ルーマニアで開催される世界一タフなハードエンデューロレース「ルーマニアクス」に日本人5人が参戦。ゴールドクラスに山本礼人、佐々木文豊、ブロンズクラスに横田悠、岡庭大輔、奥卓也がエントリーしている。Off1.jpでは現地同行取材を敢行し、その様子をリアルにお知らせしていく

昨日、予選プロローグを終え、いよいよ今日は決勝レースのDAY1を迎える。ルーマニアクスは決勝レースが4日間にわたって開催され、日によって多少前後するが、ほぼ全日程で5〜10時間、約100kmを走るスケジュールになっている。

セクションひとつひとつの難易度はもちろんだが、ルーマニアクスが「世界一タフ」と言われる由縁は、このレース時間の長さによるところが大きいのではないか。YouTubeなどで映像を見る限り「セクションは難しいけど、いけなくはなさそう。あとは体力と根性次第で完走できるかも」というのがライダーとOff1.jpの希望的観測だった。

しかしその期待は、DAY1にしてあっさりと裏切られることになるのだった。

高すぎたゴールドクラスの壁

画像1: 高すぎたゴールドクラスの壁

ルーマニアクスではGPSナビにそってコースをトレースするため、毎日受付でGPSを受け取る。この瞬間まではその日に走るコースマップは発表されない。また、1日のレースが終わるとこのGPSは回収され、コース違反などがないかをチェックされる仕組みとなっている。

画像2: 高すぎたゴールドクラスの壁

ゴールドクラスに出場する山本礼人と佐々木文豊もGPSをゲット。

画像3: 高すぎたゴールドクラスの壁

GPSは一つでもいいのだが、それだとミスコースしてしまうリスクが高いため、トップライダーや成績にこだわるライダーは2つ装着する傾向にある。それぞれの縮尺を変えることでいちいち止まって操作してルートを確認する手間が省けるのだ。

なお、横田は300mと120mに設定。ミスコースによるペナルティがつくのが「100m以上コースを逸脱した場合」なので120mの縮尺で目安にするという。

画像4: 高すぎたゴールドクラスの壁

日本の多くのレースの場合、受付、車検、パドック、スタートなどは全て同じところで行うことが多い。しかし、ルーマニアクスではそのすべてが離れている。この日のゴールドクラスのスタートはシビウから車で50分ほど離れた山の中。シルバークラス以下にはまた違うスタート地点が設置された。

予選プロローグで決勝レースを辞退した山本、そしてそもそもプロローグ自体をキャンセルした佐々木はもちろん、最後尾スタート。

画像5: 高すぎたゴールドクラスの壁

「1min、10sec、3、2、1」とカウントが数えられ、山本がスタート!

画像6: 高すぎたゴールドクラスの壁

続いて佐々木。

「スタートしてすぐ、15秒くらいでめちゃくちゃ難しいセクションがありました。そこがもう"エムスリー"(2021年G-NET日野に出現した難易度MAXヒル)くらいのレベルでしたね」と山本。

予選プロローグでの成績順に2分ずつ間隔を空けてのスタートだったため、山本の前には誰もいない。佐々木も、山本に追いつかず1人旅。たまに他のクラスのライダーが林道で勢いよく抜いていったとのこと。

画像7: 高すぎたゴールドクラスの壁

レース開始から1時間半ほど経った山本。この時はまだ元気いっぱい。

画像8: 高すぎたゴールドクラスの壁

ほぼ同地点で佐々木にも遭遇。ここでは約20分差。

しかし、問題はこの後だった。

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この"ベビーシッター"があまりにも曲者。入り口にエルズベルグロデオのカールズダイナーのような大きな岩のロックセクションがあり、そこからひたすら押し上げる系のヒル。轍に入れてZを切って(直登できないため切り返しつつ斜めに上がっていく方法)上がっていく。フロントが上がるか上がらないかギリギリくらいの斜度で、土質はガサガサに乾いている。片側は壁で、反対側は落ちたら終わりの崖。山本はそこをなんとか2時間かけて上り切り、チェックポイントについたら「あと1時間30分以内に今のところをあと2周しろ」と言われ、そこで限界を悟りリタイヤを決めた。

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山本礼人
「フロントが浮きそうなくらいのめちゃくちゃ急な斜度で、一本ラインを間違えたら崖に落ちるようなところでステアとかでかい岩を超えていくようなところが延々続きました。観客の人に『お前何周目だ?』と聞かれて、僕はまさかここを3周もするとは思っていなかったので『え、ここ何周するの?』って聞いたら『3周だ』と言われて。でも3周もするならそんなに長くないのかな、と思っていたら登れど登れど終わらなくて、結局2時間かかりました。よく見ると轍を跨いで直登したようなタイヤ跡がついていて、おそらくそれはジャービスとかトップライダーたちが使ってるラインなんですけど、どうやってそんなところを走るのか、まったくわかりませんでした。途中、同じゴールドクラスの下位のライダーが何人か崖に落ちていて、彼らは2周目や3周目だったのでそれを助けながら。日本じゃあんなのやったことありません。間違いなく人生で一番難しかったですね。今年からライブマニアックスという生配信のセクションができていて、DAY1はここがそうだったみたいですね。あれを時間内に完走するには、トライアルIAS級のスキルと足の長さ、あと圧倒的なフィジカルが求められます」

