いよいよマーケットに投入されたドゥカティのモトクロッサーDesmo450MX。2026年には、これまでAMAを舞台にGASGASファクトリーとして活動してきたトロイリーデザインがドゥカティに移行、ライダーは超一流のジャスティン・バルシア、ディラン・フェランディスを起用し、AMAスーパークロス/プロモトクロスへもフル参戦を開始する。MotoGPではドゥカティが日本メーカー勢を蹂躙するようになって久しいが、このイタリアの荒波はモトクロス界にも届いてしまうのだろうか。Off1.jpでは、まず市販車を太田幸仁にレビューしてもらうことで、第一報をお届けしたい

画像: 話題のドゥカティモトクロッサーをレビュー、いい意味で250のような450

DUCATI
DESMO450MX

“250のように回せる”450のエンジンフィール

Desmo450MXはデスモドロミック機構を採用した449.6cc単気筒エンジンを搭載しており、高回転域まで抵抗なく伸びる特性を持つ、とされている。バルブスプリングを廃した強制開閉構造により、摩擦損失を抑えつつ応答性と回転の軽さを確保しているというわけだ。最高出力は63.5ps、最大トルク53.5Nmとされ、高回転域での性能を重視した設計思想が読み取れる。車体を見てみよう。アルミ製ペリメーターフレームは構造簡素化と高精度鋳造により剛性と軽さを両立し、ショーワ製サスペンションと電子制御(エンジンマップ、トラコン、クイックシフター)を組み合わせた。モトクロスはFIMの規定によりライドバイワイヤが禁止されていることから、ロードレース由来の制御技術をそのまま反映させることができない。ワイヤーを通してバルブを開閉させる、よりプリミティブな機構をいかにドゥカティ流に昇華させてきたのか、デスモとモトクロスとの相性がどうなのか、気になることばかりだ。

画像1: “250のように回せる”450のエンジンフィール

太田の話を聞く限り、Desmo450MXの本質はスロットルを開けた時の前への出方に集約されると言えそうだ。一般的な450では、開け口に独特の押し出し感があって多くのライダーを身構えさせるが、このエンジンにはそれがない。開けた量に応じて力が素直に立ち上がり、回転が上がるほど出力がリニアに上がっていく。

太田幸仁は、この感触を次のようにまとめている。
「最初にアクセルを開けた瞬間から、普通の450とはまるで違うと感じました。開け口の角がなくて、一般的な450でありがちな“ドンッ”と押し出される怖さが出てこないんです。マイルドな設定のマップ1だと特に、中速から上の伸びがすごくきれいで、回転が軽いままどんどん上まで使っていける。レブに触れても失速した感じがなくて、“まだ上があるんじゃないか”と思わせるくらいスムーズです。昔ながらの450だとレブった瞬間に失速する感じが強かったのですが、このバイクは点火カットのピッチが『ブン、ブン、ブン』と長めではなくて『ルルルルルッ』と細かくカットされているような感触で、つながりが途切れない。そして、250のいいエンジンみたいに気持ちよく回るのに、前に出る力はちゃんと450のままなので、回していくことにあまり不安が出ません。マップ2にすると一気に元気になって、まるでプロサーキットのチューニングエンジンに乗り換えたような特性になりますが、レブ付近のなめらかさは共通していて、モードを変えてもドゥカティらしい回り方は崩れない印象でした」

画像2: “250のように回せる”450のエンジンフィール

デスモドロミック機構によって高回転域でのバルブ制御を機械的に行い、スプリングによる追従限界やフリクションを抑えた設計であることが、この高回転の独特なフィーリングに関係しているのだろうか。

開け始めの怖さを薄めながら、レブリミット付近まで一気に使える450。太田の言う「250のように回せる450」という言葉は、単に軽いというだけでなく「高回転域のスムーズさ」と「スロットル操作に対する素直な出力」が両立していることを意味している。

アルミフレームとサスペンションの剛性感

フレームはアルミ製で、外観からも鋳造パーツが多用され、溶接箇所を減らすことで強度とコストカットを両立した構造であることが分かる。実際の乗り味としても、「どこか一部だけが極端に硬い」というより、「車体全体が均一に締まっている」印象が強いようだ。

