全日本選手権モトクロスを舞台にマシンを開発・参戦するGOSHI Racingを追いかける連載第9回。名門T.E.SPORTのエース大塚豪太をライダーに迎えて戦う2022年シーズン第2戦をレポート

万全の準備で臨んだ全日本モトクロス第2戦

埼玉県オフロードヴィレッジで開催された全日本選手権モトクロス第2戦。GOSHI Racingは今大会のトピックといえる2つのポイントについて、事前に入念な準備をしてきた。ひとつは関東大会ではIA1クラスにだけ適用される3ヒート制で、これは通常30分+1周を2ヒートで走るところ、15分+1周を3ヒート走ることで決勝順位を確定するもの。ヒート間に時間的な余裕がないことが予想されたが、T.E.SPORT with GOSHI Racingでは十分なチーム体制を組むことでパドック内での混乱を回避することが出来ていた。

もうひとつは全日本選手権モトクロスでは初導入となったメッシュスタートだ。これは、グリッドの良し悪しによるスタート時の不公平さを解消するためのもので、これまでむき出しのダートだったところに金属製の金網が設置される。海外のレースなどではすでに導入実績があるものだが、全日本を走るほとんどのライダーにとっては初めての体験だった。GOSHI Racingは、なんと地元熊本にレースで使われるものと同仕様のメッシュを制作。さらに、オフロードヴィレッジでの事前テストでも雨を想定して、わざと濡らしたメッシュスタートを実際に大塚豪太にテストさせている。

こうした入念なテストにより、濡れたメッシュスタートはドライコンディションとそれほど変わらないこと、また、繰り返しトライした結果、大塚豪太はメッシュスタートでは片足スタートがベストという結論を出すことができた(通常は両足スタートの場合が大多数)。

画像: 初めて投入された、メッシュスタート

初めて投入された、メッシュスタート

画像: #7大塚が、左足だけステップに載せているのがわかるだろうか

#7大塚が、左足だけステップに載せているのがわかるだろうか

噛み合わないスタートで不本意な結果に

そうして臨んだ決勝当日ヒート1。前日からの雨により1コーナーイン側が荒れていたため、大塚豪太を含む多くのライダーはアウト側グリッドを選択。しかし、1コーナーで転倒した富田俊樹に突っ込む形で出遅れてしまう。このヒート1では、ただひとり最インのグリッドを選んだ星野優位がスタートを決めて久しぶりの優勝を獲得している。

「いろいろ試した結果、メッシュスタートでは片足が良かった。当初滑ると聞いていたのですが、実際には土よりも食いつくため、クラッチミートした瞬間に体が遅れやすいんです。それを解消するために片足はステップに載せておくことを選んだところ、練習でも良い感触を掴みつつありました。ただ、ヒート1ではそもそも前に出れなかったこともあり前走車の転倒に巻き込まれてしまった。フロントタイヤのスポークも折れてしまうし、15分ということもあり追い上げるのが非常に困難でした」

画像: 多重クラッシュに巻き込まれたヒート1。ヒート2も苦しい戦いがつづく

多重クラッシュに巻き込まれたヒート1。ヒート2も苦しい戦いがつづく

大塚豪太はこのスタート展開を受けてヒート2ではイン側のグリッドを選択する。ところが、考えることはみな同じでイン側を選択するライダーが続出した結果、今度はスタート直後、1コーナーでの渋滞につかまってしまい、またしても出遅れてしまう。

今度こそは、と臨んだヒート3。改めて選んだアウト側グリッドだったが、またしても他ライダーのマシンにタイヤが巻き込まれる形でクラッシュ。負傷こそしなかったものの、大きなハンデを負ってのレースとなってしまう。結果、全ヒート終えてのリザルトは8-8-12位。タイトなトラックで行われる15分のレース、関東大会こそスタートが命だったのに、3ヒートともスタートの失敗により不本意な結果となってしまった。

不運な展開を糧にSUGOに向けて新エキゾーストを開発

T.E.SPORTの本拠地で表彰台を狙いに行った関東大会で、不本意な結果となってしまったGOSHI Racing。一見するとスタートで不運に見舞われた、と捉えることもできるこのレース展開をチームは次戦に向けた開発目標として見ていた。つまり、どのアクシデントも「集団から抜け出してさえいれば絡まずに済んでいた」と分析し、次戦SUGOではサイレンサーの特性を変更、スタートで前に出られる仕様を目指す。

GOSHI Raincg 石浦諒氏は「次のエキゾーストシステムではサイレンサーの特性を変更します。第2戦までで低中速の感触が悪くないことはわかってますから、そこに高速域の伸び感をプラスしていきます。すでにベンチマークにしているサイレンサーがあるので、次のSUGOまでに性能を出すことができれば、スタートで2速がより長く使えるようになって武器になります。今回の関東大会での失敗を踏まえて、次戦ではしっかり解決したいですね」と話してくれた。

画像: 九州から、マシンの仕様変更はなし。SUGOではニューエキゾーストがお目見えする

九州から、マシンの仕様変更はなし。SUGOではニューエキゾーストがお目見えする

高速域の伸びを重視するのは近年のマシンづくりのトレンドだ。2017年にHONDAはCRF450Rを“Absolutely Holeshot”と銘打ってフルモデルチェンジ、電子制御でスタートの成功率を高めた。さらにマシンパワーが重要になる4スト250クラスのマシンは、高回転域を使うためにヘッドをユニカムからDOHCに変更し、スタート時にレブリミッター付近までしっかり伸び切るエンジン特性を持たせ、2速でしっかり前に出る方向性を打ち出した。ラインがタイトで直線の短い日本のモトクロスコースでは特に低速が重要になる。高速域が重要になるスタートと、低速が重要になる走行時両方を満たす性能向上は難しく、開発者を悩ませるポイントだろう。

次戦SUGOまでは2カ月と長めのインターバルがある。この準備期間を活かして新たな課題を解決できるかどうか、チームの真価が問われるところだ。

画像: 2021年、最終戦SUGO

2021年、最終戦SUGO

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