また、佐々木は序盤のセクションでいきなりフロントブレーキディスクを曲げてしまった。それでも持ち前の対応力で走り、山本に続いてこの"ベビーシッター"まで到達。しかしその途中でキャメルの水が尽きてしまい、登頂を断念。身体も限界のため休憩しようと歩いて崖を下ったところで民家を発見。そこで水を分けてもらいつつ休憩し、体が回復してからセクションに戻って、自力でバイクを下ろして生還を果たした。もちろんレースはリタイヤだ。

画像9: 高すぎたゴールドクラスの壁

佐々木文豊
「スタートしてすぐの登りで角張ってる石にブレーキディスクを当ててしまいました。持ってくる荷物でガードを省略したのが、仇になりましたね。一つ一つのセクションはまったく走れないわけではないんですけど、そこをハイペースで休まずに走り続けないと完走はできません。初めて世界のトップライダーと同じ舞台で戦ってみて、彼らがどれだけすごいのかが実感としてわかりました。"ベビーシッター"は登るのと同じくらい降るの怖かったですね。Z字に降りるのは無理な斜度なので、まっすぐ降りていったのですが、路面がガサガサで滑るので、本当に危険でした。助けてくれた民家の人たちがものすごい親切でした。向こうはルーマニア語なので英語もまったく通じなかったんですけど、それでも水をくれて休ませてくれたので、おかげで帰ってくることができました」

こうして山本は「日本人として初めて"ベビーシッター"を登頂した男」になり、佐々木はおそらく「世界で初めて"ベビーシッター"を下った男」になった。2人ともDAY1をリタイヤした形になったが、DAY2は継続して走ることができるルールなため、レースは続けていく方針だ。

画像10: 高すぎたゴールドクラスの壁

ブロンズクラスは「ハイスピードなCGC」

さて、ブロンズクラスに参戦した横田、奥、岡庭はどうだったのだろうか。

ゴールドと同じくプロローグの順位通りにスタートなため、最初は横田。そして奥、最後に岡庭という順番となった。

画像1: ブロンズクラスは「ハイスピードなCGC」

横田、奥、岡庭は順調にレースを進めた。3人のコメントを総合するとコースの難易度はCGCのさわやかクラスだが、そこをハイスピードで走らなくてはいけないとのこと。そしてDAY1のコースの中に2箇所だけ、CGCゲロゲロ以上、G-NETレベルかな、というのセクションが含まれていたという。また、ISDEやEnduroGPに見られるようなグラストラックもあり、逆バンクコーナーも多く、まるでJEC(全日本エンデューロ選手権)のような走りを要求されたようだ。

画像2: ブロンズクラスは「ハイスピードなCGC」

こちらは横田がレース中に渋滞で撮影した写真。たまにこのように一本ラインで渋滞があったものの、基本的には渋滞はなく、スムーズに走ることができたという。

画像3: ブロンズクラスは「ハイスピードなCGC」

横田悠
「けっこう疲れましたね。2/3くらい走ったところのガレ下りでパッシングをしかけたらリアブレーキキャリパーのバンジョーをヒットさせてフルードが漏れてきて、リアブレーキを失ってしまいました。速度域はJNCCよりも速いですね。グラストラックとかは6速まで入るんですけど、コーナーで一気に2速まで落とさなきゃいけなくて、慣れないから大変でした」

奥卓也
「Sea To Skyもそうなんですけど、やっぱり海外レースって特別で、国内のレースに例えようと思ってもなかなか難しいんですよね。でも、難易度的にはCGCさわやか、ゲロゲロでは難しくてちょっと使えないかな、というところが2箇所。でも他のライダーがみんなそこを攻めて走るので、やっぱり速く走るスキルが求められるんです。疲れてはいますけど、まぁ明日も問題なく走れるレベルです」

実は奥はプロローグで前転した際に小指を骨折(自己診断)していたが、走りには大きく影響しなかったという。また、岡庭は奥より2時間ほど遅くスタートしていたが、2人同様に順調にレースを進行。途中、綺麗な景色やセクションで写真を撮りながら完走を果たした。

岡庭大輔
「セクションで渋滞していたからバイクを降りて写真を撮っていたら海外のライダーに『日本人はみんなそうやってレース中に写真を撮るのか?』と聞かれ、『そうだ』と答えたら笑われました」

画像4: ブロンズクラスは「ハイスピードなCGC」
画像5: ブロンズクラスは「ハイスピードなCGC」
画像6: ブロンズクラスは「ハイスピードなCGC」

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