ヤマハの2023年モデルでは、YZ450F/YZ125X/YZ250Xの3車種がフルモデルチェンジを果たしました。今回、ヤマハによる2023YZシリーズのメディア向け試乗会に参加。一新したYZ450Fに迫ります
画像: 2023MY YAMAHA YZ450F/YZ125X/YZ250X 辻健二郎インプレッション youtu.be

2023MY YAMAHA YZ450F/YZ125X/YZ250X 辻健二郎インプレッション

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TESTER/辻健二郎
TEST TRACK/宮城県スポーツランドSUGO

画像1: 「軽く乗れる450cc、つかみやすい加速フィーリング」2023 YZ450F試乗インプレッション ※ムービー連動
画像2: 「軽く乗れる450cc、つかみやすい加速フィーリング」2023 YZ450F試乗インプレッション ※ムービー連動

YAMAHA
YZ450F 2023MY

2023年式で5年ぶりにフルモデルチェンジ。フレーム、エンジン細部にわたるまで新設計されておりここまでの全面刷新は後方排気モデルが発表された2010年以来。そのコンセプトは“Syncronizing YZ with every rider"とされ、人とマシンを一体化することでさらなるパフォーマンスを引き出すことを主眼に開発された。

辻健二郎、語る。「新設計のフレームは軽量かつしなやか」

今まで、バイクの重心のように感じるポイントがリアタイヤ/ヘッドパイプ/ステップ周りなど全体にあったため、乗った時にマシンが大きく感じていました。しかし、2023年モデルはシートやタンク周りがシャープになっていますし、前モデルと比べて2.3kgの軽量化が行われているので、パッと乗っただけでもその軽さを実感できました。

自分の感覚では、前モデルはヘッドパイプの辺りに重心があり、タイトなコーナーを曲がる時にマシンは旋回し始めで傾いているにもかかわらず、フロントのサスが充分に沈んでいない感じがしました。そのため、フロントサスを沈めてフロントタイヤが地面に食いつくように、ヘッドパイプ辺りを地面に張り付けるような減速体勢を作っていたのですが、2023モデルはそんなことをしなくても素直に旋回してくれました。軽量化に加え、タンクレールとヘッドパイプの連結部が15mm引き下げられていることで倒し込みなどマシンコントロールがしやすくなったのだと思います。また、コーナーに中速で侵入し、スライドをしながら加速をした時に、前モデルよりも僅かですがしなりを感じます。その車体のしなりが旋回のしやすさに繋がり、前モデルとの大きな違いを生んでいるのではないかと思いました。

画像: 試乗担当は辻健二郎。全日本モトクロス選手権でファクトリーライダーとして活躍していた経験を持ち、現在はモトクロスウエアブランド「seven」の正規取扱店「2G MOTO SHOP」を運営

試乗担当は辻健二郎。全日本モトクロス選手権でファクトリーライダーとして活躍していた経験を持ち、現在はモトクロスウエアブランド「seven」の正規取扱店「2G MOTO SHOP」を運営

2022モデルは中回転〜高回転域のスピードで走るとマシンに負荷が加わることで安定感が増し、バイクに身体を預けられる安心感のようなものがありました。一方、2023モデルでは僅かにしなりがあることでリアタイヤが流れていくような感覚。乗り方としてはマシンを逃がさないように早いタイミングで座ることを意識しました。実際、試乗中は座る回数も多くなった気がします。

また、パッと乗った時にステップから受ける振動がほとんどなく、軽さとしなやかさを感じたことは結構驚きましたね。おそらく、ステップのブラケットの素材変更も効いているんではないでしょうか。

画像: 辻健二郎、語る。「新設計のフレームは軽量かつしなやか」

エンジンは「扱いやすい高回転型」

画像: エンジンは「扱いやすい高回転型」

今までのYZ450Fは回転数が上がりきる前にパワーが強く出るイメージで、回転数の上昇というよりは、トルクの爆発力でマシンを押し出して走っているという感覚でした。しかし、2023モデルは低回転域から高回転域にかけて、力(トルク、パワー)の出方に浮き沈みを感じることがほとんどありません。回転数が上昇している時に、ライダーの手に余るパワーが出るわけでもなく、スムーズに加速をしてくれて、これまでのYZ450Fのイメージとは大きくかけ離れていましたね。