画像1: アルミフレームとサスペンションの剛性感

太田はこう述べる。
「今回は新車のまっさらな状態で乗ったこともあって、とにかく全体的に硬いというのが第一印象でした。小さいギャップでもコツコツ当たる感じがあって、馴染みが出てくればもう少し丸くなるとは思いますが、鉄フレームのマシンみたいに“いなしてくれる”方向ではなく、しっかり受け止める方向です。ただ、どこか一点が主張するような硬さではなくて、フロント周りだけ、ヘッド周りだけが強いという感触は少ない。ジャンプの踏み切りから着地までの流れは揃っていて、モトクロスコースで飛んでいく分には安心感があります」

この均一な剛性は安定感につながるはず。一方で、エンデューロ的なシチュエーション——木の根や岩、細かい段差が続く場面——では、入力がそのまま返ってくるような硬さが顔を出す。太田自身も「山で使うなら、サスペンションの初期を柔らかくしたり、各部の剛性を少し逃がす方向に手を入れたい」と評している。ただこれは、モトクロッサーなのだから当たり前とも言える内容ではある。

ただし、現在KTMの350EXC-Fに乗っている太田が「そのクラスのバイクに乗れているライダーなら、Desmo450MXも十分扱える」と評するように、エンジン特性の穏やかさが車体のハードさをある程度中和している面もある。エンデューロ好きなため、こういった分析をし過ぎてしまって申し訳ないが、サスペンションと細部のセットアップ次第で“デスモエンジンのエンデューロ版”を楽しめる余地があると言えるかもしれず、つい期待してしまう。

画像2: アルミフレームとサスペンションの剛性感
画像3: アルミフレームとサスペンションの剛性感

電子制御の完成度と課題

Desmo450MXの電子制御は、マッピング2種類に加え、トラクションコントロールとクイックシフターのオンオフを個別に選べる仕様だ。マップ切り替えは一般的な「マイルド/パワー」のイメージに近く、マップ1は開け始めが穏やかで中速から上にかけての伸びを重視、マップ2は全域のトルクを底上げしてレスポンスを鋭くした性格。

画像: 電子制御の完成度と課題

一方で、現状のソフトウェアではクイックシフター周りに改善の余地がある。太田は試乗時にトラクションコントロールとクイックシフターをオンにした状態で違和感を覚えたそうだ。
「クイックシフターを使った時に、点火カットの時間が長すぎるように感じました。普通ならシフト操作の瞬間に一瞬だけ失火させて、そのまま加速を繋いでいくと思うんですけど、このバイクはちょっと間が空く場面がありました。ボギングしてしまうような感覚になってしまうので、ここは今後のセッティングやアップデートで変わっていってほしいポイントです。マップレーシング側でトラコンもクイックシフターも切ってフルパワーモードにすると、この症状は出なかったので、制御の詰め方次第でかなり良くなるはずだと思います」

ドゥカティはMotoGPを筆頭に電子制御の開発で優位に立ってきたメーカーであり、ソフトウェアアップデートやディーラーでのモジュール書き換えによって、このあたりの制御は今後も変化していく可能性が高い。現時点では「機械側のポテンシャルに対して、クイックシフターの味付けだけがやや慎重すぎる」という印象である。

ターゲットライダーと日本での立ち位置

価格は170万円台と、国内外の450モトクロッサーの中でもプレミアムなポジションにある。KTM450SX-Fや、トライアンフTF450-X、あるいは国産車と比べても一段高い設定だが、「ドゥカティというブランドのバイクがこの価格で手に入る」という側面も無視できない。

太田は価値について、次のように結んでいる。
「ドゥカティというプレミアブランドのモトクロッサーなので、値段だけを見ると高く感じるかもしれませんが、エンジンの作り込みや電子制御の幅の広さ、車体のしっかり感を考えると、単純な“割高感”はあまりありません。マイルドなモードにすればファンライドでも楽しめますし、パワーモードにすればIAライダーが戦えるだけの速さがあります。いいチューニングショップでフルチューンした450を最初からメーカーが出してきた、そんな印象のバイクでした」

ビギナーが最初の一台として選ぶモデルではないが、現行の350〜450クラスに乗り慣れたアマチュアレーサーや、モトクロスをひとつ上のレベルで体験したいライダーにとって、「回して楽しめる450」という選択肢を新たに提示した一台だと言えるだろう。ドゥカティがこのDesmo450MXを起点に、250モデルやエンデューロバリエーションをどのように展開していくのか。デスモドロミック単気筒とアルミフレーム、そして電子制御がどこまでオフロードの世界に馴染んでいくのかを見届けるうえでも、この初号機の存在は大きな意味を持つのではないか。

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