサイトはこちら FUMA+1のサイトはこちら Technix j1 j1

SPECIAL THANKS

ポカリスエットのサイトはこちら アライヘルメットのサイトはこちら

This article is a sponsored article by
''.