2023モデルでは最大出力が5%アップし、レブリミットも500rpm向上しているということで、この点を意識して乗りました。前モデルのようなトルクのパンチが効いた力強い加速ではないものの、回転数が上がるタイミングと車速の上昇に一体感がある。この加速フィーリングのつかみやすさにモデルチェンジによる変化を感じます。高回転でパワーがあるというと扱いにくさを感じると思うのですが、扱いにくさは全く感じなかったですね。乗りやすいパワーの出方でした。この、エンジンの回転数と車速が一体となったスムーズな加速感は、レースで優位となるポイントだと思います。

サスペンションはストロークが滑らかに

前の型に比べるとスムーズなストローク感でした。前モデルでは、減衰の強さでやや止まっているような、突っ張るような感覚を感じる場面もありましたが、2023モデルは突っ張りや止まるような踏ん張りはなく、乗り心地が良かったです。サスペンションは柔らかいというわけではないのですが、深く沈むポイントがあり、コーナーではその沈み込みがいい具合に役立っていました。加速時や減速時など強いエネルギーがかかった時に沈みすぎないよう、少しセッティングを変更しても良いかなと思いました。2023モデルから手動でサスペンションのセッティングができるようになったので、アジャスタでの調整で丁度良い沈み込みの感覚を探れると思います。

画像: サスペンションはストロークが滑らかに

ローンチコントロールはアプリでセッティング可能

画像1: ローンチコントロールはアプリでセッティング可能
画像2: ローンチコントロールはアプリでセッティング可能

450ccのマシンはパワーが強いので、スタート時にフロントが上がってしまったり、タイヤが空転しないように気を使いますが、ローンチコントロールを使ったら、繊細なクラッチ操作なしでも空転せずに発進することができました。特に、スタートゲートを出て2〜5mの間はアクセルを開けてもエンジンの回転が上がらず、確実に制御が効いている感覚です。今回の設定は自分には効きすぎているように感じましたが、Power Tunerというアプリでチューニングができるので、自分の好みに合わせて設定をすることで大きな武器になると思いました。

ジャンキー稲垣の初心者目線インプレ

ヨンゴー……それだけで暴力的な響き……。アメリカのレースから引退したイケてるおじさま達はどうしてもヨンゴーに乗りたがるらしい。なぜなら排気量でかくてカッコイイから。でも、日本ではそうそう450ccに乗りたいという人には出会わない。ほとんどのモトクロスユーザーは、「たぶんフツーの人間が扱えるものじゃない」と思っているに違いない。僕もそう思っていた。

画像: ジャンキー稲垣の初心者目線インプレ

今回新しくなったYZ450Fは、ぱっと写真を見た感じマイナーチェンジかなと思われても仕方ないようなシルエットだけど、実車はまるで別モノ。特にエンジンは長らく変わることがなかったクランクケースを、基本設計からごっそりやり直した意欲作。その設計変更の根本的な理由はレブ域のさらなる向上にある。もっとエンジンを回したい、そうなるとコンロッドのベアリングをニードルベアリングからプレーンベアリング(いわゆるメタル。玉や棒がない)に変更する必要が出てくる。プレーンベアリングを取り入れるには、ウェットサンプからドライサンプに潤滑方式を変えなくては潤滑性能がおいつかなかったから、クランクケースも再設計してしまおう、という流れらしい。開発者の言葉をそのまま伝えるとすると「モチベーションはこのプレーンベアリングにあります」とのこと。ヨンゴーをさらに回るようにされても、僕には絶対にわからない。とんでもないことである。ベアリングひとつ変えるのに、クランクケースの図面を書き直したのだ。おそるべしYZチーム。

