2026年2月15日、プラザ阪下で開催されたJNCC開幕戦は、近年の国内クロスカントリーシーンにおいても密度が高い一戦となった。渡辺学・馬場大貴によって長年タイトルを保持してきたヤマハの牙城に対し、万全の体制を整えたKTM、新規参入のトライアンフ、そして全日本モトクロス界からのトップランカーが激突。3時間の死闘は、トップ2台がわずか2.5秒差でチェッカーを受けるという、歴史的な接戦で幕を閉じた

新興勢力トライアンフ、JNCCのルーツを持つ能塚智寛のカムバック

画像1: 新興勢力トライアンフ、JNCCのルーツを持つ能塚智寛のカムバック

今大会、パドックを最も沸かせた一人がカワサキの能塚智寛だ。能塚はかつて中学生時代にJNCCの舞台で腕を磨き、そこから全日本モトクロスのファクトリーライダー、そして王者へと上り詰めた「JNCC育ち」のプロライダーである。彼の帰還は、このフィールドのレベルが全日本トッププロを惹きつけるほどに成熟したことを象徴していた。

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対するKTMは、今シーズンよりメーカーによる本格的なサポートプログラムを始動させた。復帰戦となる矢野和都、モトクロスのレジェンド成田亮と、マシンの完成度と相まって、盤石の強さを誇る。

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画像: 今季からRG3がトライアンフのチームを率いることに。ワークスピットも使用する一大勢力へ

今季からRG3がトライアンフのチームを率いることに。ワークスピットも使用する一大勢力へ

新興勢力としてJNCCに参入してきたのはトライアンフである。昨シーズンもオーストラリアのステファン・グランキストがスポット参戦して初優勝を飾っているが、今季はグランキストに加えてベテラン松尾英之、保坂修一がレギュラー参戦。また、全日本モトクロスと被らないレースにはIA2トップランカーの小笠原大貴がスポット参戦するという。

これら新勢力を、渡辺学や馬場兄弟を擁する絶対王者ヤマハが迎え撃つという、三つ巴の構図が開幕戦の舞台に整ったのである。

心理的誤算が招いた「2.5秒」のドラマ

午後1時に火蓋が切られたCOMP-GP。序盤をリードしたのは、KTMのサポートを受け、300 XCで挑んだ矢野和都であった。矢野は1周目を6分21秒という驚異的なタイムで戻り、後続を突き放しにかかる。しかし、5周目に能塚智寛がトップを奪うと、そこからは能塚がリードを拡大していく展開であった。

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能塚はモトクロス仕込みのスピードでアベレージを上げ、中盤まで首位を快走した。しかし、3時間の長丁場には心理的な落とし穴が潜んでいた。能塚は「最後の2周まで自分が1位だと思い込み、ペースを落として走ってしまった」と語る通り、自身の順位と給油タイミングを見誤ってしまう。対して矢野は、冷静に能塚を追撃する手を緩めなかった。能塚が余裕を持って2度目のピットに入った隙に、矢野が14周目にトップを奪還して再び矢野に勝利のチャンスが巡ってくる。

画像2: 心理的誤算が招いた「2.5秒」のドラマ
画像3: 心理的誤算が招いた「2.5秒」のドラマ

L1(ラストラップ)の表示とピットボード見て事態を把握した能塚は、最終周に全ライダーを通じての最速ラップ8分34秒191を記録して猛追。しかし、矢野が2.502秒という僅かな差で逃げ切った。能塚はレース後「俺、最後の2周目ぐらいまでずっと自分が1位じゃないということに気づかなくて、ちょっとツーリングしてたら、実は1位じゃないということに気づいて『あー!』ってなって最後頑張った結果が最終ラップなんですけど、まあ時すでに遅しですね。スタートから成田さんとかが近くにいるのはわかってたんですが、おじさんたちはいい加減、そんなに速く走らんといてほしいなと思ってます」と冗談と悔しさをおりまぜながらコメントする。

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矢野はこの強豪を下したものの「一番やばかったのは、能塚選手ですね。自分のベストな走りをしても、周りに誰もいないクリーンラップを取れたと思っても追いついてくるんですよ。やっぱり彼は、モトクロスが上手いです。一番すごいのは、俺よりヒューム管をミスらないんですよ。丸太とかもミスしない。そういう速さと上手さを兼ね備えていました」と吐露。次戦以降も強力なライバルになると、どこか楽しそうな笑みをこぼした。

画像5: 心理的誤算が招いた「2.5秒」のドラマ

レジェンドの意地と、トライアンフのエースの追撃

表彰台の最後の一枠を巡る争いも、凄まじい熱量を帯びた。総合3位の成田亮は、レース中にパンクを喫しながらもポジションを死守する。その背後には、スタート時のエンジン始動ミスで最後尾まで沈んでいたトライアンフのエース、ステファン・グランキストが迫っていた。ステファンは終盤にベストラップに近いペースを維持し、成田の背後1秒差まで詰め寄る。しかし、レジェンド成田が1.115秒の差でこれを封じ込めることに成功。成田は「昨年はここでリタイアしていたので、ちょっと緊張気味だったのですが、スタートからKTMでワンツーを決めて、オレンジの2台が前を走る姿はかっこいいなと思いながら走っていました。結果は3位でしたが、凄く嬉しいです」と素直なコメント。そして黒船グランキストは「スタートでフラッグが動いたと勘違いしてフライング気味にエンジンをかけてしまいました。完全に私のミスです。もしタイミングが合っていればホールショットを獲れていたはず。課題はサスペンションですが、次戦へのテストも終えているためサンドの徳島が楽しみですよ」とのこと。

画像1: レジェンドの意地と、トライアンフのエースの追撃
画像2: レジェンドの意地と、トライアンフのエースの追撃

KTMの組織力とカワサキ能塚が見せたスピード、トライアンフの新勢力がヤマハの防衛線を突破した開幕戦。戦いの舞台は砂の洗礼が待ち受ける徳島へと移る。阪下に刻まれた「数秒差」のドラマは、2026年シーズンがかつてない激戦となることの確かな予兆であった。

画像: ラストラップ、ゴール直前の攻防戦

ラストラップ、ゴール直前の攻防戦

COMP-GP総合 リザルト 1位:矢野 和都 (KTM) 2:21:14 2位:能塚 智寛 (Kawasaki) 2:21:17 (+2.5s) 3位:成田 亮 (KTM) 2:22:31 (+1m16s) 4位:S. グランキスト (Triumph) 2:22:32 (+1m17s) 5位:渡辺 学 (Yamaha) 2:22:44 6位:馬場 亮太 (Yamaha) 2:29:0

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