至る所に開発要件の「モチベーション」があり、結果的に今季のYZ450Fはハンドル、グリップ、クラウンハンドル/アンダーブラケット、FRブレーキ/ホイール、排気バルブ、ピストンピン/リング、スロットルボディ、リンク以外のすべての部品を再設計している。狂ってやがるYZチーム。

とにかく楽しくてしょうがないYZチームの技術説明会を終えていよいよ試乗する。まずは旧型22年式YZ450F。1年ばかりYZ125でモトクロスばかりやってきたからか、前ほど手も足も出ない状態ではなかった。乗れなくも……ない。全開にはほど遠いモノの、「俺は開けてるぜ!」と主張できるくらいには開けられる。昨今のヨンゴーはその気になれば誰にだって乗れてしまう。毎年扱いやすくなっている、と言い続けているような気さえする。

だが23年式のYZ450Fは、もうヨンゴーではなかった。だいたいサンゴーくらいな感じ? 頭悪そうなんでちゃんと書くと、450ccもあるようには感じず、おおよそ350ccくらいの軽快さなのだ。とはいえ鋭くスロットルを開けると、むしろ22年式よりもドンと前に出て行くしスペック的には5%もパワーアップしているという凶暴さが垣間見える。ヨンゴーのビギナーにとっての扱いづらさは、アクセルオン時の一発一発のリアクションの強さと長さだと僕は思っていて、特にビギナーのゼロに近いコーナリングスピードではエンジンが低回転過ぎてものすごくギクシャク感が出てしまう。もう少し開けないとパスンとエンストしてしまう! そんな感覚がとても扱いづらいのだ。だけど、23年式YZ450Fはこの怖さが微塵も感じられなかった。これは二つの要因がある。1つはそもそもコーナリング特性が圧倒的にいいことだ。ニューフレームはヘッドパイプからメインチューブが生える位置を下にずらしたことで、車体がねじれる部分を下にもってきたという。これが、如実にわかりやすく、コーナリングがスパスパ決まる。特にコーナー進入時の入りやすさは、旧世代のフレームであるYZ250Fよりも上だ。ごく自然にマシンをリーンさせることができた。だから、コーナーでスピードが落ちておらず、エンストしそうな低回転域まで落ち込まないのである。もうひとつは、エンジン特性そのもの。エンストしそうなカツカツしたフィーリングがなく非常にまろやかに低回転も回る。これはバランサーによるものだと開発者は教えてくれた。22YZ450Fの場合、トルクフィーリングを演出するためにバランサーの角度を少しずらしてわざと鼓動感を出しているが、23YZ450Fはずらさないことで鼓動感を無くしている。つまり振動が弱いのだそうだ。

さらにはマシンがものすごく小さく感じる。それもYZ250Fと比べても小さく感じる。そもそも昨今の450/250はフレームが同じなので大きさも変わらないわけで、大きく感じるのはエンジンの慣性マスによる重量感や、曲がりづらさに起因するもの。つまりはその辺の「大きく感じる」ネガ部分がほとんど削除されているんだろう。なお、実際に旧フレームから小さくなっている部分は、主にシュラウド部分の太さ。これは跨った時の太ももの挟み込み具合が違うのですぐにわかる。

ただでさえビッグジャンプが多くて怖いスポーツランドSUGOだが、3速をメインに低回転で走るようにすると、おそろしくスピードが乗る。当然サスペンションはモトクロッサーだから僕がちょっと無理したくらいで根を上げることは絶対にないし、ちょっと速度に対して脳みそがバグったままKYBジャンプをびょーんと飛び出す(実際にはそれほど飛んではおらずサスが伸びてるだけだと思う)と、あきらかに自分の限界を超えてしまう。これってもしかしては速いのでは? とタイムを確かめてみると、この日の最速タイムだった。人生でヨンゴーが一番速いなんてことがありえるのだろうか?

ただ……正直に申し上げると無駄に回せて走った気になれて、さらにはサスペンションも優しいYZ250FXがとても楽しかった。新型YZ450F、そりゃ速いしすごいしカッコイイんだけど、身の丈にあったにあったマシンの楽しさには負けますね(なんだそりゃ)。

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